バンデューラの「自己効力感」とは? 初心者でも「社会的学習理論」がわかる!

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アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)氏は、「自己効力感」を提唱したことで知られる心理学者です。自己効力感とは、自分はある行動を実行できると信じられる「自信」の一種。私たちが仕事や勉強に注力し、目標を達成するには欠かせないものです。

バンデューラ氏は、有名な「社会的学習理論」をも打ち立てました。人間は、自分で物事を経験しなくても、他者の観察学習&模倣(モデリング)によって学ぶ、というものです。

心理学におけるバンデューラ氏の功績は、世界中で知られています。ですが、心理学が専門でない人にとっては、なじみが薄いかもしれません。

そこで今回は、バンデューラ氏の主要な研究成果を紹介したうえで、特に自己効力感に焦点をあてます。自己効力感のチェック方法、自己効力感を高める方法も紹介するので、ぜひやってみてください。

バンデューラとは

バンデューラ氏は、1925年にカナダで生を受けました。米アイオワ大学で1952年に博士号を取得。スタンフォード大学で順調にキャリアを重ね、1964年には、39歳という若さで同大学の教授に就任しました。

バンデューラ氏に関しては、以下に挙げる3つのキーワードを、ぜひ覚えておいてください。

  • 「ボボ人形実験」
  • 社会的学習理論
  • 自己効力感

3つのキーワードについて解説しつつ、バンデューラ氏が心理学史に残した足跡をたどっていきす。

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バンデューラの「ボボ人形実験」

バンデューラ氏のキャリアは、「モデリング」の研究から始まりました。モデリングとは、他者の行動を見てまねる(モデル化する)ことによる学習方法。そして、モデリング理論を実証するために行なわれたのが「ボボ人形実験」です。

「ボボ人形実験」とは、空気で膨らませたビニール人形に対し、大人がたたいたり蹴ったり罵声を浴びせたりする様子を子どもたちに見せるというもの。実験の結果、人形を乱暴に扱う大人を見た子どもたちは人形を殴り、人形をたたかずに遊ぶ大人を見た子どもたちは、人形に乱暴しませんでした。

「ボボ人形実験」により、人間は他者の振舞いを見るだけで学習するという、モデリング理論が証明されたのです。「それのどこがすごいの?」と思うかもしれませんが、当時の心理学では、人間は「自分が直接経験したこと」からしか学習できないと考えられていました。そのため、「ボボ人形実験」によるバンデューラ氏の発見は画期的なものだったのです。

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バンデューラの「社会的学習理論」

バンデューラ氏は、「ボボ人形実験」の結果から、「社会的学習理論」を体系化しました。人間は、直接の経験からだけでなく、他者(社会環境)を見てまねることによっても学習する、というものです。社会的学習理論においては、人間の行動を決定する要因として、先行要因・結果要因・認知的要因の3つが挙げられています。

先行要因

先行要因とは、行動を起こす前における条件。体調ややる気(生理・情動反応)、結果についての予測(予期機能)などです。

  • 勉強したい気分になった→勉強するぞ!
  • 自分なら合格できるはずだ→勉強するぞ!

結果要因

結果要因とは、行動の結果から学習したもの。自分が過去に成功したときの喜びをもう一度味わいたい、というようなものです。自分の直接的な経験だけでなく、他人の成功を見るなどの間接的な経験も、結果要因として作用します(代理強化)。

  • 以前、簿記の資格に合格したときは気持ちよかった→勉強するぞ!
  • 合格した友人はとても嬉しそうだった→勉強するぞ!

認知的要因

「勉強は楽しい」と思う人と、「勉強はつらい」という人では、勉強への取り組み方は大きく違いますよね。このように、ある行動に対してどのような捉え方(認知)をしているかという条件が、認知的要因です。

  • 勉強するのはすばらしいことだ→勉強するぞ!
  • 努力をするのは楽しいことだ→勉強するぞ!

