自分ではけっこう頑張っているつもりなのに、なぜあまり結果を出せないのだろう? ――と悩むあなたは、頑張っているからこそ、悪い状況に陥っている可能性があります。さっそく説明しましょう。

1.収穫逓減の法則が働いている

経済学用語の「収穫逓減(しゅうかくていげん)の法則」とは、資本と労力を増やせば生産量は増加するが、ある限界に達すると生産が伸びなくなり、次第に増加分が小さくなっていく法則のことです。ベストセラー『思考の整理学』の著者・外山滋比古氏は、同書でこの法則を挙げ、知識の習得について以下のように述べています。

知識ははじめのうちこそ、多々益々弁ず、であるけども、飽和状態に達したら、逆の原理、削り落とし、精選の原理を発動させなくてはならない。つまり、整理が必要になる。はじめはプラスに作用した原理が、ある点から逆効果になる。そういうことがいろいろなところでおこるが、これに気付かぬ人は、それだけで失敗する。

(引用元:外山滋比古著(1986),『思考の整理学』,筑摩書房.)

頑張って勉強しているわりには活かせていないと感じる人は、知識が足りないのではなく、むしろ飽和状態なのかもしれません。

知識もしっかり整理しよう

もちろん知識は多いほどいいけれど、頭にどんどん詰め込んで飽和状態に達したら、流出してしまうと外山氏はいいます。「そもそも知識欲が低下する」と同氏。

机の上を整理すると、必要なものをすぐ手に取れる、効率のいい環境になります。それと同じように、不要な知識はアッサリ捨てて(忘れて)整理し、使い勝手のいい脳にしましょう。取捨選択に迷う場合は、とりあえず何かにメモしておくだけ。本当に必要なことは、何度もそのメモ書きを見直すので必然的に記憶できるはず。不要な物事を、ムダに頭に留めておかないことが重要です。

90日でTOEIC910点! 英語が聞けない僕にパーソナルトレーナーが教えてくれた「音読のきほん」
人気記事

2.見つめるナベは煮えない状態

外山滋比古氏の『思考の整理学』には、こうも書かれています。

外国に、“見つめるナベは煮えない”
ということわざがある。早く煮えないか、早く煮えないか、とたえずナベのフタをとっていては、いつまでたっても煮えない。あまり注意しすぎては、かえって、結果がよろしくない。しばらくは放っておく時間が必要だということを教えたものである。

(引用元:外山滋比古著(1986),『思考の整理学』,筑摩書房.)

つまり、アイデアを出そう出そうとしていると、むしろアイデアが出にくくなってしまうということ。問題を解決しようと、そのことばかりに頭をひねらせていると、いい解決策が浮かんでこないということです。

外山氏は、思考を整理する、あるいは生み出す際にも、思考を“寝させる”ほど大切なことはないといいます。“いったん頭から切り離し、しばらく放っておく”という無意識の時間こそが、物事をおちつくところにおちつかせてくれるとのこと。

「こんなに考えているのに!」とイライラしても、いい考えは浮かばないのです。

一晩おけばナベは煮える

外山氏によれば、数学者のガウスは「起床時にある発見をした」と記録しているそう。物理学者のヘルムホルツも、「朝目覚めたら、すばらしい考えが浮かんだ」と語っているのだとか。

中国、北宋の文学者・政治家である欧陽脩も、いい考えが浮かぶ3つの場所として、馬上・枕上・厠上(馬に乗っているとき、寝床に入っているとき、トイレに入っているとき)を挙げています。

アイデアが出ない、いい解決策が見つからないときは、いったんすべてを手放し、可能ならばしばらく、あるいは一晩だけでも置いてみましょう。とりあえず、何も考えずに寝てしまうのです。ムダにストレスをためず、睡眠時間も削られず、思考が整理されて、向こうから“ひらめき”が歩み寄ってくるに違いありません。

3.寝なかったり、寝すぎたり状態

わたしたちの脳は睡眠中に記憶情報を整理整頓し、脳に定着させています。また、脳の老廃物を処理したり、不要なシナプスを弱め、記憶キャパシティを確保したりしています。

したがって、睡眠は決して損ねてはならないもの。勉強や仕事を頑張るあなたは、「あともう少し」と睡眠時間を削るたびに、脳の働きを悪くしているのです。

とはいえ、寝すぎも脳にはよくないのだとか。順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、著書である研究を紹介しています。

イギリスのウォーリック大学で、五〇~八九歳の男女約九〇〇〇人を対象に、睡眠と脳認知能力の関係を調べたことがあります。
その結果、五〇~六四歳では、睡眠時間が六時間以下の人と、八時間以上の人は、記憶力と意思決定能力が下がることがわかりました。

(引用元:小林弘幸著(2017),『自律神経が整えば休まなくても絶好調』,ベストセラーズ.)

