スピーチの魅力度をワンランク上げる3つのテクニック。落語や芝居にヒントあり!?

スピーチに関して、次のようなお悩みをお持ちではありませんか?

「仕事でよくスピーチを行うが、いつもあまり手ごたえが感じられない。聴衆の反応が得られるようなひと工夫の仕方を知りたい」 「今度のイベントでスピーチをしなければならなくなったが、スピーチなどほとんどやったことがない。うまくいくか不安だ……」

よく、スピーチは回数をこなすほど上達すると言われます。しかし、仕事でよくスピーチをするからといって、何の対策も行わずにただ回数をこなすだけでは、効果が出るとは限りませんよね。また、スピーチをする機会がそう多くない人は、実践回数が少ないからこそ、なんとかコツを見つけることで、効率よくスピーチ対策をしたいと思っておられるはず。

そこで今回は、「人を惹きつける・引き込む」ということに焦点を絞って、スピーチのテクニックを3つご紹介したいと思います。話術で人を引き込むスピーチにはどのようなテクニックが隠されているのか、見ていきましょう。

マクラを用意する

「マクラ」とは、落語で用いられるテクニックのひとつです。落語では普通、いきなり本題に入らずに、世間話や本題に関連した小話(マクラ)をすることで、最初に会場の雰囲気を温めます。この技術が、スピーチでも活用できるのです。まずは、落語におけるマクラの例を見てみましょう。

「お暑い中、いっぱいのお運びでありがたく御礼を申し上げます。毎度ばかばかしいお笑いを一席申し上げます。さて、昨日行われましたサッカーのワールドカップでは見事な連携で日本がゴールを奪いましたが、サッカーではアイコンタクトで意思の疎通を図るそうです。……」

このマクラを分解してみると、最初の一文は挨拶となっていますね。スピーチでも講演でも、第一声はとても重要です。そしてもちろん落語でも第一声というのは重要で、落語家の第一声にはある程度の型があるようです。それがこちら。

1. 時候・天候の挨拶→「お暑い中」 2. 客席の様子→「いっぱいのお運びで」 3. 御礼→「ありがたく御礼申し上げます」 4. これから話すことの概要→「毎度ばかばかしいお笑いを一席申し上げます」

これは、スピーチでも応用できます。もし第一声を発するのが苦手な人は、この型を使ってみると良いでしょう。そして、これら1~4について話したあとは、スピーチの本題・内容へと移るためのつなぎを入れます。上のマクラの例では、ワールドカップの話題を持ち出し、話を展開しようとしていますね。このようにして、話のテーマと関連のある世間の話題を出し、聴衆に一度寄り添ってから自分の話につなげていくことで、スムーズに内容に入っていけるのです。

もしあなたが、コミュニケーションをテーマにしたイベントを主催する立場としてスピーチをすることになった場合、その日が雨だったら以下のようにマクラを構成してみましょう。

「お足元の悪い中(時候・天候の挨拶)、このようにお集まりいただきまして(会場の様子)、ありがとうございます(御礼)。本日は○○というイベントを開催させていただきます(これから話すことの概要)。「さて、最近行われましたサッカーのワールドカップでは見事な連携で日本がゴールを奪いましたが、サッカーではアイコンタクトで意思の疎通を図るそうです。……」

「間」で聴衆を惹きつける

スピーチが苦手だという人の中には、「間」が生まれることが怖いという方がいるかもしれません。確かに会話などで沈黙が生まれてしまうと、なにか次の言葉を発しなければいけないという不安が募るものですよね。しかしスピーチにおいては、この「間」をうまく使うことで、聴衆を引き込むことができます。

人をののしる言葉に「間抜け」という表現がありますよね。この言葉の本来の意味は、芝居や音楽などで音と音、動作と動作、台詞と台詞の「間」が抜けてしまい、「拍子抜けする」「調子が崩れる」こと。つまり、昔から間というのはとても重要な、なくてはならないものだと捉えられていたのです。そして、スピーチにおいても間というのは大いに重要な役割を果たします。