バンデューラ氏が提唱した先行要因・結果要因・認知的要因は、それぞれ完全に独立しているわけではなく、複雑に関連し、影響を及ぼし合いながら、私たちの意思決定に影響を与えています。

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バンデューラの「自己効力感」

バンデューラ氏が提唱した「自己効力感(self-efficacy)」は、近年、日本でも認知を獲得しつつあります。心理学を応用したコーチングを提供する「ポジティブサイコロジースクール」の代表・久世浩司氏によると、自己効力感とは「価値ある目標に向かって、自分は業務を遂行できる、と自己を信じること」。つまり、「自分ならできるはず!」という自信に満ちた感覚のことです。

たとえば、スキルアップのために資格の取得を思いついたとします。そのとき、「自分の頭じゃ合格できるわけない」と考えてしまうなら自己効力感は低い状態にあり、逆に「楽勝で合格できるだろう」と感じられるなら、自己効力感が高い、ということです。

自己効力感が高いと、「自分はできるはず」という自信に満ちあふれているので、積極的に努力でき、結果として目標を達成しやすくなります。「頑張ればきっと合格できるんだ!」と信じて毎日熱心に勉強している人と、「頑張ってもどうせムダだろう」と勉強に打ち込まない人では、どちらが合格しやすいかは明白ですよね。

NLP(※)トレーナーの足達大和氏によると、自己効力感が高い人は、ほかにも以下のメリットを得られるのだそう(※神経言語プログラミング。ビジネスやスポーツにも役立つとされる、新しい心理学)。

  • 目標を達成できる
  • トラブル・逆境を乗り越えられる
  • 業績向上に向けてチャレンジできる
  • 自分の感情・行動をコントロールできる
  • 人間関係を良好に保てる

反対に、自己効力感が低いと、以下のようなデメリットをこうむる恐れがあります。

  • 「どうせムリ」とすぐ諦める
  • モチベーションが上がらない
  • チャレンジをしない
  • 他人に責任転嫁し、言い訳が多い
  • 自分を過剰に責める
  • 劣等感が強い

謙虚な人・慎み深い人ほど、「私なんて……」という思考になりがち。しかし、目標達成という観点だと、そうしたネガティブな考え方は不利益をもたらします。仕事や勉強で成功を収めたいなら、バンデューラ氏の提唱した自己効力感を保つ必要があるのです。

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バンデューラの「自己効力感」と「社会的学習理論」の関係

自己効力感は、バンデューラ氏が提唱した社会的学習理論と関係しています。社会的学習理論における先行要因には、「予期機能」というものがあるのでしたね。ここからは少し込み入った話になるので、以下の図を見ながら読み進めてください。

「行動決定3要因」は、先行要因・結果要因・認知的要因に分かれる。先行要因はさらに「生理・情動反応」「学習の生得的機制」「予知機能」に分かれる。予知機能はさらに「効力予期」と「結果予期」に分かれる。「効力予期」は、自己効力感と関係している。

(画像は筆者が作成)

予期機能とは、行動の結果に対する予測のこと。予期機能は、私たちの行動決定に大きな影響を及ぼします。たとえば、「東京大学に合格なんか絶対できるわけない」と予期している受験生は、「どうせ無理なんだから、努力なんてやめちゃおう」と捨て鉢になってしまうはず。反対に、「自分はきっと合格できる」と予期している受験生は、「頑張って勉強しよう」と行動する気になれますよね。

そして、予期機能は以下の2種類に分けられます。

  • 効力予期:自分の能力への予測
    例)「東京大学に合格する実力が自分にはあるだろう/ないだろう」
  • 結果予期:環境など外的な要因への予測
    例)「親が大学進学を許してくれるだろう/くれないだろう」

効力予期と結果予期は、どちらも目標達成に欠かせません。「親が進学を許さないだろう」という結果予期をしていたら、たとえ「東大に合格する実力がある」という効力予期があっても、「勉強したってムダだ」とやる気がなくなってしまうはず。反対に、「親は進学を許してくれるけれど、合格する実力はない」と予期した場合も、意欲は低下してしまうでしょう。

効力予期と結果予期のうち、バンデューラ氏が特に注目したのが効力予期です。バンデューラ氏が、効力予期の研究を進めた結果として生まれたのが、自己効力感という概念でした。

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自己効力感の測定方法

バンデューラ氏が提唱した自己効力感は、前述のとおり、目標達成に必要です。自分の自己効力感の程度がよくわからないという人のため、自己効力感を数値として算出できる「一般性セルフ・エフィカシー尺度」という質問票をご紹介しましょう。

