「どうせうまくいかない」 「また失敗するに違いない」
そう思い込んで諦めてしまったことはありませんか? ミスを犯すたびに引きずってしまっていませんか? 同じミスは繰り返さなくても、ミスを引きずって他の業務が上手くいかないこともあるでしょう。
せっかくなら、犯してしまったミスを次の仕事へ活かしてみませんか? ミスが減るだけでなく、きっと効率良く作業をこなすことができるはずです。今回は、そんなときに必要な“自己効力感”の高め方をご紹介します。
自己効力感とは?
自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは、カナダ人心理学者アルバート・バンデューラが提唱した、「物事を自分が成功させられる可能性」を認知する感覚のこと
つまり、行動を起こす前に「自分だったらできるんじゃないか」、「これならできそう」といった確信の気持ちをもっていることです。「自己効力」や「自己可能感」と訳されることもあります。平たく言うと“自信”のようなものですね。
例えば、新しいプロジェクトに誘われたとしましょう。もし自己効力感が高ければ、すぐにそのプロジェクトに向けて準備を始めるはずです。自己効力感が低いと「きっと足を引っ張ってしまう」、「失敗するに違いない」などと考えて参加を渋ってしまうでしょう。
このように、自信のなさでみすみすチャンスを逃してしまっているかもしれません。
自己効力感が高いってどういうこと?
自己効力感が高い人は、どういう人でしょうか? 特徴としては、次のような事柄が挙げられます。
・難しい課題にもチャレンジする あなたの周りに、新しいプロジェクトにも臆せず参加したり、「どんなことでも任せてください」と言ってのけられるような人はいませんか? 自己効力感が低い人は、今までに失敗した経験からリスクを考えて尻込みしてしまいがち。それに対して、難しい課題にも失敗を恐れずに果敢にチャレンジできる人は、自己効力感が高い証拠です。
・失敗の立ち直りが早い 自己効力感の高い人は、失敗しても「努力が足りなかったからだ」と考えてすぐに立ち直り、さらに努力を重ねます。また、人から注意を受けても前向きに捉えることができるのです。
自己効力感の低い人は、失敗すると「やっぱり自分はだめな人間なんだ」と落ち込み、挑戦することから一層遠のいてしまいます。また、人から注意をされても同様に自信を失い、立ち直れなくなってしまうこともあるでしょう。
たとえ失敗しても恐れずにまたチャレンジできる自己効力感が高い人の方が、ビジネスにおいて可能性が広がって有利だと思いませんか?
自己効力感の高め方
たとえ今は自己効力感が低くても、諦めることはありません。なぜなら、自己効力感は「作れる」ものだからです。では、どうしたら自己効力感を高められるでしょうか?
1.達成体験の積み重ね 達成体験とは、何かをやり遂げた、成功したという体験のこと。この積み重ねで自己効力感を高めることができます。
例えば、上司から「明日までに売上報告書を作っておいて」と頼まれたとしましょう。売上報告書を作った経験が何度かあれば、「それなら自分にもできる」と思えるでしょう。反対に、売上報告書を作ったことがなければ「明日までに作れるわけがない」と、不安な気持ちになるはずです。
このように、“小さな成功”という達成経験を積み重ねることでモチベーションが変わってきます。 学生時代、「分厚い問題集よりも薄い問題集を複数冊こなした方が効果的だ」という風潮はありませんでしたか? 問題集は、あらゆる形式の問題に触れられるように何周もした方が良いという理由もありますが、「1冊解き終わった」という達成感が自信に繋がるからだという点も挙げられます。このように、低めに設定した目標の達成を積み重ねることで自己効力感が高められていくのです。
「今日はいつもより30分早く仕事を終わらせる」などの“頑張れば達成できる程度の目標”を定めてみましょう。達成できなかった場合に余計に自己肯定感が下がってしまうので、大切なのは“手の届きやすい目標を定めること”です。
2.代理経験 自分がこれから挑戦しようとしていることと同じことを第三者が実行し、成功しているところを見ることで「自分にもできるのではないか」という自信を生み、自己効力感を高めることができます。特に、自分と似た境遇の人が努力して達成した場合は、より効果が高まるのです。
例えば、自分とキャリアに大きな差のある先輩の仕事ぶりを見るのは勉強にはなりますが、結局「自分にはあんなことできない」とネガティブな感情を抱いてしまいがち。しかし、自分と同じように人前で話すことが苦手だった同僚が練習を重ね、社外のプレゼンで成功を収めたとなると「自分も頑張ろう」、「自分も努力すればできるのではないか」、「どうやって練習したのか聞いてみよう」といった前向きな気持ちになりやすくなります。
身の周りで、自分が挑戦しようとしていることを上手くこなしている人を探して観察してみることで、自己効力感の向上に繋がるでしょう。
3.生理的情緒的高揚 物事に取り組もうとしているときに、精神的に落ち着いてリラックスしている自分自身を認識することで安心し、自己効力感に好影響を与えることができます。しかし、気分が落ち込んでいたり、汗をかいたり、脈が激しくなっている自身を認識すると、いつもならできることも「できない」と感じてしまいやすくなってしまうので、常に自分自身を認識する必要はありません。
例えば、重要なプレゼンの前にリラックスした状態で「練習を重ねてきたから大丈夫。気持ちも落ち着いているし、絶対にうまくいく」と考えることができれば自己効力感を強固にすることができます。しかし、そこで心臓がバクバクしていたり、冷や汗をかいている自分に気づいてしまうと「緊張してしまった。失敗するかもしれない」という気持ちになりやすくなってしまいやすくなるのです。
気分を高揚させるために、プレゼンの日の朝には気分が上がる音楽を聴いたり、成功体験記のようなモチベーションが上がる本を読んだりすることがオススメです。
だからといって、生理的な緊張状態を自分でコントロールするのはそう簡単ではありません。その場合は、自律神経に負担を与えないよう、睡眠時間や食事内容、労働量などを改善することが大切です。
*** 筆者も自己効力感が低いので耳の痛い話題でした。自己効力感を高めて何事も前向きにチャレンジする習慣を作りたいですよね。
(参考) ビジネス心理学|自己効力感とは|高める方法やモチベーションとの関係を解説 Biz Hint|自己効力感(セルフエフィカシー) 日経Bizアカデミー|自己効力感へのステップ・アップ Wikipedia|自己効力感 リスタ!|自己効力感とは|本質を知って簡単な形で実践できる4つの方法