スピーチにおいて、間を使うと、以下の2つの効果を狙うことができます。

・聴衆の理解を促す効果 ・聴衆の注意をこちらに向けさせる効果

1つ目の「聴衆の理解を促す」とは、相手に理解する時間を与えて、話を飲み込んでもらうよう意図するということ。どれだけ素晴らしい内容のスピーチを行ったとしても、聴衆がその内容を理解していなければ意味はありませんよね。矢継ぎ早に話してしまえば聴衆は話についていくことができなくなり、しまいには話を聞くのをやめてしまいます。このような事態を防ぐため、ひとつの文や論点の終わりには、必ずひと呼吸の間を入れましょう。基本的な言葉の句切れでは1秒、内容の句切れなどでは3秒ほどの間を置くと、効果的です。

2つ目の「聴衆の注意をこちらに向けさせる」とは、間の前後の言葉を強く印象づけ、スピーチをドラマティックなものにしようとすること。政治家などによく見られる、スピーチ・演説がうまいなと思える人の多くは、この手法を取り入れています。その方法は意外にもシンプルで、自分が強く主張したい言葉の前、または後に間を置くだけです。

例1 「今回覚えてもらいたいプレゼンの極意、それは……(間)、間の重要性です。」 例2 「今回覚えてもらいたいプレゼンの極意、それは、間の重要性です。……(間)」

聴衆はスピーチを聞いている間、説明用のスライドを見たり、他の聴衆が気になったりするときがあります。他にも自分の記憶へ考えを巡らせ、話者の言葉から注意がそれることもあるでしょう。しかしスピーチに沈黙を挟み込むことで、散漫とした考えをしていた聴衆はハッと我に返り、そして話者の言葉に再び意識を傾けるのです。この狙いで挟み込む間の長さは、5秒くらいが良いでしょう。5秒というと意外と長く感じられるもので、最初は間の生み出す緊張感に耐えられないと感じるかもしれません。しかし、その緊張感こそがあなたのスピーチを素晴らしいものにしてくれるのです。

キーワードを繰り返す

最後にご紹介するのは言わずと知れたスピーチのテクニック。自分の主張の確たるキーワードをスピーチ内で繰り返し使うというものです。

同じ言葉を繰り返し使えば、嫌でも聴衆の耳にはそのキーワードが残ります。力技ではありますが、主張を強調するテクニックの中でこれがもっともシンプルかつ効果的な方法なのではないでしょうか。

ちなみにキーワードは少なくとも3回繰り返すと良いでしょう。1回目に認知してもらい、2回目に印象づけ、3回目で刷り込んでいく。キーワードを発する口調も、少し強めに、あるいはゆっくりと、重要であることが分かるようにしましょう。

また、次の例のように、重要な言葉の前後で、同じ言葉で始まる短いセンテンスを何回も繰り返すことも効果的なテクニックです。

例「忘れないでください、○○○なことを。忘れないでください、△△△なことを。忘れないでください、×××なことを。」

アナフォラと呼ばれるこのテクニックは、聴衆の注意を惹きつけ、主張したいことをより強調させることができます。特にスピーチの最後などで、まとめや論考を伝える際に用いるとより効果的でしょう。

*** 今回はより聴衆を引き込むためのスピーチテクニックをご紹介しました。今回取り上げあげたテクニックを参考に、皆さんがよりよいスピーチづくりに取り組んでくだされば幸いです。また、今回の内容を踏まえたうえで、うまいスピーチを聞いてみて、実践の参考にするのもよいでしょう。

(参考) NIKKEI STYLE|無言の「間」こそが雄弁にメッセージを伝える 石田章洋著,横山信治著(2015),『ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?』,日本能率協会マネジメントセンター. 美女読書|元NHKアナが教える!スピーチの上手・下手を決める「間」の取り方とは? 語源由来辞典|まぬけ 話し方の学校|【 伝わる話し方365のコツ 】 キーワードの出番はどれくらい? サイモン・マイヤー著,ジェレミー・コウルディ著,池村千秋訳(2010),『スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方』,CCCメディアハウス.

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