なんでも迷いたがる人は「ウィルパワー」を無駄に消費して脳を疲れさせている。

ウィルパワーを節約する方法01

集中力がないと悩んでいる方は、もしかして、「ウィルパワー」を浪費しているのかもしれません。ウィルパワーを節約すれば、グンと集中力がアップするはず。今回は、ウィルパワーが集中力に及ぼす影響と、ウィルパワーを節約する方法を紹介します。

集中力のカギは「ウィルパワー」にあり

ウィルパワー」とは「意志力」のこと。注意や感情、意欲をコントロールする能力といわれています。

ウィルパワーの基盤は脳の前頭前野にあるそう。ウィルパワーは認知を制御する実行機能や、やる気を制御する報酬系などに関係しているとのことです。筑波大学教授の櫻井武氏は、ウィルパワーの重要性を以下のように述べています。

アクティブかつプロダクティブな生活を送るには、ポジティブな気持ちと高い意志力(=ウィルパワー)が必要です。

(引用元:文科省科研費 新学術領域研究 WILLDYNAMICS|領域概要

『自分を操る超集中力』の著者であるメンタリストのDaiGo氏は、どんなに疲れていても集中力を持続させるには、ウィルパワーを枯渇させないことがカギだと述べています。集中力を保つには、ウィルパワーを節約する必要があるのです。

ウィルパワーの浪費01

ウィルパワーを節約する方法とは?

DaiGo氏によれば、人間の脳は選択や判断をするときに集中力を使い、ウィルパワーを消耗してしまうのだとか。「工場を閉鎖するか、継続するか?」といったビジネス上の重大な判断から、「お昼に何を食べよう?」「メールにどう返事しよう、いつ返信しよう?」といった日常的な判断まで、あらゆる決定にウィルパワーを消費します。

だからこそ、元アップル社CEOのスティーブ・ジョブズ氏は、余計な意思決定をなくすため、いつも黒いタートルネックとジーンズにスニーカーという格好をしていました。「今日はどんな服を着よう」という判断が必要なくなるため、ウィルパワーを節約できていたのです。

つまり、ウィルパワーを節約するには、「無駄な選択」を減らせばよいのです。

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無駄な選択を減らす方法1:少量から選ぶルール

毎朝どんな服を着るか迷う人は少なくないでしょう。おしゃれという観点だけではなく、気温やTPOなど、服装選びに影響する要素が多すぎるからです。

もちろん、スティーブ・ジョブズ氏のように常に同じ服を着つづければウィルパワーを節約できるのですが、一般人が実行するにはかなりの勇気が必要ですよね。1週間分のコーディネートをあらかじめ決めておけばいい、と思うかもしれませんが、7日分のコーディネートを考えるのは大変。予定や天気予報が変わって、せっかく考えたコーディネートが適さなくなってしまうこともあるでしょう。

そこでおすすめなのは、大まかに選んだ1週間の「着回し服」を、ほかの服と分けておくこと。それが完璧である必要は全くありません

目の前に多種多様な食材を並べられ、「何か料理を作りなさい」と言われるのを想像してみてください。「いったいどうすればいいの?」と迷ってしまいそうですよね。しかし、提示されたのが野菜・調味料・油だけならどうでしょう。「サッと炒めようかな?」あるいは「お肉と麺があれば焼きそばができるのに」といった具合に、大きな負担なくアイディアが浮かびそうですね。

「着回し服」をより分けておくのも同じこと。目に入る選択肢を減らすという、とてもシンプルな方法なのです。

たとえば「着回し服」として、ブラウス2着、Tシャツ1着、ニット1着、スカート2着、ズボン1着を、クローゼットの手前にかけておくのはどうでしょう。上が4着、下が3着しかないなら、「昨日はブラウスだったし、Tシャツは洗濯中だから、今日はニットを着よう」というように、迷わず決められますよ。

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無駄な選択を減らす方法2:曜日ごとのルール

私たち人間は知能が発達しているので、何かを食べようとするとき、いろいろなことを考えてしまいます。いつもの大好物を食べたい、食べたことのないものを食べてみたい、せっかくだし旬の食材にしようか、期間限定のメニューを注文するべきか、いちばん安いメニューにするか、健康のために何を食べるべきか、いちばんカロリーが低いのは……といった具合です。食べ物の選択肢が無限にある状況では、1日3回もウィルパワーを大きく消費してしまいますね。