「一般性セルフ・エフィカシー尺度」は、北海道医療大学教授・坂野雄二氏らの論文「一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み」として、1986年に発表されました。16の質問事項にYES/NOで答える16点満点のテストで、点数が高いほど自己効力感も高いということになります。

一般性セルフエフィカシー尺度の質問表。質問項目はそれぞれ「何か仕事をするときは、自信をもってやる方である」「過去に犯した失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある」「友人より優れた能力がある」「仕事を終えた後、失敗したと感じることの方が多い」「人と比べて心配性な方である」「何かを決めるとき、迷わずに決定する方である」「何かをするとき、うまくゆかないのではないかと不安になることが多い」「引っ込み思案な方だと思う」「人より記憶力がよい方である」「結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでゆく方だと思う」「どうやったらよいか決心がつかずに仕事にとりかかれないことがよくある」「友人よりも特に優れた知識をもっている方である」「どんなことでも積極的にこなす方である」「小さな失敗でも人よりずっと気にする方である」「積極的に活動するのは、苦手な方である」「世の中に貢献できる力があると思う」

(当該論文を参考に、筆者が画像を作成)

論文によると、278名の被験者に「一般性セルフ・エフィカシー尺度」を適用したところ、平均点は6.580点、標準偏差は3.369点だったのだそう。この結果から考えると、だいたい以下のとおりに判断できそうです(※筆者個人の見解)。

  • 10点~:標準より高い
  • 4~9点:標準
  • ~3点:標準未満

バンデューラ氏のいう「自己効力感」が低かった人は、意識的に自己効力感を高めていきましょう。

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バンデューラが説く、自己効力感を高める4要素

バンデューラ氏は、自己効力感を高める要素として、以下の4つを提唱しています。

直接的達成経験

「直接的達成経験」とは、目標を達成したり、何かをやり遂げたりなど、自分が直接経験した成功体験のこと。具体的には、

  • TOEICで990点を獲得した
  • 全営業担当者のなかで成績首位となった
  • 自分で決めた勉強のノルマをクリアした

などが、直接的達成経験の例として挙げられるでしょう。

代理経験

他人の成功体験を見て、成功を疑似体験することでも、自己効力感は高まります。これが「代理経験」です。会社の先輩がバリバリ仕事をこなしているのを見て、「自分も頑張れば、ああなれるかも」と意欲がかき立てられた経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。

代理経験を与えてくれるのは、身近な人・実在の人物だけとは限りません。映画や漫画で、主人公が努力の末に勝利をつかんだ姿を目にし、「自分も頑張るぞ!」と勇気をもらうのも、代理経験です。

言語的説得

家族や友人から「あなたならきっと大丈夫」と励ましてもらうだけで、不思議と自信が沸き、本当にできそうな気分になることがあります。また、ポジティブな歌詞の「応援ソング」を聴き、やる気を充電するという方も多いのではないでしょうか。

このように、「あなたならできる」というポジティブな言葉を何度も言い聞かせて自己効力感を高めるのが、「言語的説得」です。

生理的・情動的喚起

「生理的・情動的喚起」とは、体調を整えたり気分を盛り上げたりすることで自己効力感を高める方法。寝不足のときや、失恋したときなど、ふだんは前向きな人でも落ち込んでしまうことでしょう。

バンデューラ氏が提唱した、上記の4要素を意識すれば、自己効力感を高めやすくなります。

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自己効力感を高める方法

バンデューラ氏が提唱した、自己効力感を高める4つの要素を踏まえ、自己効力感を高める具体的な方法をお教えします。NLPトレーナー・足達大和氏が推奨する3つのやり方をご紹介しましょう。

1. 過去のポジティブな出来事を書き出す

まずは、過去に経験したポジティブな出来事を書き出すこと。「直接的達成経験」は、自己効力感を高めてくれる要素です。過去の成功体験を思い出せば、自己効力感の向上が期待できます。

「自分は平凡な人間だから、成功経験なんて何もないよ」という方もいるでしょう。しかし、誰にでも必ず、何かしらの成功体験はあるはずなのです。「子どもの頃、字が上手だと褒められた」「厚い本を読み切った」「知らない人に道を教えたら感謝された」など、どんなにちょっとしたことでもいいのです。

いくつか成功体験を書き出したら、そのリストを見つつ、過去の成功体験をなるべく鮮明に思い出しましょう。そして、「あのとき○○ができたんだから、自分には□□もできるはず」と、前向きな気分を作り出してください。自己効力感が高まるはずです。

2. 成功をイメージする

2つ目は、未来の成功をイメージするという方法。目標や理想を抱いて頑張っている方は多いと思いますが、実現したときのことまで具体的にイメージしている方は、案外少ないのではないでしょうか?

