成果が出ないのは「頑張りすぎ」だから。日本の労働生産性を下げる『一生懸命の罠』

いつも全力で100%の力を出し切る。理想はそうあっても、人間の集中力には限界があります。そんなポリシーで仕事をすれば、ひとつひとつに時間がかかりすぎて時間切れになってしまったり、後半の仕事の質が落ちたりしてしまうことも。そうなれば結局のところ、「いつも100%」という方針が守れないだけでなく、重要で落とせない仕事の質が低いのに、些末で重要でないことの質だけが過剰に高いということにも繋がりかねません。

すべてに対して万全であろうとすることが、全体のクオリティを下げてしまうという現実を受け入れて、はじめから「選択と集中」を行うべきです。労働生産性の観点からも、あるいは「2割の仕事が売上の8割を決める」というパレートの法則からも、仕事全体における、「集中するべきところ」と「合格点ぎりぎりですませる」ところの配分が必要です。

今回はそれらの見極め方をご紹介します。生産性の高い「結果の出る仕事」をめざしましょう。

 

「全てに一生懸命」はただの精神論

仕事はすべて一生懸命やらなければいけない……、と思われがちですが、実際にはそうではありません。

大切なのは、集中力を最大限に保ち続けようとすることではなく、集中力のメリハリをつけることです。つまり仕事には、「ハードな集中力」と「ソフトな集中力」の両方が必要なのです。ハードに集中するということはクオリティを高くし、100%以上を目指すことだとすると。ソフトに集中するということは、軽く確認して流すかたちでも大丈夫な箇所を、60%程度の力で取り組むことです。

「すべてのことに対して全力で真面目に取り組む」のが、とても良いことだと言う人もいます。しかし、そもそも集中力には限界があるものです。力を入れるところと抜くところをあらかじめ決め、戦略的に集中力のリソースは使うべきです。

極端な例ですが、オバマ前大統領やFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は「その日の服装を決める」ということに力をつかうことはリソースの無駄だと考え、毎日の服を同じにしたり、法則を決めて自動化したりしているそう。彼らのように多くの集中を要する職にある人にとっては、ぬけるところがあれば少しでもぬきたいというということなのでしょう。

集中するところ・ぬくところの見極め方

ではどのように「ハードな集中力」を使うところと、「ソフトな集中力」ですませるところを見分ければよいのでしょう。

そのために重要な観点が、有名なパレートの法則です。80%の結果は20%の原因からもたらされるというものですね。知っている人は多くても、実際にそれを個人レベルで実践できる人は意外とすくないのではないでしょうか。パレートの法則は、「マーケティング施策全体」のような大きなものだけでなく、「個人の仕事の時間配分」のような小さな単位でも使えるものです。

この法則に則って上手に力をぬく営業マンは、80%の利益をもたらしてくれる20%の顧客に徹底したアプローチをします。一方で力をぬくことが苦手な営業マンは、すべての人に同じ労力で営業活動をしてしまいます。

この場合「ハードな集中力」で臨むべきなのは80%の利益をもたらしてくれる20%の顧客、「ソフトな集中力」で対応すべきなのはそれ以外の80%の顧客ですね。それ以外の80%の顧客をぞんざいに扱っていいという訳ではありませんが、最善を目指すには80%の利益をもたらしてくれる20%の顧客を重視すべきであることは明らかです。しかし、すべての人に同じ労力で営業活動を行っていたら、重視すべき80%の利益をもたらしてくれる20%の顧客に対して使えたはずの労力が分散されてしまいます。それだけではなく、タイムアップで肝心な顧客に手がまわらなくなってしまうなんて事態も起きかねません。仕事の時間は常に限られているのです。

つまり、自分の仕事における20%の原因を見つけることで、「ハードな集中力」と「ソフトな集中力」を使い分けた効率の良い仕事ができるということです。

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実際に力を使い分けていく方法

集中するところ・ぬくところの見極め方がわかったところで、実際に「ハードな集中力」と「ソフトな集中力」を使い分けていく方法をご紹介しましょう。

・スピードを上げる 仕事が丁寧すぎるために時間をかけて取り組んでしまいがちな人は、余裕のない締め切りを設けてタイムプレッシャーの効果を利用しましょう。集中力が高まるだけでなく、時間管理が上手くなります。締め切りまでが遠すぎると、まだまだ時間があると余裕を感じ、だらだら仕事を進めてしまいがちです。しかし、あまり余裕のない締め切りを設けると、時間内にやりくりするために力をぬくべきところを見極め、その部分に関してはサラリと流す必要が出てきます。何度かやってみることでどの程度力をぬいていいのか加減もわかってくるでしょう。そうすれば、自然と「ハードな集中力」が必要なところに力がまわっていくはずです。

・妥協する、手放す 重要度の低い仕事は妥協したり手放したりしてしまう覚悟をもちましょう。仕事にいつも完璧を求めてしまう人は、つい必要のない努力をしてしまいがちです。自分だけが見るノートを丁寧な文字で書く必要はありません。頭の中を整理するためにノートを取っているのなら、頭の中が整理できたらそれで充分なのです。何のためにやっているのかを念頭に置いて、その目的に適した最善の方法が取れているか確認しましょう。簡略化できたり、やる必要のない仕事が見えてきたりしたら時間も労力もできるだけ減らして、そのぶんつめるべきところでハードに集中してください。

・他人の力を借りる 完璧に仕事をこなそうとしている人は自分一人で仕事を抱え込んでしまいがちです。しかし、もしもそれが自分で行う必要のない仕事であれば、とても非効率な状況を生んでいます。その仕事は自分にしかできないことか、協力すればもっと早く終わらせることができるか、時間や完成度はどうなるかなど総合的に判断して、他の人に頼んだ方がいい場合は積極的に頼むようにしましょう。例えば、コピーを取るという誰でもできる仕事を忙しい人がやる必要は全くありません。自分一人ではなく全体を見渡して効率化していけば、会社全体の効率化が図れるはずです。

*** 仕事において集中力にメリハリをつけることの重要性や、実践方法をご紹介しました。そのようなかたちで仕事のスケジュール管理をすることで、効率よく成果を上げることができるようになります。頑張りすぎていたかも……、と思った人はぜひ実践してみてください。

(参考) PRESIDENT Online|なぜ、「ツメどころ」と「ヌキどころ」が必要なのか? PHP Online 衆知|「力の抜きどころ」が分からない人へ 古川武士著(2014), 『力の抜きどころ 劇的に成果が上がる、2割に集中する習慣』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.

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