いろいろな勉強がしたいのに、時間がなくて手が出せない。そのように悩んでいる人は数多くいると思います。特に社会人になると日々の仕事に忙殺されて、資格の勉強や趣味の学習をする時間を捻出するのに一苦労でしょう。
そんなときは、空いているわずかな時間を使って勉強してみてはいかがでしょうか。それが、今回ご紹介する「細切れ学習」です。
細切れ学習とは
大半の学生は、「今から3時間○○について勉強するぞ」と何にも中断されることなく勉強する時間を確保することができます。しかし、就職活動中の大学生や社会人ともなると、移動時間くらいしか暇な時間が取れない、というケースも出てきます。
細切れ学習とは、こうした移動時間程度の短い時間で勉強を行う方法。朝の電車で10分、仕事の合間に10分、昼休みに15分、帰りの電車で10分といったように、1日の勉強を細かく区切り、何度も勉強するのです。
細切れで勉強することのメリットは、隙間時間が確保できるということだけではありません。実は、科学的に大きな効果があるのです。
初頭効果と親近効果
例えば、10個の英単語を覚えるところを想像してみてください。一気に10単語を暗記しようとしたとき、初めと終わりの数個は比較的覚えられる一方で、真ん中の数個の単語はうろ覚えになってしまうか全く覚えられない、ということはありませんか。
これが初頭効果と親近効果による現象です。脳には、何かを記憶する際、最初と最後のものが頭に残りやすいというメカニズムがあるのです。
最初の5分と終わりの5分に勉強したことが比較的覚えやすいとするならば、10分しか勉強時間が取れない場合でも、学習効果が十分にあると言えます。もちろん長時間勉強する場合でも初頭効果と親近効果は発揮されますが、その効果が発揮されない時間帯が長くなってしまいます。まさに、非常に短い時間しか確保できない細切れ学習だからこその嬉しい効果と言えますね。
締め切り効果
締め切り間近になると集中力が高まる、というのが締め切り効果による現象です。STUDY HACKERでも何度か取り上げられていますので、ご存知の方もいるかもしれません。
締め切り効果を利用すると、10分しか勉強できないという切迫した環境が脳の扁桃体を活性化してくれるので、その10分間は圧倒的に集中して勉強することができます。脳の中心部に位置する扁桃体は、本能や感情、記憶を司っている部位。適度な緊張感で扁桃体の活動が活性化すると、記憶力の定着にも効果があります。
ツァイガルニック効果
ツァイガルニック効果という日常に役立つ心理効果があります。よく恋愛工学に使われるテクニックで、「あと少し」のところでやめておくと、そのことへの興味がどんどん大きくなることを言います。人間は未完成のものに魅力を感じるため、すでに完成した事柄よりもまだ完了していない事柄の方が、記憶に定着しやすく想起されやすいのです。
時間の短い細切れ学習では、勉強をはじめても途中で中断されてしまいますよね。ツァイガルニック効果は、この中断時に発揮されるもの。自分の満足していない状況で中断された勉強内容は当然気にかかるので、もっと勉強したいと思えるようになるばかりか、記憶の定着効果も期待できるというわけなのです。
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時間がないからこそ、その状況を上手に利用して学習効率を高めましょう。忙しいからと言って、勉強を諦めてはもったいないと思います。細切れ学習で、超効率的な勉強をしてみてはいかがでしょうか。
(参考)
高橋雅延(1989),「A-15 記憶におけるツァイガルニック効果の基礎的研究(学習A)」,日本教育心理学会総会発表論文集 Vol. 31, pp. 302.
Clara Ponsati (1995), “The deadline effect: A theoretical note,” Economics Letters, Vol. 48, Issues. 3-4, pp. 281-285.
Sasaki Takashi (2008) “The role of working memory capacity in the primacy effect and the recency effect:When delay was inserted” The Japanese Society for Cognitive Psychology, p. 59.
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