客観的に自分を観察「自己モニタリング」の3大効果がすごい。“あの習慣” をアレンジすればすぐできる!

銀座泰明クリニックの「週間活動記録表」を参考にした自己モニタリングの実践画像

自分のことを客観視する「自己モニタリング」は、ストレス対処やミスの軽減、自己パフォーマンスの向上に役立つといいます。いわゆる “自分で自分を観察する” わけですが、「よくわからない」「難しそうだ」と感じる人もいるかもしれません。

そこで今回は、自己モニタリングの効果について説明しながら、一般的によくある「いつもの習慣」を効果的な自己モニタリングにする方法を紹介します。

自己モニタリングの効力

◎「ストレスマネジメント」

心身を良好に保つため、根絶不可能なストレスとうまくつき合っていく方法を考え、適切に対処していくことをストレスマネジメントといいます。そして、自分の体調や気分、行動などを記録し、観察・分析したうえで次の行動につなげていく習慣を自己モニタリング(あるいはセルフモニタリング)」といいます。

鳥取大学大学院医学系研究科 臨床心理学講座教授の井上雅彦氏が監修する、「LITALICO仕事ナビ・お役立ちガイド」によると、「自己モニタリング」はストレスマネジメントにおけるひとつの段階なのだとか。これを行なうことにより、自分がストレスを感じる状況や、ストレス反応の表れ方などがわかってくるそうです。

厄介なストレス問題も、細部が明確になればグッと扱いやすくなるはず。また、自分の状態を客観視することにより、気持ちもラクになるとのことです。

◎「パフォーマンスの向上」

米Amazon2017年ベスト・サイエンス書に選ばれた『Learn Better』の著者で、米国先端政策研究所(CAP)のシニアフェローでもあるアーリック・ボーザー氏によれば、自己モニタリングを続けることにより、自分のパフォーマンス向上に意識が向くようになるそうです。

同氏いわく、通常は多くの人が自分のパフォーマンスに注意を払わないとのこと。自分のパフォーマンスへの意識が高まれば、それにともない行動も変わると考えられます。

◎「ミスの軽減」

トロント在住の脳外科医マーク・バーンスタイン氏らは、手術中に起きたチーム全体のミスをモニタリングし、データベース化して検証したそうです。すると、1か月に3件以上あったミスを半分にまで減らせたのだとか(前出のボーザー氏著書より)。モニタリングをもとにフィードバックの仕組みをつくり、見事に成功したわけです。

では次に、“いつもの習慣” を効果的な自己モニタリングにする方法を、4つ紹介していきましょう。

“いつもの習慣” を自己モニタリングに

1.【日報】で自己成長のために振り返る

就職支援や社員教育などを行なう株式会社ジェイック取締役の東宮美樹氏によると、新人に日報を書かせる目的のひとつは、振り返りの習慣を身につけさせることなのだとか。具体的には、

  • できたこと・できなかったことを振り返る
  • できたことは改善しながら継続する
  • できなかったことは、どうしたらよかったのか考える

といった振り返りが「自己肯定感・効力感」を与えつつ、「足りない何か」を認識させるので、成長へとつながっていくそうです。

人事システムを提供する株式会社サイダス banto(OKRクラウド)事業責任者の高橋和夫氏も、日報は報告だけが目的なのではなく、今日1日の仕事を振り返り、問題を把握して原因を分析し、改善案を出して行動に移していく――つまり、自分自身の成長につなげていくことも目的のひとつだと述べています。

自己モニタリングも自身の行動などを振り返って記録し、次の行動につなげていく活動だと説明されているはず。ぜひ日報を書く際は、自己モニタリングを意識して、客観的な視点を心がけてみてください。多くの効果を得られるでしょう。

日報における“振り返り”を実践するビジネスパーソン

2.【日記】に活動記録をプラス

自分のためだけに書く日記は、自己モニタリングを始める場として最適かもしれません。しかし、だいたいは主観で書くものなので、自己モニタリングに必要な客観性に欠けてしまう可能性があります。ならば、いつもの日記に活動記録も加えてみては?

