私たちは今、めまぐるしく変化し続ける社会の中で生きています。科学技術は日々進歩し、高度に発達したAIは近い将来私たちの仕事の一部を奪うだろうとまで言われています。また、インターネットをはじめとする技術の進歩により、社会問題はますます顕在化。このような未来が見えない状況の中で、自分の将来に対し漠然と不安を抱えているという方もおられるのではないでしょうか。

そこで今回は、著しく変化していく現代において、自分で考えて生き抜くためのヒントを少しご紹介したいと思います。特に注目するのは「納得解」というもの。納得解とは何のことであり、なぜ必要なのか、どのようにすれば導き出せるものなのか、詳しく見ていきたいと思います。

納得解とは

広辞苑等に記載はないものの、インターネット上で「納得解」と調べてみるとこのような解説が出てきます。

納得解【なっとくかい】
未検証だが、納得できる「解」。正解のない課題での解決案。

(引用元:Hatena Keyword|納得解

例えば、『1+1=□』で求められるのは「正解」ですよね。これに対して納得解というものは『〇+△=2』という式で求めるようなものです。答えが1つではなく、この式のように複数存在するかもしれない、そして場合によっては正解なんて無いかもしれない、そんな問題に対して自分や皆が納得できるような解こそが、納得解なのです。

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納得解の必要性

今までの社会では、明確な課題が存在し、それに対してどのアプローチを取れば正解かを求めることが目標とされていました。例えると、富士山の登頂という目標(正解)が事前に一部の人達で決められていて、どのルートをたどるかを決定すれば良かったのです。

しかしインターネットなどの進歩により、多くの人に選択肢や情報が与えられるようになったことで、正解が一つではなくなりました。先ほどの例で言うと、「そもそも富士山なのか? 他の山や、はたまた海が目標かもしれない」という状況になったわけです。このような背景を経て明確な正解が無くなった社会に生きていく私たちは、「正解かどうかは分からないけれど、自分や自分を含めた皆が頷ける解=納得解」を求めながら生きていかなければならなくなりました。

実は教育の現場でもこの納得解を求める力は重要視され、「アクティブ・ラーニング」という形でその能力育成が図られています。文部科学省が発行している『平成29年度版 新しい学習指導要領の考え方』でも、納得解を求める能力を個々人が養う必要性がはっきりと記されています。正解もなく、一人ひとりの幸せや価値観も異なるこれからの時代では、一部の人間だけではなく全員が考え、悩み、納得解を生み出していくしかないのです。

納得解を求める脳の鍛え方

これからの時代は納得解を考えることが必要になる、とは言っても、私たちはこれまで、正解を求める考え方をずっと使ってきました。このような状況に警鐘を鳴らしているのが、東京都初の民間人校長を務めたことでも知られる著述家の藤原和博氏です。彼によると、これまでの日本の教育や社会は情報処理力を重視し過ぎてきたとのこと。この情報処理力とは、正解のある問いを素早く解くような能力のことを指します。これに対し、藤原氏がこれからの時代で重要になると言うのが「情報編集力」です。

藤原氏によれば、情報編集力とは自分中心に考えて答えを出すのではなく、他人の考え方、知恵や技術なども取り込み、正解のない問題を解決する能力のこと。これは簡単に言ってみれば、頭を柔らかく使う能力のことです。この能力が身に付けば、周囲の意見を取り込みながら納得解を導くことができます。

藤原氏は情報編集力の鍛え方として、複数人でブレーンストーミングすることを挙げています。お題は例えば「タイヤ会社の社長になったつもりで、今まで世の中になかったタイヤを考える」というもの。ルールは一つだけで、他人の意見を否定しないということです。この「世の中にない○○を考える」というお題のように、答えのない問いを掲げてブレーンストーミングを行っていくことで、他人の意見を取り込みつつアイデアを考える練習ができるのです。

納得解を求めるコツ

先ほどは納得解を求めるための脳の鍛え方をご紹介しましたが、ここでは実際に納得解を求める際に役立つ、納得解を求めるためのコツを見てみましょう。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など数々のベストセラー本の編集者を務める柿内芳文氏は、納得解を生み出すためには周囲の共感を得ることが必要だと説きます。読んで字のごとく、納得解とは皆が納得する解・判断のことだからです。そして、周囲の共感を得るためには2つのコツがあると柿内氏は言います。その2つとは、

1. 原点回帰してストーリーを考える
2. キーワードを作る

ということ。

まず1つ目の「原点回帰してストーリーを考える」から見ていきましょう。ストーリーとは、その解に至る文脈のことです。つまり、納得解を考える際は原点回帰をしましょうということ。例えば新書の編集者なら、「そもそも新書とは何だ?」という問いを立て、新書の存在意義や目的を導き出し、編集や企画に結び付けていくといった具合です。このように、なぜその商品(その行動・考え方……)が求められているかを突き詰めることで、本来の意義や目的にかなった判断を下すことができるとともに、周囲も納得しやすくなるのです。

2つ目の「キーワードを作る」についても考えてみます。キーワードを作る目的は、ストーリーを周囲に分かりやすく伝えるため。例えば先ほどの新書の例で考えてみましょう。もし「新書は、若者にとって武器となるような教養、生きていくために必要な教養を身に付けてもらうためのもの」という考え方・ストーリーを生み出したのなら、ここから「武器としての教養」というキーワードを導くと言った具合です。重要なのは、そこまで長くなく、それでいてストーリーの核を表していること。このようなキーワードを設定することで、大きなインパクトともに相手にストーリーを伝えることができ、より周囲の共感を得ることができるのです。

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これまで正解ばかりを追い求めてきたことに気づいた方は多いはずです。これかは納得解を考えることが必要とされる時代。この記事を参考に、納得解という考え方を日常に取り込んでいただければ幸いです。

(参考)
GLOBIS知見録|藤原和博氏が語る「世の中を教育で変えるにはどうしたらいいか?」 前編
電通報|正解のない時代を勝ち抜く武器「納得解」とは? コルク 柿内芳文×電通 小布施典孝(前編)
リクナビNEXTジャーナル|キャリアや生き方に「絶対解」はない。自分にしかない「納得解」を見つけよう ――秋元祥治『20代に伝えたい50のこと』
Hatena Keyword|納得解
文部科学省|新しい学習指導要領の考え方