話がなかなか伝わらない。相手を納得させる説明ができない。コミュニケーションに関して悩みを抱えているのならば、皆さんにもなじみがある「数学」からヒントを得てみるのはどうでしょう。

“ビジネス数学の専門家” である深沢真太郎(ふかさわ・しんたろう)さんは、「数学コトバ」を使うことを提唱しています。今回は、ビジネス数学のスキルから生まれる「伝える技術」についてのお話です。

■第2回『デキる人は数字を使う! 「数字力」を磨く大切な習慣』はこちら

“話が伝わる” を可能にする「数学コトバ」

——この「数学コトバ」、具体的にどんなものなのでしょう。実際にどう使うのでしょうか?

深沢さん:
「数学コトバ」とは、私が考案したオリジナルの造語です。じつは、かつて数学の授業の中で使われていた言葉をビジネスシーンでも上手に使えると、コミュニケーションが円滑になり、話も圧倒的に伝わりやすくなるのです。挙げればたくさんあるのですが、ここでは代表的なものを3つ取り上げてみましょう。

1つめは「定義する」。実数の定義、sin(サイン)の定義、微分の定義など、数学は定義しないと始まりませんでしたよね。これはコミュニケーションにおいても同じなのではないかと思うのです。

たとえば、会社の会議にて。いきなり会議を進めるのではなくて、まずは、その会議を定義するところから始めてほしいのです。集まる場? 決める場? 共有する場? もし決める場ならば何を決める場なのか、そのために必要なものはそろっているのか。それらを確認してから会議を始めるだけでも、その後の議論の質が圧倒的に違ってくるはず。ぜひ、物事の定義を積極的に口から発するようにしてください。

2つめは「たとえば」。学校の数学でも “例題” というものがありましたよね。例題があったからこそ、初めて出てきた定理や概念も理解できたはず。ということは、この「たとえば」も、じつは非常に数学的な言葉なのです。

今回の取材でも、私は何度も「たとえば」という言葉を使ってきました。相手に説明したいことや主張したいことがあったら、なるべく「たとえば」という言葉を挟み、相手にとってわかりやすい例を挙げるようにしましょう。

3つめは「以上です」。数学では、証明が終了したことを示す “証明終わり” の表記が存在します。それと同様に、コミュニケーションにおいても、話が終わったら「終わった」と表明してほしいのです。

たとえば、会議の場でごにょごにょ意見を述べたまま黙る人、いますよね。自分では話が終わったと思っていたとしても、まわりの人にとってみれば、終わったかどうか判然としません。相手への最低限の配慮として、自分の話が終わったら「以上です」と言う習慣をつけてみてはいかがでしょうか。

——基本のようでいて、とても大事なものばかりです。これらの「数学コトバ」を使いこなせるようになったら、たしかに “伝わるコミュニケーション” ができそうですね。

深沢さん:
習得するには、実際に口から発して使ってみるのが一番ですが、「数学コトバ」を使う感覚をさらに高めたいとお思いであれば、お手本となる話し方から学ぶのも大切です。例を挙げれば、小泉進次郎さん、池上彰さん、林修さんが、良いお手本となるでしょう。

どの方も、話がわかりやすいことで有名ですよね。やはり、共通のエッセンスを持っているのです。小難しいことを早口でべらべらしゃべるのではなく、「~~です。~~です。たとえば~~です。以上が結論です」というように、段階や手順を踏んで、噛み砕きながら非常に丁寧にお話をされます。YouTubeを探せば、このお三方の映像もたくさん出てきますので、ぜひ参考にしてみてください。

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好きになる必要はない。ビジネス数学は “使えれば” それでいい。

——ここまで全3回にわたり、「ビジネス数学」をメインテーマにお話をうかがってきました。すべてのビジネスパーソンが身につけておくべき基本的リテラシーのひとつとして、数学力・数字力の重要性が身にしみて理解できたように思います。最後に、今後「ビジネス数学」の習得を目指すビジネスパーソンに向けて、深沢さんからメッセージをお願いします。

深沢さん:
学校の数学の先生は、よく「数学はすばらしい!」「数学はおもしろい!」「なぜ、この数式の美しさがわからないんだ?」なんて言っていたかもしれません。でも、数学が苦手だった人にとっては、ちっとも共感できませんでしたよね。

しかし、この「ビジネス数学」に関して、私は決して好きになる必要はないと主張します。その代わり、“良い距離感で” 上手に付き合ってほしい

たとえば(まさに数学コトバ)、生理的に受けつけない相手と恋愛を始められるでしょうか。おそらく無理でしょう。でも、恋愛はしなくとも、ほどよい距離感でうまく関係性を保つことぐらいはできるはずです。たとえば、自分がちょっと困ったときに、上手に利用して助けてもらうなど。

ビジネス数学もそれと同じです。この話をわかりやすく説明したい。この企画を上司に通したい。そう思ったときに、ぜひビジネス数学の存在を思い出してほしいのです。「数字を入れたほうが伝わる」「数学コトバを使えばコミュニケーションが捗る」などと言っていた人がいたなあと(笑)。そして実際に使ってみてください。その便利さが実感できたら、次に必要になったときに、また使えばいいのです。

いざというときに使える便利なツール。これぐらいの軽い気持ちで、ぜひビジネス数学を活用してみてください。以上です!(笑)

【プロフィール】
深沢真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学の専門家。
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。
予備校講師や外資系企業での管理職を経て研修講師として独立。数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンを劇的に変えてしまうその独特な指導法が「史上最強にわかりやすい」と好評。担当した講義は100%リピート依頼がくる人気講師である。
大学でも教鞭をとる傍ら指導者育成にも従事し、ラジオ番組のパーソナリティなどメディア出演も多数。さらに作家として著作は国内で累計13万部超。一部は海外でも翻訳され多くのビジネスパーソンに読まれる。
公益財団法人日本数学検定協会が認定した国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」である。

BMコンサルティング株式会社代表取締役
一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事
多摩大学非常勤講師
パールハーバープロダクション所属

★ビジネス数学.com ~深沢真太郎オフィシャルウェブサイト~
http://www.business-mathematics.com

数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです

深沢真太郎

日本実業出版社 (2013)

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「ビジネス数学」というスキルで、“伝える力” は圧倒的に高まります。数学力・数字力を身につけるために、あなたは今日から何をしますか?

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