真剣な気持ちで仕事や勉強に取り組んでいるにもかかわらず、プッツリ切れてしまうのが「集中力」。おまけに、いったん途切れてしまった集中力は、なかなか元に戻ってくれません。だからといって「集中力が途切れたので、お先に失礼します」というわけにもいきませんよね。
ならば、集中力を持続させ、最後までやり切れるよう工夫してみましょう。実は、意外に簡単な方法もあるのです。さっそくご紹介します。
人間の集中力は続かないもの
東京大学薬学部教授で薬学博士の池谷裕二氏は、「集中力が高い状態は、人間の動物的本能としてはむしろ不自然」だと伝えています。なぜならば、そもそも動物は天敵から身を守るため、意識を周囲に広げておく必要があったからです。もちろん、ジャングルで生活する人は少なくなりましたが、車や鉄道がある現代においても周囲に注意を払わなければならないのは同じ。つまり、人間を含む動物が目の前のものだけに集中するのは、危険を高めているということなのです。
そういった意味では、「なぜ自分は集中力が続かないんだ……」と悩む必要はありませんね。
また、パソコンでの仕事は余計に集中力が続かないのではありませんか? 東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏によると、その理由は、活性酸素の発生で脳が酸化ストレスにさらされているから。特にパソコン作業は脳の一部を酷使してしまうので、脳が作業を止めるよう信号を送り「疲れた」「飽きた」と感じてしまうのです。
でも、じゃあ仕方がないと諦める必要はありませんよ。工夫次第で集中力を保つことは可能なのです。
集中力を途切れさせないために
研究結果や科学的な根拠をもとに、集中力を途切れさせない方法をご紹介しましょう。
1.500mlの水を飲んでおく
イースト・ロンドン大学とウェストミンスター大学の研究者たちが行った実験で、知的作業に集中する前に約500mlの水を飲んでおくと、飲まない場合に比べて脳が活性化するとわかりました。脳の80%は水でできているため、水分不足はホルモンバランスを崩します。しかし、水を飲んでおけばそれを制御できるのです。
ちなみに、有酸素運動で脳が活性化すると、集中力や記憶力が高まるといわれています。もちろん運動するに越したことはありませんが、その時間が無い場合でも「500mlの水」で脳の活性化を促し、集中力も高められるというわけです。ただし、水を一気飲みすると体に悪い影響を与える可能性があるので、500mlであれば2回~3回に分けて飲みましょう。(※1回に飲む水分の適量は100~200ml)
2.立ったり座ったり
労働科学研究所と、家具・産業用機器等の製造を行う岡村製作所が行った実験によると、座ったまま、もしくは立ったままの姿勢で仕事をするよりも、時々立って仕事をするほうが、眠気や疲労、むくみを抑制することがわかりました。それにより集中力が持続し、パフォーマンスも向上します。
生活用品大手のアイリスオーヤマ株式会社も、2017年6月中旬から「スタンディングテーブル」を導入し、パソコン仕事はこのテーブルで行うという決まりを設けたとのこと。
しかし、スタンディングテーブルがない学校や仕事場では、なかなか簡単に立ったり座ったりはできませんよね。そんな時は、可能な範囲で「うーん」と伸びをする、体勢を変える、などをしてみましょう。座ったまま・立ったままの仕事が良くない理由は、同じ姿勢が血流を悪くするから。少し体を動かすだけでも、だいぶ変わりますよ。
3.1時間に1つのこと
ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員で、東アジア共同体研究所理事の茂木健一郎氏は、脳のワーキングメモリーを活用し、タイムプレッシャーをかけて「1時間に1つのことに集中する」仕事方法をすすめています。タイムプレッシャーとは、行動に制限時間を設けると、集中しやすくなるというもの。
ワーキングメモリーは、脳の前頭葉を中心とした神経ネットワークの一部が関与し、目的に必要な情報を一時的に集め、保つことです。つまり、一時的に多大な情報のなかで処理能力を高められるということ。ただし、このワーキングメモリーが保たれるのは1~2時間ほど。したがって、タイムプレッシャーを活用しつつ、1時間に1つの勉強・仕事を行うサイクルにしておけば、集中力を途切れさせません。また、可能ならば、1時間ごとに短い休憩を入れてあげると脳のリフレッシュにもなります。
集中力が切れてしまった時にすべきこと
もしも、集中力が途切れてしまった場合には、以下のような工夫で集中力を呼び戻せます。
1.ガムを噛む
自然科学研究機構・生理学研究所の柿木隆介教授らが、ガムを噛むグループと噛まないグループなどに分けて脳の活動を調べたところ、「よく噛む」ことが脳を活性化させることがわかりました。もしも、その場でガムを噛むことができるならば、ぜひお試しください。
2.1分間だけ目を閉じる
睡眠専門医の坪田聡氏は、自身の著書『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』のなかで、目から入ってくる視覚情報は脳にとって大きな負担であると述べています。したがって、例えば仕事中に机の前で1分だけでも目を閉じて、外の世界からの情報をシャットアウトするだけでも、大脳皮質を休める「1分仮眠」になるのです。それにより、仮眠する前より集中力が高まり、仕事の効率も高まりますよ。
仮にデスクで目を閉じるのが憚られるようでしたら、トイレに行った際にすかさず1分間だけ目を閉じて、誰にも見られず短い仮眠をとってしまいましょう。
3.頭を動かす
ガムも噛めない、目も閉じられない、トイレにも立てない、でも途切れた集中力をなんとかしたい! という時は、頭を左右に5秒ずつ、上下に5秒ずつ、斜め左右上下に5秒ずつ、動かしてみましょう。この動作は、単純に脳への血流を良くして、脳を活性化させるためのものです。合計でも40秒間ですが、続けてできない場合は、左右、上下、斜めの動作をそれぞれ切り離して行ってみましょう。そうすれば目立たないはずですよ。
*** 集中力を途切れさせないための方法と、途切れた時の対処法をお伝えしました。自分が取り入れやすい方法を選んでお試しくださいね。
(参考) Study Hacker|夕方に集中力が途切れがちなあなたへ。ラストスパートをかけるための3つの脳科学的方法 WISDOM|「仕事ができる」を脳科学から考察──池谷 裕二氏に聞く 朝日新聞デジタル|座ったままのPC禁止で集中力を 慣れないヒール女性も 株式会社 岡村製作所|ソリューション・事例|上下昇降 +Standing 茂木健一郎著(2008),『脳を活かす仕事術』,PHP研究所. 坪田聡著(2012),『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』,すばる舎. WIRED.jp|水を飲むと脳が活性化する:研究結果 【スポーツクラブNAS】スポーツジム・フィットネスクラブなら|仕事・勉強時の集中力をつけたい ウォーターサーバーのアルピナウォーター|お水は一気飲みしても大丈夫なの?