「朝はいつも時間ギリギリまで寝て、起きた途端に大慌てで支度する。遅刻はしていないから、問題ないよね?」――いやいや、それは大問題です。その日のパフォーマンスを、ドーンと下げている可能性がありますよ。早起きする人は高年収だというデータもあるのです。「いつも朝に大慌てな人は仕事がデキない理由」について説明しましょう。
高収入の人は「早起き」で「モテる」?
株式会社アントレックスが2017年4月に「朝と食事に関する調査」を行い、500人から有効回答を得たところ、年収800万円以上の70.4%が早起きをしているとわかったそうです。
一方、「ギリギリまで寝ているほう」と答えた年収800万円以上の人は、たったの11.2%だったのだとか。そして、「自分はモテるほう」と答えた人の早起き率は57.1%で、全体平均の33.6%を大幅に上回ったそうです。
なぜ朝に余裕がある人は仕事がデキる?
精神科医で随筆家の斎藤茂太氏は、こういいます。
朝の生活習慣を改善できれば、「つい先のばしにする癖」「行き当たりばったりで慌てる癖」は半分解消されたようなものだ。
(引用元:斎藤茂太著(2015),『「いい人だけどグズ」を直したい人が読む本―仕事・人間関係のクヨクヨを晴らす考え方 』,ゴマブックス株式会社.)
同氏がそう述べる理由は、「限られた時間内で優先順位を決め、時間を割り振っていくこと」は、すべての段取りに通じるから。朝の一番忙しい時間をコントロールできるなら、どんなシーンでもコントロールできるはず、ということです。
「朝はバタバタするが、仕事はデキる」という方程式は、成り立たないわけですね。
朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由1:焦ってエラーを起こす
朝、焦って支度をして、勤務先あるいは取引先の会社に到着したとき、「あー! しまった! 忘れた!」と気づき、頭から血の気が引いてしまったことはありませんか?
朝の時間に余裕がないと、バタバタと行き当たりばったりで準備をするため、かえってムダな動きが増え、忘れ物をしがちになると、斎藤茂太氏も述べています。
航空医学者・宇宙医学者の黒田勲氏は『航空機のヒューマンエラーから見た人間の特性と限界(1996)』のなかで、人間行動のエラーを誘発させやすい状態として“焦り”を挙げ、「日本人の行動にもっとも大きな影響を与える要因」としています。“焦り”により、以下内容が起こるとのこと。
・緊急時のストレスで手順を省略 ・短絡(物事を早急に結びつける) ・乱れを促進
持っていくものの確認を省いたり、「課長からメールが入っていたみたいだけど、大した内容じゃないだろう」と短絡的な考えで判断してしまったり、身だしなみが乱れたり、待ち合わせの場所の確認が適当になったりと、何もかもが不十分になってしまいます。
したがって、朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由は、「焦ってエラーを起こす」からです。
朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由2:自律神経が乱れて冴えない
日本における自律神経研究の第一人者で、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によると、朝の過ごし方でつくられた自律神経の状態は、長く持続するのだそう。
ゆったりとした気持ちで朝の支度ができれば、自律神経のバランスも整い、最高の状態で1日を過ごせるわけです。しかし、朝に大慌てだと、自律神経のバランスが大きく崩れるので、1日を台無しにしてしまいます。
朝を大慌てで過ごし、交感神経が極端に優位になると、イライラして、免疫力まで低下してしまうのだとか。一度乱れた自律神経は、もとに戻すのが大変とのこと。
小林弘幸教授はこういいます。
――ぜひいつもより1時間早く起きることを習慣にしてみてください。これだけですべての行為をゆっくりと行う余裕ができ、あなたのパフォーマンスは劇的に向上していきます。もちろん、自律神経が整うと血液がサラサラと全身に流れていき、頭も冴えわたるでしょう。
(引用元:Study Hacker|自律神経が乱れる3つの最悪習慣。“朝はゆっくり” で1日のパフォーマンスは劇的に向上する。)
つまり、いつも朝にバタバタして、自律神経が乱れている人は、頭が冴えわたっていない、ということ。したがって、朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由の2番目は、「自律神経が乱れて冴えない」ということです。
朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由3:体温が上がらず生産性が低下
いつも朝に慌てない人の場合、夜は適時に寝て、朝は余裕を持って起床すると考えられるので「朝型」、いつも朝に大慌てな人がギリギリまで寝ているのは、夜寝るのが遅いと考えられるので「夜型」と、分類できます。
