やる気。それはなにをするにしても必要な気持ちです。やる気さえあればどんな困難なことにでも取り組むことができます。しかし、このやる気は扱いが難しい。出てほしいときに出てくれません。 今回はやる気を意識してコントロールする方法を、心理学の面から考えていきます。
やる気には二つの種類があります。 一つは外発的なもの。つまり、外からの影響によって生まれるタイプのやる気です。例としては、報酬や周りの評価が挙げられます。 もう一つは内発的なもの。自分の感情のみから生まれるタイプのやる気です。たとえば、楽しいという感情や、達成感など。 この二つについて、詳しく見ていきます。
外発的やる気
外発的なやる気は、作りだすのが内発的なものより簡単ですが、様々な問題を抱えています。 まず、第一に手抜きを助長してしまうこと。 例えば、数学の問題を一問解けたらチョコ一個食べていいというご褒美を設定したとします。そうすると、単純に一問解くことだけが目標となってしまいます。別解を思いついたとしても、一つの方法で解けたんだからいいやとそこで思考をストップしてしまうかもしれません。
第二に、ご褒美がなくなるとそれに比例してやる気もなくなってしまうこと。 テストでいい点を取ったからといって、いつでも欲しいものを買ってもらえるわけではありませんよね。ご褒美があるときにしかやる気が出ないのでは困りものです。
第三に、もともとあったやる気が邪魔される場合があること。アンダーマイニング現象という現象を知っていますか。心理学者エドワード・L・デシとマーク・R・レッパーが行った実験により判明した現象で、楽しい課題に過度な報酬をつけてしまうことで、もとからあったやる気が阻害されてしまうというもの。やる気はとてもデリケートなのです。
内発的やる気
内発的なやる気は、良い点をたくさん持っていますが、初めの一歩が少し困難です。 良い点は、心の底から楽しいと思いながら勉強や仕事に取り組めることです。内面的なやる気が出ているときの心理状態として、達成感とフロー経験があります。
フロー経験(flow expenrience)は、「なにか熱中、没頭して、流れるかのごとく自然に、楽しく時間がすぎるが、その行為をコントロールしているのは、すべて自分自身である」という絶妙な感覚です。 (引用元:「外発的動機づけ」と「内発的モティベーション」から、やる気を考える )
達成感はもちろん、フロー経験もなんとなく身に覚えのある感覚ですよね。常にその状態で作業ができたら楽しそうですよね。 この内発的やる気はどうしたら生み出せるのか。それは自己決定感が左右しています。
やる気の源は自己決定感
自己決定とはその字の通り、自分で決める、ということ。この自分で決めたという気持ちが内発的やる気に大きな影響を及ぼします。
玉川大学の松元教授が行った次のような実験があります。被験者に、ストップウォッチをちょうど5秒で止める遊びを20回ほどやってもらうというものです。被験者は二つのグループに分けられました。二種類のストップウォッチが用意されており、そのどちらを使うかを選べるグループと、強制的に決められてしまうグループです。 実験後のアンケートの結果、前者、つまり自己決定感の強いほうが、「ポジティブな気分になった」と答える人の割合が多く、課題成績も高かったのです。また、次のような実験結果も出ました。
このとき、脳の反応にも違いが見られた。目標の価値表現をさまざまな文脈から修飾(意味づけ)する前頭前野腹内側部の反応が、(中略)自己決定感が低い条件では、成功時に活性化し、失敗時は活性化しなかったのに対して、自己決定感が高いと、結果が成功でも失敗でも同程度の反応を示したのだ。 (引用元:お金がやる気を失わせ、自己決定感がやる気を高める)
つまり、自己決定感から生まれる内発的やる気は失敗してもなくならないのです。 これらのことから、良質のやる気を出すには次のことが必要であると言えるでしょう。
どんなことでも自分で決める。
この習慣を付けることによって、内発的やる気が湧きやすくなるはずです。そうすれば成果が出る、だから楽しい、だからやる気が出る、という良い循環が続いていくでしょう。
*** いかがでしたか。 日ごろから自己決定を習慣付けて、自由自在に内発的やる気を操れるようにしましょう。
参考 「外発的動機づけ」と「内発的モティベーション」から、やる気を考える お金がやる気を失わせ、自己決定感がやる気を高める MANAGINE キャリアサポート 用語集