200以上のデータから検証した『傾聴』4つの基本。椅子にふんぞり返る上司はなぜ最悪なのか?

部下がなかなか成長しない、部下のやる気がない……と悩んでいるビジネスパーソンの皆さん。それは、もしかしたらあなたが「部下の話を聴いていないから」かもしれません。

何を言ってもやる気を出さない、仕事が遅い。そんな部下のことをあきらめる前にあなたがするべきことは、部下の話をよく聴くことです。

部下の成長につながる「話の聴き方」、4つのコツについてお伝えします。

できない部下の話こそ、徹底的に聴くべき2つの理由

社長や上司に “聴くスキル” のない組織は成長しない

こう断言するのは、ビジネスリーダーへの研修経験が豊富な安室元博氏(ビジネスコーチ株式会社 パートナーエグゼクティブコーチ)です。クライアント企業の86.7%が過去最高の売上利益を達成、その記録を今なお更新中であるという安室氏。研修を手掛けた企業の成長に数多く携わってきた経験から、やる気ある部下、成長する組織を育てるには、社長や上司が言いたいことを言う前に、部下たちの話を徹底的に聴く=傾聴することが大切だと言います。

しかし、傾聴するだけでなぜ部下の成長につながるのでしょう。その2つの理由を見ていきます。

1. 上司が部下を効果的に指導できるから

上司が部下の話に耳を傾け、受容的な態度で受け止めることで、部下は上司に対し「なんでも話せる」という信頼感を抱くようになります。部下が上司に多くのことを打ち明けるようになれば、上司は部下の問題点を把握できます。そして、改善すべきことを具体的にアドバイスできるようになるでしょう。それが、部下の成長につながるのです。

仕事でミスを繰り返す部下に対し、上司が呆れながら叱責する……。そんなやり取りを続けていたら、上司と部下の関係はどんどん表面的なものになっていきます。上司に叱られた部下が「次は直します」と言ったとしても、それは上司からの叱責をどうにか乗り切るための “その場しのぎ” の発言に過ぎないかもしれません。そうなると上司は、部下が何を考えているのかますます分からなくなり、対応のしようがなくなってしまいます。

しかし、上司が部下の話を真摯に聴いていれば、次第に上司は部下の本心を理解していくでしょう。話を聴くまでは知らなかったような、部下の悩みを知るかもしれません。「いつも○○とアドバイスしていたが、原因はそこにあるようではなさそうだ」「違う方法をアドバイスしてみよう」といったように、部下の成長に直接つながるような指導をすることができるようになるのです。

2. 部下が、自分の思考を整理することができるから

上司が部下の話を徹底的に聴くことは、部下が自分の問題点に自ら気づく助けにもなります

皆さんは、仕事でもプライベートでも、人に話すことによって自分の考えが整理されたという経験はありませんか? 相手に悩み事を打ち明けているうちに、もやもやしていた状況をだんだん整理することができ、自分なりの解決策を見出すことができた。こういったことは、多くの人にとってよくあることのはず。

上司・部下の関係においても、同じことが言えます。上司が部下の話をよく聴いてあげれば、部下自身で問題を自己解決できるかもしれません。そうすれば、部下は自信がわき、仕事へのモチベーションが出るかもしれませんよね。傾聴は、部下が自ら成長していくことを促す効果があるのです。

部下の成長を促す、傾聴の4つのコツ

ビジネスにおける傾聴の重要性はわかったけれど、「やり方やコツが分からない」という不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、カウンセラーの養成にも用いられる、傾聴の基本中の基本を丁寧に解説します。200以上のデータからのカウンセリング理論を体系化したアレン・E・アイビィ博士による傾聴の4つのコツです。

1. 視線を合わせる 2. 表情と姿勢に気を配る 3. 相槌とオウム返しに徹する 4. 自然な声の調子を意識する

部下への対応にそのまま使えるテクニックばかりですよ。ではひとつずつ見ていきましょう。

1. 視線を合わせる

傾聴では視線を合わせることが大切。人間のコミュニケーションの85%は、非言語的な要素で成り立っていると言われます。視線は、相手に「あなたの話を聴いている」ことを伝えるうえで非常に重要なものなのです。

人の話を聴く際は、以下の2つのタイミングで視線を合わせることを意識してください。

■1. 相手が話を始める前

相手に視線を向け、話を聴く準備ができたことを非言語的なメッセージとして表しましょう。例えば、部下が上司であるあなたに「相談事があります」と言ってきたとしたら。あなたがスマートフォンを見ながら「どうしたの?」と言うのと、部下と視線を合わせながら「どうしたの?」と言うのとでは、聴く側の真剣さが伝わるのは言うまでもなく後者のはずです。

■2. 相手が話している最中

相手と「ほどよく」視線を合わせ、相手の話に集中しているということを伝えましょう。「ほどよく」というサジ加減が非常に難しいところなのですが、これは普段のコミュニケーションスタイルを意識してみるといいと思います。