睡眠専門のマーケティング会社が運営する「フミナーズ」では、朝型と夜型の大きな違いとして、「体温の上がり方」を挙げています。
朝型と夜型で体調の違いが大きく分かれるのは、1日の体温リズムです。両者の体温が最も高くなる時刻・低くなる時刻には2時間程度のズレがあり、そのズレは日中の活動状態にも影響します。 朝型は早い時間から体温が上がるため午前中から活動的なのに対し、夜型は体温が上がるのが遅く昼過ぎ、ときには夕方近くまで調子が出ないことがあります。
(引用元:フミナーズ|朝型生活と夜型生活のメリット・デメリットとは)
いつまで経っても調子が上向きにならなければ、その日の生産性も、到底上がりません。
また、早稲田大学人間科学学術院の前橋明教授は、朝食の摂取で食べ物を内臓で燃焼させ、体温を上げることの重要性を説いています。体温が上がる=血液循環が良くなれば活動効率も上がりますが、なかなか体温が上がらなければ活力が出にくく、集中力や学習効率も上がらないそう。
ただでさえ大慌てで支度している人が、しっかりと朝食をとるのはなおさら難しいはず。したがって、朝に大慌てだと仕事がデキなくなる理由の3つ目は、「体温が上がらず生産性が低下する」です。
「朝に大慌て」を解消する方法
ここまで、朝を大慌てで過ごすことの危険性を説明しました。ここからは、「仕事がデキる人」に変身するために、余裕を持って朝を過ごす方法を提案します。
「朝に大慌て」を解消する方法1:前夜・前週の片づけ
エッセイストの金子由紀子さんいわく、「夜のプチ片づけは朝の快適につながる」とのこと。美的収納プランナーの草間雅子さんは、週末に部屋の動線を見直し、日常で不便さを感じていることを、修正しておくようアドバイスしています。
また、ハワイに拠点を置くレポーターの Carla Herreria 氏は、毎朝「鍵はどこ? 財布はどこ?」と慌てないよう、必需品の置き場所を決めるようすすめています。
誰でも朝は忙しいもの。その1分1秒を少しでも節約できるように、前夜・前週の片づけを心がけ、必需品の定位置を決めておきましょう。
「朝に大慌て」を解消する方法2:朝食の仕込み
体温を上げるためにも、栄養バランスのいい朝食は大切ですが、時間がない朝に色々と準備するのは大変です。前日に、あるいは定期的に仕込んでおきましょう。筆者の場合は、時間があるときにブロッコリーを塩茹でしておき、平日の朝すぐ出せるよう工夫しています。
また、「楽しみ」になるような朝食にすれば、早起きのモチベーションを高めることができます。
たとえば、とっておきのコーヒー、とっておきのパン、とっておきのバターやはちみつでも構いません。その香りを嗅いだり、口に含んだりしたときの快感が、天然の目覚ましになってくれるでしょう。
「朝に大慌て」を解消する方法3:明日の準備タイマー
前夜のうちに、翌日着ていく服や、持っていくものの準備を万全にしておく習慣を身につけるため、「明日の準備タイマー」が毎晩鳴るようにセットしましょう。
たとえば毎晩10時にタイマーが鳴れば、それが「明日の準備をしよう」という呼びかけになるので、意識を持つことができます。
とてもシンプルな方法ですが、資料に付箋を貼るように、読みかけの本に栞を挟むように、カレンダーに印をつけるように、ここだよ、いまだよ、いまのうちだよと、「気づかせる」ことが大きな目的。気づいたことで、まずは成功なのです。
当然ながら夜更かしは論外。タイマーによって意識が“明日”へと向き、「明日の準備をして、そろそろ寝るか……」という流れになれば、こっちのものです!
*** 「いつも朝に大慌てな人は仕事がデキない理由」と、「“朝に大慌て”を解消する方法」を紹介しました。こちらの記事『自律神経が乱れる3つの最悪習慣。“朝はゆっくり” で1日のパフォーマンスは劇的に向上する。』では、自律神経に焦点を当てつつ、有益な習慣を紹介しています。ぜひ一緒にご覧ください。
(参考) PR TIMES|年収800万円以上の人の7割は朝の時間に余裕がある!朝ごはんを大事にする人ほどモテる!?調理器具増えすぎ問題!家に1年以上使っていない調理器具がある人は半数以上!(52.4%) 黒田勲(1996),「航空機のヒューマンエラーから見た人間の特性と限界」,計測と制御,第35巻,第8号,pp.597-600. Study Hacker|自律神経が乱れる3つの最悪習慣。“朝はゆっくり” で1日のパフォーマンスは劇的に向上する。 リクナビNEXTジャーナル|一流の人は「自律神経」が整うよう、工夫をしている――順天堂大学医学部教授 小林弘幸氏の仕事論 フミナーズ|朝型生活と夜型生活のメリット・デメリットとは 講談社|現代ビジネス|体調が良くなる「朝・昼・晩」の最適体温、教えます(週刊現代) NIKKEI STYLE|WOMAN SMART|朝に余裕が生まれる、夜5分の「仕込み」ワザ ハフポスト|毎朝ギリギリに家を飛び出してる人は、この8つが原因かも...... 斎藤茂太著(2015),『「いい人だけどグズ」を直したい人が読む本―仕事・人間関係のクヨクヨを晴らす考え方 』,ゴマブックス株式会社.