「ToDoリストをつくっても、リスト通りにタスクが終わらない」
「作業効率を高めて、もっと仕事の成果を上げたい」
という人におすすめなのが、精神科医の樺沢紫苑氏が考案する「集中力のギアが上がるToDoリスト」です。このToDoリストは、脳の働きの特徴を考慮してつくるもの。誰でも高い集中力を保ちながら多くのタスクをこなすことができます。
1か月実践してみた筆者の体験談とともに、その具体的な方法を説明しましょう。
「集中力のギアが上がるToDoリスト」の特徴
タスク管理法といえば、スティーブン・R・コヴィー博士が『7つの習慣』で提唱したやり方がよく知られています。それは、タスクを「緊急度」と「重要度」の掛け合わせで次の4つの領域に分類し、優先順位を決めるというもの。
- A:「緊急度」も「重要度」も高い
- B:「重要度」は高いが「緊急度」は低い
- C:「緊急度」は高いが「重要度」は低い
- D:「緊急度」も「重要度」も低い
樺沢氏は、この分類には「集中力」の概念がまったく反映されていないという問題点があると指摘しています。「集中力が必要だけど緊急度(あるいは重要度)が低い仕事」が先送りになってしまう可能性があると言うのです。
たとえば、「来週原稿を提出する」と「明日中に備品の在庫を確認する」の2つのタスクがある場合。仮にどちらも同じぐらい重要だとすると、緊急度を重視して後者が優先されがちです。しかし樺沢氏は、たとえ納期まで時間があったとしても、集中力を必要とするタスク(この例なら、原稿作成)を優先させるべきだと言います。
加えて、集中力がいるタスクは午前中に取りかかるべきなのだそう。なぜなら、朝一番の脳は疲れのないイキイキとした状態であり、1日のなかで最も高い集中力を発揮できるからです。特に起床後2~3時間は「脳のゴールデンタイム」なので、集中力が必要なタスクがあるときは、「あとでいいや」と思わず、この時間帯に取りかかるとよいとのこと。
また、同じ作業でも、午後にやるより午前にやったほうが早く終わると、樺沢氏は述べます。午後だと4時間かかるタスクを、午前にやって2時間で終われば、2時間分の貯金ができますね。その時間を使ってほかの仕事をすれば、より作業効率が高まり、成果も上げられます。
以上のことを反映させ、脳の特徴をふまえつつ、集中力を中心にして時間軸も加味したつくりになっているのが「集中力のギアが上がるToDoリスト」なのです。
書き方のポイントは「集中力が必要な順」に書くこと
「集中力のギアが上がるToDoリスト」の書き方を説明しましょう。こちらが基本のフォーマットです。タスクを多く羅列すると脳が混乱するため、各項目3つまでにとどめます。
原則として、最も集中すべき一番重要なタスクを1行目に書きます。以後、集中力が必要な作業をリストの上から順に記入。各項目の右隣にある小さなマスには、状況に応じて「★(=高い集中力を要するもの)」、「◎(=きわめて緊急度や重要度が高いもの)」のマークを入れてください。そのほかのポイントは次のとおり。
- 「AM」……午前中に行なうタスク
- 「PM」……午後に行なうタスク
- 「毎日」……日々行なうタスク
- 「スキマ」……10分以内で終わるタスク
- 「遊び」……終業後にしたいこと、趣味や娯楽、家族や友人と過ごす予定
- 「その他」……緊急度も重要度も低いタスク、追加の仕事
このToDoリストは仕事のためにつくるものですが、「遊び」を軽視してはいけないと樺沢氏は言います。仕事に集中してやりたいことを忘れると、ストレスがたまる原因になるとのこと。その日のストレスをその日のうちに解消するためにも、「遊び」の項目は大切なのだそう。これに関しては、「21時からテレビを見る」のように時間を書き込むと、仕事の集中力やモチベーションが上がっておすすめだそうですよ。
「集中力のギアが上がるToDoリスト」を作成してみた
実践上の工夫はほかにもあります。
・パソコンでつくる