普段から人の目をまっすぐ見るタイプなら……相手が話をしている最中には目を見て聴き、一度話が途切れた段階で軽くそらす(相手の手元を見るなど)。 普段から相手を見つめることが苦手なタイプなら……相手が話をしている最中、相手の鼻~首あたりを見る。

2. 表情と姿勢に気を配る

非言語的な要素として、視線のほかには表情姿勢も大きな役割を果たします。具体的には、以下の2つのことを意識してください。

■1. 「姿勢」を楽にしてやや前方に傾ける

相手がリラックスして話せるよう、自分も楽な姿勢をとり、リラックスしていることを示しましょう。上司がリラックスしていれば、部下の緊張はやわらぎ、安心して話せるはずです。机などで対面している場合には、楽な姿勢を取りつつ上体を前方(相手がいる方向)へ傾けると、相手の話に関心があることを姿勢で示すことができます。

■2. 「表情」と「言葉」を一致させる

部下の話を聴きながら時折言葉を発する場合には、自分が伝えたい気持ちを顔に表すように意識してください。いくら良い言葉をかけても、表情がそれと矛盾したものであれば、言いたいことが相手に伝わりません。それが不信感につながってしまう可能性も。言葉と表情を一致させましょう。部下に「お疲れさま」と声をかけるなら、無表情ではなく微笑みながら。「あなたの頑張りは素晴らしかった」と言うなら、険しい表情ではなく明るい表情で。ちょっとした心がけが、部下との信頼関係につながりますよ。

3. 相槌とオウム返しに徹する

傾聴においては、相手の言葉を集中して追いかけましょう

会話中は、自分から何か話を展開しなくてはという思いから「自分は次に何を発言すべきか」を考えてしまいがち。そうすると、相手の話に集中していない時間ができてしまったり、相手の話をさえぎってしまったりします。そして、相手が本来話したいと思っていたこととは異なる方向に話題が逸れてしまう可能性があるのです。

部下の話に応答する際に役立つ3つのテクニックがこちらです。

■1. 相槌とオウム返し

部下が「自分のことをもっと話そう」と思えるよう、相手の言葉を繰り返しましょう。

A(部下)「昨日、○○社へ営業へ行ったんですが、緊張してしまって」OK例:B(上司)「うんうん、○○社へ行ったんだ」 NG例:B(上司)「あー、俺も昨日外回りだったんだよね」※部下の話題から逸れているためNG。

■2. 相手が言ったことに対する感想を述べる

相槌とオウム返しばかりで単調になったり、会話が途切れて気まずい空気になったりするのが怖い場合は、感想を述べるのもお勧めです。先ほどの例であれば、

「○○社への営業って、すごく緊張するよね」

といった具合です。部下の立場にたって話を聴いていることを、効果的に伝えることができるでしょう。

■3. 相手が言ったことに対して質問をする

相手の話をさらに促すために、質問をするのもいいでしょう。先ほどの例であれば、

「へぇ、相手方はどんな人だったの?」

といったような質問をすれば、その話をもっと詳しく聞かせてほしいということを表現することができますよ。

4. 自然な声の調子を意識する

相手の話に応答する際は、「自分らしく真剣に聴いていることが伝わる声」を意識してください。アイビィ博士によると、カウンセリングにおける声のトーンとして望ましいのは、その人にとって最も自然なトーン。つまり「地声」が相手に安心感をもたらすというのです。

声優を養成する総合学園ヒューマンアカデミーによると、自分の地声は以下のやり方で確認することができます。ぜひ試してみてください。

まずは足を肩幅ぐらいにひらき、つま先の方(足の親指)に体重を乗せます。そして、背筋を伸ばして立ちます。この時に、自分の体に1本の棒が通っているのをイメージして立つとスッと綺麗な姿勢になりやすいです。あごを軽く上げ、のどがしまらないように息の通り道をつくります。 横隔膜(おうかくまく)をぐーっと下げるイメージで、背筋、腹筋も意識して、「あー」と声を出します。 この声が「地声」になります。

(引用元:ヒューマンアカデミー|声優になるためには? 第一回 自分の声を知ろう

*** 部下を成長させたいなら、部下の話を受容することが大切です。自分らしいやり方で「あなたの話をちゃんと聴いている」ことを伝え、部下の可能性を引き出していってはいかがでしょうか?

(参考) アレン・E・アイビイ著,福原真知子訳編(1985),『マイクロカウンセリング―"学ぶ‐使う‐教える"技法の統合:その理論と実際』,川島書店. STUDYHACKER|助言はするな、考えさせろ。部下を本当に成長させる「傾聴」という技術。 コトバンク|傾聴 安室元博公式サイト|組織の一体感は傾聴から ビジネスコーチ株式会社|コーチ紹介 安室 元博 ヒューマンアカデミー|声優になるためには? 第一回 自分の声を知ろう

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