「行動すれば人生は変わる」 「継続は力なり」
このような言葉には、誰も異論がないと思います。問題は、行動することや継続することを、根性論で考えている限り打開策がないことにあります。
わたしは、「行動できない、続かない」というテーマを深く考え、コーチング、コンサルティングを行っていますが、つねに深い洞察力を持って「科学」することが重要だと思っています。科学的に考えメソッド的にアプローチすることで、行動できて継続しやすくなるからです。
行動できない原因は、目に見えない領域にあり
まずみなさんにイメージしてもらいたいのは、こんな氷山です。行動できない深層構造を、5つの段階に分けています。上から順に説明していきましょう。
【1】行動レベル
「行動できない」「続かない」という問題は、氷山でいうと表面的なテーマとなります。たとえば、「失敗が怖くて動けない」「考えすぎてしまい行動できない」「やろうと思っても先延ばししてしまう」「英語が続かない」「片づけができない」「早起きができない」「お酒がやめられない」といった行動のレベルの悩みは、氷山の目に見えている部分です。
行動の修正だけならば、行動科学のアプローチでうまくいきます。ご褒美を用意するとか、行動を小さくしてベビーステップにしようなどがそれに該当するでしょう。「行動を起こす」「継続する」ための行動技術的なアプローチは、このレベルで解決できるならばそれでいいのです。
しかし、「行動・継続できない」という悩みは、それだけでは解決しないことが多々あります。行動レベルの修正がうまくいかない場合は、その下に眠る思考レベルの修正が必要です。
【2】思考レベル
ものの考え方・捉え方は無自覚の習慣です。たとえば、極端な完璧主義思考(0点か100点か、白か黒か)で考える思考習慣がある人は、行動するときに強烈なプレッシャーを感じています。そういった思考習慣レベルの修正は、氷山のモデルで言えば、行動の下に眠る無自覚な領域になります。
本人は意識していないので、変えようがないのです。上記の例で言えば、完璧主義者であることをまずは自覚し、行動する際にそれを意識することが重要になります。
【3】感情レベル
思考習慣よりも、さらにわたしたちの行動・継続を左右するものはなにか? それは、感情です。わたしたち人間は、感情の生きものです。「苦痛を避け、快楽を求める」というのは、これはもう心の原則なのです。悪い習慣がなぜ続くのかを考えれば明白で、快感があれば行動し、継続してしまうのです。
良い習慣も、最初は行動習慣の技術でスタートして三日坊主の罠を乗り越えたとしても、結局、プラスの感情が増幅するパターンに入れるかどうかで、長期間継続できるどうかが決まってきます。 行動・継続できない理由には、猛烈な恐怖や見えない不安があるからなどがあります。そういうとき、わたしたちの脳はブレーキをかけます。思考よりも深層にあるのはこの感情であり、感情は習慣なのです。
わたしたちは心でつねになにかを感じ生きています。もちろん、それにフォーカスしなければ心が悲鳴をあげていることさえ気づきません。そして最終的には、メンタルダウンになっていきます。
あなたの心はどちらを感じていることが多いでしょうか? まずはそれを自覚することが大切になります。
「不安・焦り・自己嫌悪・落ち込み・後悔・恐怖・イライラ・未完了感」 「安心・リラックス・自己肯定感・達成感・意味・感謝・完了感」
行動や継続は感情が動力にもなり、ブレーキにもなります。だから、感情にフォーカスして自分を扱うことが大切です。
【4】ビリーフレベル
では、その感情を生み出すものはなんでしょうか? さらに氷山の下に眠るのは、ビリーフ(あなたが持っている思い込みや、正しいと信じている考え方のこと)です。
「わたしは、なにをやってもダメだ」「わたしは、人よりも劣っている」「わたしは、愛されていない」「人は、信用してはいけない」「世の中は、リスクばかりだ」
このような思い込みは、ごく幼少期に脳にプログラムされ、わたしたちの感情に影響を与続けます。無力感、自己嫌悪感が心を占有するとき、わたしたちはビリーフのレベルを扱う必要があります。
「わたしは頑張ればできる!」とか、「金は天下のまわりもの」と思っている人にはネガティブな現実がやってきます。一方、「できると思ったらできる! できないと思ったらできない!」というマインドは正しく、ビリーフどおりに現実がかたちづくられていきます。行動というものが、ビリーフに影響されていることが実感できるはずです。
【5】本質レベル
氷山の一番根っこの部分は、本質です。つまり、産まれながらの性格や自我のパターンです。ビリーフの一部は本質から自然と生まれるものがあります。たとえば、 人から嫌われてはいけない、人から必要とされなければならないというビリーフは、ある特定の性格パターンの人が持つビリーフと考えていいでしょう。
代表的な、根源的欲求9つは次のとおりです。
1. 完璧を追求したい 2. 人とつながりを感じたい 3. 目標を達成したい 4. オリジナリティを発揮したい 5. 深く納得いくまで考えたい 6. 安全・安心を感じていたい 7. つねにいまを楽しくありたい 8. 力を感じたい 9. マイペースでいたい
これらは、持って生まれた欲求のパターンであり、年齢を経ても変化しにくいものです。この欲求パターンがビリーフをつくり、感情をつくり、思考をつくり、行動をつくります。本質というレベルは変えるというより、根ざす、生かすという表現が合うでしょう。ですから、自分という本質は変えられませんし、変える必要もありません。
多くの「行動できない人」の問題は、自分の本質パターンを理解しておらず、根源的な恐れにより行動にブレーキがかかり、欲求が発動できず行動できなくなることです。だからこそ自分の本質を理解することが大切なのです。人それぞれ人生の勝ちパターン、幸せパターンはちがいます。そして、本質を理解することで自分らしい生き方や働き方がわかります。それに従うだけで、生きやすくなっていくのです。
整理すると、行動レベル、思考レベル、感情レベル、ビリーフレベル、本質レベルとだんだん深層にいくに従って、わたしたちを動かしている動力の強さが実感できるのではないでしょうか。
問題は、「わかる」と「できる」はまったくちがうということ。ただ、無自覚なことは変えられません。まずは自分の日常の行動でネックとなるもの、行動できるときに突き動かすものがなにかを自己観察してみてください。
【今回の習慣化ルール】 ・行動できない原因は、深層を探ると見えてくる ・原因は、行動レベル、思考レベル、感情レベル、ビリーフレベル、本質レベルで洞察する ・無自覚なことは変えられない。自覚することで自己観察ができる