みなさんは「プロデューサー」と呼ばれる職種をご存知でしょうか? テレビ等のメディアにおける役職、あるいはイベントの発起人というイメージを持つ方が多いと思いますが、しかしいまや、広告戦略のプロデューサーや店舗デザインのプロデューサーなど多業種で見られる肩書きとなっています。 今回は、プロデューサーという職種が広まっている背景と、そこから読み解く「ビジネスマンに求められるスキル」についてご紹介します。
プロデューサーが重宝される理由
ここ最近多くの業界でこの肩書きが重宝されている理由は、「プロデューサー感覚は全てのビジネスマンが持っておくべきものだから」と僕は考えています。そもそもプロデューサーとは「(何かを)生み出す人」という意味で、「付加価値を産み出して報酬をもらいGDPにも換算される人」と考えれば、かなりの多くの人がプロデューサーという意味合いに合致するのではないでしょうか。 僕はラジオ番組や音楽イベントのプロデューサーとして勤務していました。ただ社外、特に他業界の人からは「プロデューサーってどんな仕事なんですか?」とよく聞かれました。いろんな仕事があるのですが…
・コストを管理する ・判断をして責任を取る ・円滑なコミュニケーションを促す
の3点に絞られます。今回は僕の実体験を元に、あらゆるビジネスマンに求められるプロデューサースキルについてご紹介します。
コストを管理する
まずは自分自身の「コストを管理する」ことが求められます。一般的に「コスト」と聞くと、お金や予算の話が思い浮かびがちですが、コストは金銭面だけでは決してありません。お金があってもどうにもならない「時間」にもコスト意識を持ち、与えられた予算だけではなく自分の時間を管理するという感覚が必要です。
コスト削減のためにタクシーは一切禁止という企業もありますが、確かに金銭面のコストは無くなるものの、忙しいエグゼクティブ層にとってはタクシーの移動中にメールや電話をしたり一人でゆっくりと考えたり、と、重要な仕事タイムになっていることもあります。その大切な仕事時間を削ることとタクシー代を浮かせること、どちらが真の意味でのコスト削減になるでしょう。
これは一概に「タクシーは無駄ではない」という話ではありません。「コスト」とは金銭面だけではなく、時間や体力温存など、様々な側面があることを理解してください。
判断をして責任を取る
仕事は判断の連続です。上の立場に判断を委ねるだけであれば、自分という立場は単なる会社の駒に過ぎません。自分が主体的に仕事に取り組むということはすなわち責任を負うということです。 例えば営業担当であれば、自分がセールスした案件や引き継いだ案件の進捗やトラブルが起こりそうな問題、クライアントの課題などは、誰より自分が一番知っているのは最低限のこと。トラブル発生時には「このクライアントの担当は自分である」という責任感を持って自分で事態を収拾することを考えましょう。
進捗を報告しておくのは大切ですが、本当にどうしようもなくなった時だけ上司に登場してもらうことをオススメします。その積み重ねが自立した自分に導きます。あくまでも会社や仕事は自分が成長する手段と考え、最大限利用してみましょう。
円滑なコミュニケーションを促す
プロデューサーという職種はクリエイティブな実務をするというよりは、人を使う仕事が主になります。仕事をしているといろんな人間関係が存在しており、自分と直接関わっている人とのやり取りはもちろんのこと、ここでポイントとなのは次の相手の行動を意識できているかということです。 サッカー元日本代表の小野伸二選手は「自分は毎回メッセージ付きのパスを出している」と発言したことがあります。例えばパスを出す相手の利き脚やポジショニングを意識した上で、そのままシュートを打って欲しいのかいったんキープして欲しいのかなどのメッセージをパスのコースやボールの回転に込めて彼はボールを蹴っているそうです。
ビジネスにおいてもこれは重要な視点で、相手が次に動きやすいように指示を出したりお願いをしたりすると、相手にとっても自分の価値を高めることができますし、その作業もスムーズに進む確率が高まるでしょう。 また少し大きめの交渉事では「根回し」という作業が大きな鍵を握ることが多いです。交渉相手が次動きやすいように、あるいは逆にその条件を飲まざるを得ないように社内外で水面下で動いてお膳立てしておくことが重要です。
*** いかがでしたか。プロデューサー感覚が全てのビジネスマンにとっても必要なスキルであることがお分かり頂けたでしょうか。 自分の一挙手一投足が物事に与える影響を常に考える癖がついていると、何かを達成するために限られた時間の中で何をすべきか、自分の行動の取捨選択ができ、結果としてよりベターな行動を取ることが可能になります。細かい作業においても常に全体に及ぼす影響を意識し、自分の行動に責任を持って日々の業務に取り組みましょう。
《参考文献》 経済産業省 | プロデューサー論 日本能率協会マネジメントセンター|プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動 (佐々木直彦 )