「良い習慣」を長く続けられない人が知らない大切なこと。

人生が変わる「習慣化」』でこれまで連載してきた10回の記事でも、いろいろな習慣化の技術や思考法をお伝えしてきました。わたしはそれらのことを本やWEBなどのメディアでアウトプットし、カウンセリングやセミナーなどを実施しています。

あるとき、「古川さん、これらの技術を使って3カ月続けることはできても、さすがに3年は無理ですよね?」と言われたことがあります。たしかに、技術を頼りに良い習慣化のレベルを引き上げられるのは最初の3カ月くらいかもしれません。その後、1年、2年、3年……と続く人とそうでない人はなにがちがうのでしょうか? そこでポイントになるのは、「感情の力」を使った習慣化術です。

構成/岩川悟(slipstream) 写真/玉井美世子

良い習慣、悪い習慣は感情から生まれる

習慣は感情から生まれる――

これは、わたしが習慣化のコンサルティングを行なってきてたどり着いた、実にシンプルな真理です。そして、その「感情」をうまくつくり出せる人こそ、長きに渡って良い習慣を続けることができると見ています。

ゲームやネットサーフィンでの夜更かし、お酒の飲み過ぎといった悪い習慣は、「意思や根性」とは無縁に続けてしまうものです。理由は単純で、「行動から得られる快感」が大きいからです。お酒を飲むとストレス解消になったり、ネットサーフィンやゲームをすると脳に新鮮な刺激が与えられたりします。また、夜更かしはある種の自由を感じるのでやめられないのでしょう。人それぞれ理由は様々かもしれませんが、往々にして「快感の感情」がそれらを続けさせていくのです。

一方で、運動、早起き、日記、片づけなど「良いと思う習慣」が続かない理由は、スタート当初の苦痛が大きいからです。しかし、一定以上続けると感情の苦痛が軽減し、続けることでの快感が増してきます。そうなってしまえば、こっちのもの。快感を得る方法をそのつど考えて行なっていけば、良い習慣を続けることは可能なのです。

たとえば、ジョギングや早起きは、スタート当初こそ「筋肉痛が出る」「しんどい」「眠い」という苦痛があり挫折しそうになります。しかし、1カ月も続ければ、「運動するとよく眠れて次の日が爽快だ」「早く起きると1日に余裕が生まれる」「時間を有効に使って好きなことができる」「ライフスタイルの主導権を握れる」といった感情が生まれてくる。それはつまり、ひとつの快感です。その快感が増えるごとに、良い習慣が継続できるようになります

こうして見ていくと、人はいかに感情に突き動かされている生き物かがわかります。わたしたちは心にプラスの感情を増やしてくれる行動を続けることができ、マイナスの感情になるものをやめようとします。だからこそ、続けたいときには「感情にフォーカス」することが重要なのです

「早起き」「運動」「英語学習」にあてはめたケーススタディ

それでは、「早起き」「運動」「英語学習」を例にして、良い習慣を続ける方法を具体的に見ていきます。

▼早起き

早起きをしようとしたときに、直面するいちばんの苦痛は「眠気」です。眠気というのは、「体がもっと寝よう!」と発するメッセージ。もちろん、わたしたちが生きていくうえで一定の睡眠時間は必須のものです。三大欲求のひとつに数えられるくらいですから、眠気はまさに強烈なる感情です。

早起きのコツは、眠気そのものを減らすことに尽きます。早起きの習慣をつくるためには、早寝とセットで行わなければ起きる時間だけ早めてもその分睡眠不足になるだけです。そこで、1週間ごとに30分ずつ起床時間を早めるくらいの気持ちでスタートしていけば苦痛もかなり減少するでしょう

快感を増やすためには、朝30分でも余裕があることで心にどんな変化が生まれるのかを実感することが重要です。これが、1時間、2時間早いと生活はどのように変わるのか? 満員電車を避けることができ、座って本が読めて、1時間早く会社について始業時間までにひと仕事終えることができます。そういった快感を味わうと、「こんな生活のほうがいいに決まっている」と実感できます。

ここで大切なことは、頭でわかることではなく、身体と心で実感することです。

▼運動

運動をイメージするとなにを思い浮かべますか? けっして、「運動=ジョギング、ウォーキング」ではないので、自分の感情がプラスになるワクワクするような運動を選ぶことをおすすめします。

わたしは空手をやっていますが、野球、サッカー、テニス、水泳、ゴルフ、ヨガ、ボルダリングなど、なんでもいいので「楽しい!」と思える運動をすることです。その「楽しい!」という快感は、続けるための大きな原動力になります

運動で起こる苦痛は、筋肉痛や疲れなどでしょう。そこで最初は無理せずスタートし、徐々に負荷を高めていくこと。そしてなにより、コンスタントにやることが重要です。期間が空き過ぎると、再び初動にエネルギーがかかるからです。

▼英語学習

忙しい毎日のなかで、英語学習の時間をつくるのは本当に大変なことです。英語を学習する習慣をスタートさせた最初こそ、「毎日1時間勉強するぞ!」という目標を立てたりするものですが、これがどんどん苦痛となっていきます。

スタート当初はやる気に満ち溢れていますが、1週間もしないうちにやる気はトーンダウン……。たった1時間の勉強時間捻出が苦しくなってやめてしまうのがよくあるパターンではないでしょうか。

そこで、スタート当初はあえて新しく時間をつくろうとせず、「ながら勉強」で苦痛を乗り越えてみてください。それこそ、移動時間中に30分だけでもいいので勉強すると決めてスタートすれば続けやすくなるはずです

ここでの快感もまた、「楽しむ」ことです。いきなりTOEIC対策本からはじめるのではなく、最初は英語になんとなく慣れることでもいいではありませんか。自分の好きなハリウッド映画を教材にする、洋楽を教材にするなど、楽しく勉強する方法を考えてみる。真面目な人ほど、「勉強=苦しい」という構図になりがちなものです。あえて楽しむ工夫をしてみると、圧倒的に続けやすくなるとわたしの経験上からも断言できます

そして、テストなどの目標を立てたり、友人に「TOEICの点数を1年後に〇〇点にする!」などと宣言したりするのも効果的です。もちろん、人それぞれの性格によっても変わってくるので、なにが英語学習において総合感情をプラスにさせるのかを見つけ出してください。

ぜひ、自分のなかにある「感情」を生かして、良い習慣を長く続けてください。

【今回の習慣化ルール】 ・習慣は「感情」から生まれる ・快感を増やし、不快感を減らす工夫をする ・良い習慣を長く続けるためには、「感情にフォーカス!」する

連載『人生が変わる「習慣化」』記事一覧はこちら↓

『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』

古川武士

日本実業出版社

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