安達氏によると、脳は基本的に、現実と想像を区別できないのだそう。つまり、成功イメージを鮮明に思い描けば、「直接的達成経験」と同じような効果が得られるため、自己効力感のアップにつながるのです。

安達氏によると、成功イメージを描く際、「五感をフル活用する」ほど効果が高まるのだそう。目標を達成したとき、目の前にはどんな景色が見えているか? どんな音が聞こえているか? 感触は? 匂いや味は? なるべく細かいところまで想像を膨らませてください。 

3. 適切な目標設定をする

最後に紹介するのは、適切な目標設定。そもそも、目標の立て方が不適切だと、目標を達成するまでのビジョンがうまく描けないため、自己効力感が低下してしまいます。目標設定の際に気をつけたい3つのポイントを、安達氏の解説をもとにご紹介しましょう。

肯定的な言葉

目標を立てるときは、肯定的な言葉を使いましょう。「仕事でミスをしない」という否定表現は、「仕事を完璧にやり遂げる」「××以上の数値を達成する」など、前向きな言葉に直してください

自分でコントロールできる内容

目標は、自分でコントロールできる内容にしましょう。たとえば、「売上を1.5倍にする」という目標は、自分ではコントロールできない目標にあたります。商品を買うかどうかを最終的に決めるのは顧客なので、自分の努力や意志ではどうにもならない要素が絡んでいるからです。

コントロールできない要素を目標に含んでしまうと、どうすれば達成できるのかが見えにくくなり、モチベーションを保つのは困難。「訪問数を1.5倍にする」「常に笑顔を崩さずに話す」など、自分でコントロールできることを目標に設定しましょう。

実現の可能性

難易度が高すぎず、現実的に達成可能な目標を設定することが大切です。あまりに難しい目標だと、「自分にはできる!」と感じられなくなり、自己効力感が低下してしまいます。

安達氏によると、目標のレベルを適切に設定するには、以下の4点を考慮するとよいのだそう。

  • それをやることで何を得られる?
  • それをやることで何を失う?
  • それをやらないことで何を得られる?
  • それをやらないことで何を失う?

たとえば、目標とする資格試験に合格するためには膨大な勉強量をこなす必要があり、連日徹夜続きになってしまうほどの勉強量だというなら、その資格の取得は適切な目標ではありません。心身の健康や人間関係など、失うものが大きすぎるのです。一方、「起業すれば将来的に収入が増えそうだけれど、家族と過ごす時間は減る」のように悩む場合、「得られるもの」と「失うもの」を書き出し、両方のバランスを考えて目標を設定しましょう。

自己効力感が低いと自覚している方は、バンデューラ氏の理論に基づいた上記の方法を、ぜひ実践してみてください。

***
心理学者・バンデューラ氏の主要な業績と、自己効力感について解説しました。バンデューラ氏の名前は、自己効力感やモチベーションなどのトピックで頻出なので、この機会にぜひ覚えておきましょう。

(参考)
Bandura, Albert (1977), Social Learning Theory, New York, General Learning Press.
日外アソシエーツ株式会社編(2016),『現代外国人名録2016』, 日外アソシエーツ株式会社.
J-STAGE|一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み
九州産業大学図書館学術リポジトリ|自己効力感研究の現状と今後の可能性
STANFORD magazine|Confidence Man
NLP-JAPAN ラーニング・センター 公式サイト|NLPとは?
コトバンク|アルバート バンデューラ
ダイヤモンド・オンライン|まずは「小さな成功」により自信を積み重ねよう

【ライタープロフィール】
佐藤舜
中央大学文学部出身。専攻は哲学で、心や精神文化に関わる分野を研究。趣味は映画、読書、ラジオ。人生ナンバーワンの映画は『セッション』、本は『暇と退屈の倫理学』。好きな芸人はハライチ、有吉弘行、伊集院光、ダウンタウン。

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