オフィスまで向かう通勤電車の中、あなたは何をして過ごしていますか? メッセージのやり取り、SNS、それとも動画サイトの閲覧でしょうか?
ビジネスパーソンのスキルアップを支援する株式会社オンラインスクールが、電車通勤をしている1都3県在住ビジネスパーソン1,000名を対象に実施した実態調査によると、通勤電車の過ごし方で最も多かったのは、立っているときは「ニュースサイトの閲覧」(32.4%)、座っているときは「仮眠、休憩」(37.9%)だったそうです。
これらも悪くはないのですが……ほんの少しの工夫をすれば、“脳にいい” 過ごし方になりますよ。通勤電車の中ですべき4つのことをご紹介しましょう。
【1】脳の活性化に「立って / 真ん中に座って腹式呼吸する」
脳内科医の加藤俊徳氏によると、息を鼻から吸って口から吐く「腹式呼吸」をゆっくり行なうと、脳に正しいリズムがもたらされるそうです。脳のリズムは、ホルモンや体内時計や食事といったさまざまなリズムが組み合わさってつくられていますが、睡眠不足や不規則な食事などが原因で崩れてしまうことも。
そこで、朝の通勤電車の時間を利用して、ゆったり腹式呼吸しましょう。脳のリズムが整い、朝からしっかり覚醒できる身体に生まれ変わるそうです。
さらに加藤氏は、座った状態よりも立った状態のほうが理想的だと言います。立つことで多くの刺激が得られ、運動系脳番地だけでなく視覚系脳番地や思考系脳番地を鍛えることにもつながるからです。
ちなみに、どうしても座りたい場合は真ん中の席を選ぶのがよいとのこと。端に座るときと比べ、無意識ながらも周囲への気配りが頻繁に行なわれるので、注意力が高まり脳を刺激しやすいそうですよ。
【2】記憶力アップに「車内広告の逆さ読み」
冒頭で取り上げた実態調査にて「ニュースサイトを閲覧する」と回答した人が多かったとおり、 通勤電車において何かを見たり読んだりしながら時間をつぶす人は少なくありません。しかし、前出の加藤氏は、スマートフォンを見るのはやめたほうがよいと述べています。
その理由は「脳の疲弊を招く」から。 小さな画面を見続けていると眼球がほとんど動かず、視覚系脳番地ばかりが酷使されて疲労につながるそうです。当然、眼球の筋肉が凝り固まってしまうというデメリットもあります。
そこで加藤氏がすすめるのが、電車の中にある広告の文言の「逆さ読み」。たとえば、「今年の夏は家族でハワイ」という文言があったら、「いわはでくぞかはつなのしとこ」と逆さ読みして、さらに暗記します。
逆さ読みはできても、暗記するのは、短いフレーズでも難しいかもしれません。しかし、これを繰り返していると、何かを覚えたり思い出したりすることに関係する領域の「記憶系脳番地」が鍛えられるとのこと。慣れてきたら、より長いフレーズに挑戦するのもよさそうですね。
【3】思考力アップに「吊り革を使った目のストレッチ」
デスクワークで日頃から目の疲れを感じている人は、「疲れを癒やす目のストレッチ」を取り入れてみましょう。眼科医の森岡清史氏が紹介する方法は以下。
- 吊り革の根元や手元を30秒間見る
- 吊り革の輪の中から、3m以上先の遠くの景色を見る
この動きを繰り返して目を動かすと、ピント調整を担う目の筋肉「毛様体筋」にたまっている疲労物質を流すことができるそうです。
また、この毛様体筋は私たちの思考力とも関係が。連日のデスクワークなどで毛様体筋がこわばった状態が続くと、顔面から首にかけての筋肉が緊張し、脳の血流が悪くなります。その結果、必要な酸素や栄養が脳に届かず、思考力が低下してしまうのです。
さらに、目の疲労で見え方が悪くなることも脳に悪影響を与えていると、森岡氏は指摘します。私たちは普段、目から情報をキャッチしたら、視神経をとおして脳中枢へ信号を送ります。その後、脳の前頭葉や言語野などが連携して情報を解析しますが、見え方がよいほど脳の情報解析能力も高くなるのだそう。情報をすばやく解析できれば、その後の思考や判断のスピードも上がります。
思考力が落ちてきたと最近感じるのであれば、目の疲れが原因になっているかもしれません。通勤電車でぜひ目のストレッチをやってみましょう。
【4】勉強に集中したいならば「目よりも耳を使う」
ここまでの話からおわかりいただけたとおり、通勤電車で目を酷使することは、その後のパフォーマンスを考えても効率的とは言えません。それでも通勤電車は仕事や資格に関する勉強時間にあてたい、情報収集したい……という人は、「耳を使う」方法で取り組んでみてはいかがでしょうか。
医学博士の裴英洙氏は、朝の電車で目を酷使しないようにすると、午前中のパフォーマンスを高められると言います。英語の勉強をしているのならば、英単語帳を読むのではなく、イヤホンをしてリスニングの練習をする。仕事のために時事問題やビジネス情報を把握しておきたいのならば、「聴く日経」といったサービスやニュース読み上げアプリを使う、など。
3で紹介した「吊り革を使った目のストレッチ」も並行して行なえば、一石二鳥ですよ。
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通勤電車に1日1時間乗っているとしたら、1か月で20時間、1年で240時間もの時間に相当します。この時間の過ごし方を工夫すれば、パフォーマンスアップにつながるかもしれません。なんとなく過ごしていた方は、ぜひ見直してみましょう!
(参考)
PR TIMES|毎日の通勤時間、有効に使えていますか!?ビジネスパーソン1,000名に聞いた「通勤電車の過ごし方に関する実態調査」
プレジデント・オンライン|脳内科医が「電車では端の席を避けろ」という訳
脳の学校|第202号 脳にいい!通勤電車の乗り方
FNN PRIME|眼の疲れは思考の低下にも繋がる…疲労回復の方法は?
裴英洙(2018),『一流のパフォーマンスアップ習慣: できる自分に瞬間で戻れる!』, 学研プラス.
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。