気合を入れすぎて失敗してしまう、完璧な準備をしようとして行動に移すまでに時間がかかったり、完全な装備に慢心してこれまた失敗してしまったり……。気合いややる気が満ち満ちているという意味では一見良いイメージのある「やりすぎ」は、何かと失敗につながってしまいがち。
実は、「ちょっと足りないくらい」がちょうど良い、ということを、かの有名な歴史上の人物に始まり、多くの成功者が語っているのです。
家康の遺訓
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。 不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。 堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。 勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。 おのれを責めて人をせむるな。 及ばざるは過ぎたるよりまされり。 この意味は、おおよそ次のようなものです。 人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。 不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない。 心に欲が起きたときには、苦しかった時を思い出すことだ。 がまんすることが無事に長く安らかでいられる基礎で、「怒り」は敵と思いなさい。 勝つことばかり知って、負けを知らないことは危険である。 自分の行動について反省し、人の責任を攻めてはいけない。 足りないほうが、やり過ぎてしまっているよりは優れている。
[徳川家康の遺訓]
『及ばざるは過ぎたるよりまされり』
つさすがは家康、と思わせる遺訓。中でも、今回注目したいのは、最後の一行、『及ばざるは過ぎたるよりまされり』です。 上の現代語訳にもある通り、「物事は不足しているくらいの方が過ぎるより良い」という意味の言葉で、やりすぎてしまったものをもとに戻して修復するのは難しいけれど、不十分であれば手の施しようがあるから始末が良いということからきています。
卑近な例で恐縮ですが、私自身、麻婆豆腐を作ろうとした時に、豆板醤を入れすぎてしまい、水やお豆腐を足したりしましたが、香辛料の辛味は決して消えてれずに結局食べることができなかったという経験があります。味付けの際に元から少ない量を入れれば後からいくらでも調整可能ですが、多すぎた時には、このように取り返しのつかないことになってしまいます。 そしてそれは料理に限らず、日常生活の様々な場面で同じことが言えます。
完璧主義を捨てて、不足している位で挑む
主にIT分野のコンファレンスやプライベートショーの事務局管理やイベント運営を担う会社「ウィズグループ」の代表者である奥田浩美さんが、著書『人生は見切り発車でうまくいく』の中で語るのは、準備を完璧にするのはやめて、とにかく行動に移すことに、成功のカギがあるということ。 行き当たりばったりで進むことを推奨しようとするのではなく、完璧主義で地が固まるまで待つ時間、つまりは動かない時間を長引かせるよりも、準備が不足している位で行動に移した方が周囲にも何をしているか伝わり、協力も得やすくなって、結果的に成功に近づけるということなのです。
あなたに「知恵」が不足しているということは、他の知恵を受け入れる余地がある。 あなたに「能力」が不足しているということは、他の能力を受け入れる余地があるということです。
[引用元:『人生は見切り発車でうまくいく』奥田浩美]
いろいろ足りないからこそ、他の人が持っているものと組み合わせることで化学反応が起きます。結果、自分が想像していた以上のものがつくれる可能性が広がるのです。
[引用元:同上]
また、不足した状態でも行動することによって、そもそも自分が何をしたかったかわからない人でも方向性が見えてくると言います。
選択に悩む前に行動して検証したほうが、驚くくらいあっという間に答えが見つかることが多々あります。一歩前に進めば、見え方も変わり、悩んでいたときに見えていたものとは違う世界が見えてきます。 自分が進むべき世界は、自分が見えている範囲にしか存在しないわけではないのです。
[引用元:同上]
「不足」には、やりすぎるより良いというだけでなく、こんな積極的な意味も含まれているんです。
*** いかがでしたか。 所ジョージさんがこんなことを言っています。
準備万端だと全部それに頼っちゃうから、靴がずるってなるぐらいがちょうどいいの。自分の体が1番の頼りなんだから
[引用元:CuRAZY|【遊びの天才】所ジョージの人生が楽しくなる名言21選]
なんでもかんでも普段やりすぎてしまうような人たち(豆板醤を入れすぎる私のような)は、少し気を抜いて、足りないくらいで挑んでみると、案外ちょうどいいのかもしれません。
参考 徳川家康の遺訓http://www.edu-konan.jp/ishibe-jh/ikiruhint/tokugawa.html CuRAZY|【遊びの天才】所ジョージの人生が楽しくなる名言21選 奥田浩美|2014|総合法令出版|人生は見切り発車でうまくいく

