世の中には「それ本当か?」と言いたくなるような法則や、因果関係のようなものが溢れています。あなたは、偽の相関関係を言い表した情報にだまされない自信がありますか?
X大学に入学できれば、一流企業に就職できる。 Yという商品を買えば、5kg痩せられる。 Z氏の教えを実践すれば、ビジネスで成功できる。
文字だけ読めば疑わしいとすぐに分かりそうな情報でも、テレビで言っていたり、著名人が本の中で書いていたりして、もっともらしく主張されているとつい信じ込んでしまうもの。しかし、偽の情報に振り回されていては、勉強も仕事もうまくいくわけがありませんよね。
では、偽の相関関係を言い表した情報にだまされないようにするには、どうすればよいのでしょうか。
錯誤相関とは
数年前に話題になったベストセラーに『東大合格生のノートはかならず美しい』というものがありました。そのときに私は東大合格を目指す高校生でしたが、ノートが非常に汚かったこともあり、少なからずショックを受けたのを覚えています。
そんな私ですが現在は一応「東大合格生」になりました。しかし私のノートは、未だにとても汚いのです。ノートが汚い東大生も他にたくさん知っています。
だからこそはっきりと言えますが、「東大生のノートはかならず美しい」という相関関係を見出すのは、適切ではありません。(もちろんこれはタイトル解釈への言及であって、本の内容自体について批判する意図はありません)
このように、実際に相関関係のないものに相関関係を見出してしまうことを錯誤相関と言います。冒頭に挙げた簡単な例のように、錯誤相関は身の回りに数多く溢れています。
人間が錯誤相関を見出してしまう最大の要因は、脳が、印象的な二つの出来事があたかも関係しあっているように解釈したがる働きを持っているためだと言われています。
錯誤相関に惑わされてしまうと、重要な局面で正しい判断ができなくなることも考えられます。どのようにすれば偽の相関関係に惑わされなくなるのか、その方法について考えてみることにしましょう。
四分割表の活用
錯誤相関を見破るのに有効な手段が、「四分割表」というものを活用することです。
この四分割表について説明するために、ここでは「A神社のお守りを持っていると素敵な出会いに恵まれる」という相関関係が正しいかどうか考えてみましょう。
この仮説を検証するために、多くの人は、「お守りを持っていたのに素敵な出会いに恵まれなかった」という人がどれぐらいいるか調査することを思いつくと思います。しかし実際には、それだけだと不十分です。
この相関関係の仮説を検証するには、「お守りを持っていないのに素敵な出会いに恵まれた」人と「お守りを持っていなくて、素敵な出会いに恵まれなかった」人もあわせて、それぞれの割合を比較検討することが必要になります。
四分割法とは、このように検証すべき対象を4つに分けたうえでひとつの表にまとめ、検証する、というやり方なのです。
四分割表の活用の実践例
[素敵な出会いがあった] | [素敵な出会いがなかった] | |
[お守りあり] | 70人 | 30人 |
[お守りなし] | 50人 | 50人 |
このように比較をしてみると、お守りを持っている人が素敵な人と出会った割合は、お守りを持っていない人よりも比較的高くなっていることが分かります。
しかし、次のような結果になった場合はどうでしょうか。
[素敵な出会いがあった] | [素敵な出会いがなかった] | |
[お守りあり] | 55人 | 45人 |
[お守りなし] | 50人 | 50人 |
お守りを持っている人だけを調査した場合、比較的高い確率で素敵な出会いがあったかのように相関関係を見出してしまいそうですが、2つ目のような結果が判明すれば、実はお守りを持っている人といない人との間では有意な差があると言いにくいのだということがわかります。
大切なのは「実際に書く」こと
上の例は非常にシンプルな例ですが、私たちが実際に直面する言説の多くは複雑な構造を持っており、正しいかどうかを判定するのに何を検討すれば良いのかわからないという状況も少なくありません。
そんなとき、このように四分割表をざっと書いてみるだけでも、どんな要素に着目してみれば良いのか明瞭にすることができます。
相関関係が正しいのかどうか、頭の中だけで考えていると、思わぬ見落としや思い込みで思考が混乱してしまうこともあります。そんなときこそ一度思考を「目に見える形」で整理してみましょう。錯誤相関という思い込みに騙されないようにするには、これがとても大切なことなのです。
(参考) Wikipedia|錯誤相関 Wikipedia|前後即因果の誤謬 エクセルQC館|四分割表 伊勢田哲治・戸田山和久・調麻佐志・村上祐子編集(2013),『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』,名古屋大学出版会.