心療内科・精神科の銀座泰明クリニックでは、行動療法の自己モニタリングとして「週間活動記録表」をつけ、自分を客観的に観察する方法を紹介しています。これを行なうと、いろんなことに気づきやすくなるのだとか。

具体的には、1日24時間を1時間ごとに区切り、たとえば起床・朝食・出勤・会議といった、行動がわかる単語を入れ、その横に0~100点のあいだで点数化した気分(※)を入れます。

(※以下画像のカッコ内の数字が気分の点数。良好なほど高得点)

銀座泰明クリニックの週間活動記録表を参考に書いたもの

銀座泰明クリニックの「週間活動記録表」を参考にしてつくったもの。
一般的なビジネスパーソンの例

さらに、いくつかの項目に従って1週間を振り返るのだそう。以下は、銀座泰明クリニックが示している項目を簡単にまとめたものです。

  • 健康に生活できた?
  • 満足のいく仕事はできた?
  • 充実した休日を過ごせた?
  • 何か問題はなかった?

これらは、自分の日々(生活・行動・思考・感情)を客観的に振り返り、対処などを模索する試みなのだとか。ここまで正式にせずとも、いつもの日記に書かれた行動の横に、カッコで囲んだ気分の点数を書き込むだけでも、だいぶ客観的になれますよ。

3.【日記】で気分を振り返る

前項の方法は行動が中心ですが、気分の記録を主体にする方法もあります。たとえば調子がいいならニッコリ顔、いまひとつなら無表情、しんどいなら悲しそうな顔を記録します。

公認心理師・臨床心理士の山本立樹氏によると、このようにして気分を記録し続けたあと、一定期間でくくり折れ線グラフにしてみると、自分の調子が上昇傾向なのか、下降気味なのか、ひとめでわかるようになるとのこと。

山本氏コラム内の折れ線グラフを参考にした例

山本氏コラム内の折れ線グラフを参考につくったもの。上の例は1週間ぶんだが、山本氏が示した例は2か月でくくられている。また、山本氏が扱っている表情のマークは虹、晴れ、曇り、雨などお天気のマーク。

これを継続することで「いつもの自分」という基準がわかり、ストレスにさらされている「いつもと違う自分」の状態も察知しやすくなるとのこと。より早いセルフケアが可能になるわけですね。

4.【SNSやブログ】で自己モニタリング

私たちが日々何気なく投稿しているSNSやブログも、自己モニタリングとして活用できるはずです。前出の東宮氏が示した “今日の振り返り方” を、SNSやブログで実践してみてはいかがでしょう。

  • できたこと・できなかったことを振り返る
    ⇒例:「あーあ、今日は最後のタスクを完了できなかった。でも、優先順位を変えたおかげで、大事なタスクはしっかりできた!」

  • できたことは改善しながら継続
    ⇒例:「大事なことは、今日のように早々に始めて終わらせよう。ただし、時間をかけすぎたかもしれないので注意しなきゃ」

  • できなかったことは、どうすればよかったか振り返る
    ⇒例:「業務開始前に、今日やること全体を俯瞰してみよう。そうすれば、タスクがはみ出してしまうこともないはず」

***
いつもの習慣を、効果的な自己モニタリングにするコツを紹介しました。よろしければお試しくださいね。

(参考)
アーリック・ボーザー 著, 月谷真紀 訳(2018),『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』, 英治出版.
LITALICO仕事ナビ|ストレスマネジメントとは?具体的な方法や、仕事でストレスを感じたときの実践例を紹介します
HRドクター|新人教育で日報を活用するポイントは?日報の目的、書き方のコツ、テンプレート
OKRブログ(banto)|日報でメタ認知をトレーニングして、仕事がデキる人になる方法
東京メンタルヘルス|自分を振り返ること(セルフモニタリング)の大切さ
銀座泰明クリニック|セルフ・モニタリング Self-Monitoring
e-ヘルスネット(厚生労働省)|ストレスマネジメント

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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