記憶力と意思決定能力の低下は、ビジネスパーソンにとって致命的なこと。頑張りすぎて睡眠時間が少なくなるのも、頑張りすぎて疲れて休日のたびに長い時間寝てしまうのも、どちらも後々仕事に悪影響を及ぼすというわけです。

自分に合った睡眠時間を確保しよう

先述したウォーリック大学の研究で示された最適な睡眠時間は、6~8時間のあいだということになります。

また、厚生労働省健康局が発行した「健康づくりのための睡眠指針2014」によれば、7時間前後の睡眠をとっている人が、もっとも病気などの危険性が低いと過去の研究で示されているそう。

ただし、同資料には、「年齢を重ねるごとに、睡眠時間が短くなることが多くの研究で示されている」ともあります。世界各国 65 編の論文から得られた、 3,577 人のデータをまとめた研究で示された内容は以下のとおり。

・15 歳前後は 8 時間
・25 歳は約 7 時間
・45 歳は約 6.5 時間
・65 歳は約 6 時間

そうしたことから、最適な睡眠時間を見極める際には、7時間前後を基準にしつつ、自分の年齢を考慮することをおすすめします。“目覚めのよさ”や、“その日のパフォーマンスの良し悪し”なども指標になるでしょう。

4.夜中に低血糖発作を起こしている

しっかりと食事する時間がないまま仕事に追われ、お腹が空いた状態で遅い夕食にやっとありついた場合、ついつい糖質たっぷりの食事やデザートをガツガツ食べてしまいがちです。

それであまり時間をおかずに就寝してしまうと、夜中に低血糖発作(夜間低血糖)を引き起こしてしまう可能性があります。新宿溝口クリニックの溝口徹院長によれば、夜間低血糖は糖尿病でない健康な人にも起こるのだとか。

AGE 牧田クリニック院長で糖尿病専門医の牧田善二氏は、著書のなかでこう述べています。

夜中の低血糖発作は、若い女性などにもよく見られ、たいていが寝る前に糖質をたっぷりとっていることが原因になっています。
質のいい眠りは、健康のためにも、仕事のパフォーマンスを上げるためにも必須です。就寝前の糖質摂取は控えましょう。

(引用元:牧田善二著(2017),『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』,ダイヤモンド社.)

米 The Brod Group の Meryl Brod 氏は、文献検索と患者70人の発言録、低血糖発作経験者1000人超に対するインターネット調査から、「重篤でない夜間低血糖」が、睡眠の質と量、翌日の仕事、記憶などに悪影響を及ぼすと欧州糖尿病学会(2011年9月・リスボン)で報告したそう。

睡眠の質を下げ、仕事のパフォーマンスを低下させる夜間低血糖のメカニズムはこうです。

(1)糖質過多な就寝前の食事やデザート(血糖値急上昇)
(2)インスリンが過度に血糖値を下げてしまう
(3)寝ているとき低血糖になる
(4)アドレナリンやコルチゾールが一斉分泌(血糖を上げるため)
(5)自律神経の交感神経が興奮
(6)睡眠の質を下げる

仕事を頑張っていれば、お腹が空いてたくさん食べたくなったり、甘いものを食べたくなったりもしますよね。しかし、仕事のパフォーマンスを上げたいなら、就寝前の糖質には注意が必要です。

寝る前にお腹がすいたら低糖質食品を

溝口院長は、もしも寝る前に空腹であれば、タンパク質と脂質をほどよく含み、糖質が少ない、チーズやナッツ、焼き鳥に、ホットミルクや豆腐などがおすすめだといいます。その法則ならば、豆乳などもいいはずです。糖質を欲しているときほど、甘味料を入れなくても甘みを感じますよ。ぜひお試しください。

***
頑張っているのに結果を出せない人が陥っていること4つと、専門家や識者からのアドバイスをもとに、その改善策を紹介しました。

1.収穫逓減の法則が働いている→「知識もしっかり整理」
2.見つめるナベは煮えない状態→「一晩置いてみる」
3.寝なかったり、寝すぎたり状態→「自分に合った睡眠時間を確保」
4.夜中に低血糖発作を起こしている→「寝る前は低糖質食品を」

この状態から早々に抜け出して、仕事のパフォーマンスをグンと上げてくださいね!

(参考)
外山滋比古著(1986),『思考の整理学』,筑摩書房.
小林弘幸著(2017),『自律神経が整えば休まなくても絶好調』,ベストセラーズ.
牧田善二著(2017),『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』,ダイヤモンド社.
厚生労働省健康局編集(2014),「健康づくりのための睡眠指針2014(平成26年3月)」,厚生労働省.
日経メディカル|重篤でない夜間低血糖でも翌日の仕事に悪影響、2割が遅刻・欠勤
NIKKEI STYLE||健康・医療|歯ぎしり、寝汗…潜む意外な原因「夜間低血糖」
Study Hacker|ビジネスパーソンを襲う “夜更かし肥満” はこんなにヤバい。自己投資できず太り続ける恐怖。