このToDoリストは、手書きではなく、パソコンにフォーマットをつくってタスクを入力し、プリントアウトして使います。理由は2つで、1つは「昨日のToDoリストに上書きすることで、前日のタスクの達成度を確認できる」ため、もう1つは「毎日やるタスクをいちいち書き出す手間が省ける」ためです。例外として、追加で入った仕事は「その他」の項目に手書きします。
なお、スマートフォンでToDoリストを管理するのは、スマートフォンを見るたびSNSなどに誘惑される可能性があるので、避けたほうがよいとのこと。これも集中力を維持するための工夫です。
・見やすい場所に置く
プリントアウトしたToDoリストは、デスクのすぐ目につく場所に置きます。タスクをうっかり忘れないようにするためです。筆者は、コルクボードをパソコンの上部に設置して貼りました。
・終わったら赤い線で消す
リストアップしたタスクには上から順に取り組み、終了したタスクには、赤いペンで線を引いて消します。このほうが達成感を味わえるとのことだったので、筆者もそれにならいました。
これらの点を押さえ、実際に筆者がつくった「集中力のギアが上がるToDoリスト」がこちらです。
このタスク管理法を特におすすめしたいのは、こんな人!
「集中力のギアが上がるToDoリスト」を実践した結果、次のような方にぜひおすすめしたいと感じました。
1.「先延ばし癖がある人」におすすめ
筆者が実践してまず最初に感じたのが、「先延ばし癖が改善され、前のめりにタスクをこなせるようになった」ということです。
原稿作成のような集中力を必要とするタスクを午後にやると、ランチ後の眠気が出たり、疲れでやる気が出なかったりと、どうしても腰が重くなりがちです。しかし、「集中力がいるものは午前に」とルールを決めてしまえば、雑念なく作業に取りかかれます。
そうすると先延ばし癖が改善されるし、思ったより早く作業が終わるのです。万が一、午前中に作業が終わらなくても、ツァイガルニク効果(未完のものは記憶に残りやすく、緊張感を維持しやすい)によりスムーズに続きに取りかかれました。
これまでのToDoリストではわざわざ書くことのなかった「毎日」のタスクは、最初に書いたらあとは書き直すことなく、線を引いて消すだけでしたが、この手軽さで達成感を味わえるのですからお得だと思います。
2.「心の充実が欲しい人」にも最適
「スキマ」「遊び」「その他」の項目は、いかに「やりたいこと、やろうと思ったこと」が脳に浮かんでは消えているかということを感じさせてくれました。
特に「遊び」の存在は大きなもの。「どうせ忘れてしまうのだから、たいして重要ではない」と考えがちなことでも、やりたいと思ったことを実践すれば、心の充実度が高まり、翌日のモチベーションにつながることを実感しました。また、「遊び」の欄に時間を書くことは、午後の作業スピードを意識することにつながりました。
3.「仕事量を増やしたい人」にも向いている
このToDoリストの効果で、前のめりにタスクをこなせるようになったおかげで、当然ながら1日あたりの仕事量が増えました。余裕ができた時間を、オンラインセミナーの受講に充てたり仕事関連の書籍を読んだりといった、インプットに活用することもできたのです。もっとたくさん仕事をこなしたい人や、勉強時間を確保したい人にも、ぜひこのToDoリストを実践してみてほしいです。
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脳科学に基づいて考案された、「集中力のギアが上がるToDoリスト」。パソコン入力なのでリスト作成に時間がかからず、手軽に始められます。これまでのToDoリストで満足できなかった方は、ぜひ実践してみてくださいね。
(参考)
樺沢紫苑(2017),『絶対にミスをしない人の脳の習慣』, SBクリエイティブ.
リコーのマーケティング・販促支援|ツァイガルニク効果とは?
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。