どんなに学歴や経歴が素晴らしくても、難しい仕事を任せると精神的な脆さを見せ、苦難にぶつかると耐えられず、挫折してしまう人々がいます。そうした人々は、「立ち直る力=レジリエンス」が低いのだとか。

逆に、レジリエンスが高ければ、長いキャリアで成功を収めることが可能だといわれています。最新の研究では、レジリエンスが神経生物学的であることが明らかになりました。

そんな「レジリエンス」の鍛え方を探ります。

レジリエンスとは

同じような辛い経験をしたにもかかわらず、人によってその後の精神状況に差が出るのは、挫折や苦難を乗り越え立ち直るための、「力」に差があるからと考えられています。

その「力」が「レジリエンス(resilience)」です。

コロンビア大学・心理学教授のGeorge A. Bonanno氏は、レジリエンスを「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と定義しています。

物理学的には「外力による歪みを跳ね返す力」を意味しており、心理的には折れない心」「立ち直る力」「乗り越える力」「逆境力」「防衛力」「抵抗力」「耐久力などと表現します。

ポジティブサイコロジースクール代表の久世浩司氏は、レジリエンスを鍛える過程で重視する3つの姿勢を、次のとおり示しています。

◆現実を直視する
◆物事をしなやかに柔軟に捉える
◆合理的な思考を持つ

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レジリエンスで未来を変えた人物

“経営の神様”として知られる松下電器創業者の松下幸之助氏は、戦後すべてを失い、巨額の負債を抱えたそう。当時はひどく気を滅入らせ、眠れない夜を幾日も過ごしたといいます。

しかし、松下氏は、国民と自身に多大な「負」を与えた戦争に疑問を感じ、それをバネに、 PHP研究所を立ち上げたのだとか。後の成功は、みなさまがご存知のとおり。

つまり、松下氏は現実を直視し、それをしなやかに捉え、合理的な思考で「どうしよう……」から「さて、どうするか?」に気持ちを変えたわけです。レジリエンスが身についていれば、未来は明るく変えられるということなのです。

アメリカの Civitan International Research Centerで研究を行っている Edith Henderson Grotberg 氏によれば、レジリエンスは皆が持っている力であり、誰でも学習し発達させることが可能とのこと。

そんななか、新しい研究では、レジリエンスが神経生物学的であることが見出されました。

レジリエンスが神経生物学的である可能性

ノースウェスタン大学心理学科の研究者らは、暴力犯罪が多発する環境のなかで、健康を害する人もいれば、健康を維持できる人もいるという「レジリエンスの謎」を解くために、218人の若者を対象にした研究を行いました。殺人率を含む近隣の要因や健康を評価し、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて調査したそう。

その結果、脳の中央実行系ネットワーク(CEN:central executive network)における、安静時(ボーっとしているとき)の結合性の差が、レジリエンスの差に関係していると示唆されたそうです。

以前より、暴力が激しい地域に住む若者は、より安全な地域に住む若者よりも、心血管代謝の健康状態が悪いという関連性が分かっていました。ストレスホルモンの影響などが考えられます。この関連性(悪環境と悪健康)を示したのが、安静時に CEN ネットワーク の結びつきが低い人のみだったのです。

この研究は、レジリエンスを高める神経回路についての手がかりを提供したにすぎませんが、今後のさらなる研究では、脳の CEN ネットワークの結合性を調整するプログラムによって、「自己管理、脅威の再評価、思考の抑制」を強化し、ストレスに対する反応を軽減できる可能性もあるとのことです(『PNAS』2018年11月20日)。

レジリエンスにかかわる脳ネットワークは鍛えられる?

なお、前項の「中央実行系ネットワーク(CEN)」の、中央実行系とは、ワーキングメモリを構成するひとつのこと。高次の認知活動をつかさどっており、脳の前頭前野・頭頂葉が関与します。実行機能とも呼ばれるそう。

2017年の12月、筑波大学体育系の征矢英昭教授らは、「高強度インターバル運動」によって、この高次認知機能(実行機能)が向上することを明らかにしたそうです。

「高強度インターバル運動」とは、とても短い時間のみ行う、強い運動の合間に休憩などを挟み、繰り返す運動法のこと。運動意欲を向上させるのに、効果的な運動様式なのだとか。 立命館大学の田畑泉教授が有用性を発表した、高強度インターバル運動の HIIT(High Intensity Interval Training)は、脂肪燃焼効果が高いことでも有名です。

いずれにせよ、こうした運動が、レジリエンスに関わる可能性を持つ脳領域を、鍛えてくれるのは確かだといえます。

HIITは、強い負荷の筋トレ(スクワットや腕立て伏せなど)4種類を、順番に、20秒行っては10秒休むかたちで行い、それを2周するというもの。みなさんご自身にとって負荷が強い運動を、何でも自由に取り入れ、ぜひ習慣にしてみてはいかがでしょう。ちょっとキツいかもしれませんが、ものすごく短い時間でレジリエンスを鍛え、未来を変えられるかもしれませんよ。

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最新の研究とともに、レジリエンスを鍛えてくれる期待値が高い、非常に簡単な方法を提案しました。ぜひお試しください!

(参考)
久世浩司(2014),『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』,実業之日本社.
Study Hacker|不安もイライラも他人事に。心の弾力性 “レジリエンス” を高める「感情ノート」のすごい効果
Study Hacker|“経営の神様” 松下幸之助の成功の秘訣! 折れない心「レジリエンス」を鍛える『3つのC』
Feinberg School of Medicine: Feinberg School of Medicine: Northwestern University|Resilience May Be Neurobiological
PNAS|Functional connectivity in central executive network protects youth against cardiometabolic risks linked with neighborhood violence
広島大学|児童・生徒のワーキングメモリと学習支援|「ワーキングメモリ」とは
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脳科学辞典|中央実行系