みなさんは、「人脈」という言葉にどのようなイメージを持っていますか。人によっては、効率的な仕事のためのネットワークを築くというようなポジティブなイメージを持っているかもしれませんが、その一方で「人を利用している」などのネガティブなイメージを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの人脈を持っていることはキャリアアップにおいては必要不可欠。今持っている人脈を実際に生かせるかどうかで、自己キャリアの充実度に大きな差が出てくるでしょう。つまり、より多くの人とつながるだけでなく、仕事や人生に活用できる “生きた人脈” にすることが重要なのです。今回は、その “生きた人脈” を築くための習慣や方法をご紹介します。
今の自分に足りていない “人脈” を知る
人脈を築くため、セミナーなどに参加されている方もいらっしゃるかもしれません。確かに、新たな関係を始めるには、そのようなイベントはうってつけです。
しかし、自分の身の回りにいる人を思い返してみてください。同じ趣味を持っている、価値観が似通っているといったように、タイプが偏ってはいませんか? せっかく交流会やセミナーに参加するのなら、足りていないタイプに当てはまりそうな人と積極的にコミュニケーションを図ってみるのがオススメです。
バージニア大学マッキンタイア商学大学院の准教授であるロブ・クロス氏を中心としたチームの調査によれば、業績や幸福度において社内で常に上位20%に入るビジネス・リーダーは、以下の6タイプの人々と良い関係を築いているのだそう。
- 学びをもたらす人々:新たな情報や専門知識を与えてくれる
- 支援してくれる人々:アドバイスや精神的フォローをしてくれる
- 指導してくれる人々:自分の意思決定に対しフィードバックを与えてくれる
- 応援してくれる人々:調子が悪い時に個人的に支えてくれる
- 豊かな人生を説く人々:新たな目的意識や価値観を与えてくれる
- 新しい目標や価値を示してくれる人々:健康、知的意欲、精神的幸福の大切さを気づかせてくれる
例えば学びをもたらしてくれる、1のタイプなら講演会などで出会える可能性がありますが、4の応援してくれるタイプのように個人的に密なつながりが必要であれば、交流会など相互でコミュニケーションが取れる場所のほうが良いでしょう。このように、今の自分に足りていない部分に焦点を当てることで、行くべき場所、やるべきことが見えてくるかもしれませんよ。
「連絡先を知っている」、それだけでは“生きた人脈”とは言えません。
“生きた人脈” を築くには、ただ人とのつながりを広げれば良いというわけではありません。自身が持っている名刺の中には、対面で交換したにもかかわらず、いつどこで出会ったのか、どのような顔だったのかさえ忘れてしまった人も存在するでしょう。はたしてそのような人とのつながりを人脈と呼ぶことができるのでしょうか。
また、「今度一緒に仕事する機会があればよろしくお願いします」などと、ただメールで連絡を取り合うだけで行動を起こさない関係も、“生きた人脈” としては全く意味がありません。みなさんは、友人と「また今度、一緒に〇〇へ遊びに行こうね」と約束しつつ結局実行にまで至らなかったという経験はありませんか。それと同じことなのです。特にビジネスにおいては、限られた時間の中で少しでも多くの成果を上げなければいけませんから、行動に結び付かないのでは時間の浪費をするだけになってしまいます。
“生きた人脈” を築くために大切にしたい習慣
では、私たちはどうすれば “生きた人脈” を築くことができるのでしょうか。具体的な方法を2つご紹介します。
1. 直接会いに行く フリーランスで広報活動を行う井関紀子氏によれば、全く人脈を持っていなかった前職で、「人は3度会うと知り合いの感覚になる」という言葉に従い、差し入れを持っていくなどして相手に3回会うことを目標にしていたのだそう。そして、最初はお互いにぎこちなくても、3度目に会う時には相手の対応も変わり、仕事につなげることができたと言います。
また「三顧の礼」という故事成語にもあるように、中国の三国時代に劉備が諸葛孔明を軍師に迎え入れようと、自ら3度訪ねて行った話は有名ですよね。一緒に仕事をしたい人でも意見を聞いてみたい人でも、出向いて直接言葉を交わすことは生きた人脈を築いていく上で必要なのです。
特別な用事がなくとも、取引先の企業に行ったら一言でも言葉を交わすようにしたり、相手の趣味や好きなことを覚えておきその話を聞いてみたりして、積極的に関わりを持つようにしましょう。
2. 人との縁は「長期スパン」で考える “生きた人脈” を築くためには、お互いの信頼関係が必要となります。ですがお互いに信頼できるような関係は決して一朝一夕で生まれるようなものではありません。むしろ、早く関係を築こうと急げば急ぐほど逆効果となってしまいます。さらに、自分が頼りたい時にだけ連絡をしても、それこそただ利用されているだけなのではないかと捉えられてしまいかねません。
まずは、相手に対して自分はどのような価値を提供できるのかを考えてみてください。思い当たるものがないのであれば、会ってほしいと相手に思われるような人間に自分がなることも重要です。例えば、相手の仕事に役立ちそうな人を紹介できたり、他の人に代わりがきかない技術や知識を持っていたりすれば、相手に必要とされる可能性は高まるでしょう。お互いにメリットを与え合えるような関係を目指してみてください。
*** 人脈を築くのには時間がかかりますが、一度築いた人脈はその後ずっとあなたの仕事を支えてくれるはず。みなさんも、多くの “生きた人脈” を活用できるように、お伝えしたことをぜひ実践してみてください。
(参考) DODA|ハイ・パフォーマーがもつ6つの人脈タイプとそれを獲得するためのステップとは 日経Bizアカデミー|第11回 社内の人脈を、有効活用していますか? DIAMOND online|一流の人は絶対しない!間違った人脈づくりの発想 リクナビNEXTジャーナル|人脈づくりって面倒? キャリアを拓く縁の繋ぎ方 故事成語大辞典|三顧の礼