ウィルパワーを節約するため、曜日ごとのルールを決めてはどうでしょう? たとえば平日の昼休みならこんな具合です。

月曜日:食べたいものを食べる
火曜日:健康的なものを食べる
水曜日:食べたいものを食べる
木曜日:健康的なものを食べる
金曜日:食べたいものを食べる

月曜日は何も考えず食べたいものを選ぶかわり、火曜日は理性的に選ぶ……といった具合です。食べたいものを我慢するわけではないので、ストレスはたまりません。上の例では「食べたいもの」と「健康的なもの」の2パターンを交互に繰り返すだけなので、非常に単純です。ルールが単純であればあるほど、認知的な負荷が減ります。

これではつまらない……というのであれば、以下のようなルールはどうでしょう? 「選ぶ楽しみ」を感じつつも、ウィルパワーを節約できますよ。

月曜日:アッサリ「和食」
火曜日:こってり「洋食」
水曜日:がっつり「中華」
木曜日:お洒落な「アジアン系」
金曜日:とにかく「肉」

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無駄な選択を減らす方法3:期限と質ルール

仕事を効率的に片づけるコツのひとつとして「タスクに優先順位をつける」という方法があるのを知っている方は多いはずです。しかし、タスクに優先順位をつけているうち、「何を優先すべきなんだろう? どんな基準で判断すべきなんだろう?」と悩み、どんどんウィルパワーを消耗してしまった……という経験はありませんか? 仕事の効率を上げることが目的だったのに、ウィルパワーを消費して集中しづらくなってしまうなんて、本末転倒ですよね。

タスクの優先順位づけで悩んだときは、株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役である平野友朗氏のアドバイスを参考にしてみてください。つまり、

【第一段階】:いつまでに
【第二段階】:どのレベルで

という2つの視点だけで考えるのです。【第一段階】で期限が早い順番にタスクを並べ、【第二段階】で番号を振るだけ。第二段階で番号を振るときは以下のルールを採用します。

  • 高レベル(細やかで丁寧)――より多くの時間が必要――より早い番号
  • 中レベル(平均的)――平均的な時間が必要――中ほどの番号
  • 簡単なレベル(社内向け)――短い時間でOK――後ろのほうの番号

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無駄な選択を減らす方法4:読みと送りは別ルール

仕事におけるメールのやり取りは、ひとつひとつは小さなものですが、「読む」「判断する」「返信する」といった手順に必要な時間を全て合わせると結構なもの。やりとりが多ければ多いほど、思わぬ時間をとられてしまうでしょう。「どう返事をするか」「どう表現するか」「いつ送るか」と考えているうち、どんどんウィルパワーを消耗してしまいます。

メールの処理に悩んだときは、メールの「読み」と「送り」を別のタスクだと考え、「読み」と「送り」のあいだに少し時間を置いてみましょう。メールチェックをしたあと、いったんほかのタスクをこなしてから、あとで返信を書くだけ。さらに考えをまとめたければ、いったん返事を書いて、送信は後回しにしてみてください。

スマートフォンのアプリがバックグラウンドで働くように、いったん脳に情報を入れておけば、脳が勝手にその情報に対して働きかけを続けます。外山滋比古氏が著書『思考の整理学』のなかで述べているように、考えをまとめるには“寝かせる”ことが大切です。

「読む」時間と「送る」時間を分けることで選択の機会が分散し、いっぺんに悩まなくなります。そして時間を置くことで案件に対する理解が深まり、行動の選択肢が絞り込まれるでしょう。

***
集中力の源・ウィルパワーを節約するために、無駄な選択を減らす方法4つを紹介しました。

  1. 少量から選ぶルール
  2. 曜日ごとのルール
  3. 期限と質ルール
  4. 読みと送りは別ルール

シンプルなルールを自分に課すことで、無駄な選択を減らすことができ、ウィルパワーを節約できるはずです。こちらの記事『メンタリストDaiGoも実践。勉強も仕事も読書もサクサクこなせる「超集中力」の鍛え方』にも、集中力を高く保つ方法が紹介されているので、ぜひ参考にしてくださいね。

(参考)
征矢英昭,西島壮(2018),「意志力(ウイルパワー)の脳機構と身体運動」, 体力科学, シンポジウム12, 第67巻, 第1号, pp.57-61.
文科省科研費 新学術領域研究 WILLDYNAMICS|領域概要
ダイヤモンド・オンライン|注意力散漫な子だったメンタリストDaiGoの「集中力開発術」
リクナビNEXTジャーナル|私は仕事の「優先順位」はつけない。だってやるべきことは…アイ・コミュニケーション代表取締役 平野友朗氏の仕事論
外山滋比古(1986),『思考の整理学』, 筑摩書房.

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