「言いたいことを言えない」人が知らぬ間に下げてる3つの力。脳には “自然体” が一番いい

言いたいことを言えないデメリット01

「いつも周囲に合わせて疲れてしまう……」
「変に波風を立てたくない……」
「異論はあるのに、会議で意見を言えない……」
周囲の反応を気にし、本音を隠して自分を偽る――そんな人は少なくないのではないでしょうか。

学校や職場で自分を装うことは、ある意味では社会性ともとらえられるかもしれません。しかし、本心を語ることを恐れ、過度に自制をかけると、さまざまなデメリットが生じてしまいます。

今回は、自己を偽るデメリットを解説しつつ、自分の意見を述べやすくなる方法を紹介します。

デメリット1「免疫力が低下する」

最初に挙げられるのは、免疫力の低下です。キャビンアテンダントを対象に健康状態を調査した研究(1983年)によれば、職場での接客対応が普段の性格と離れている人ほど、身体を壊しやすいことが確認されたのだそう。また、テキサス大学の研究では、本来の自分の性格を隠し通す学生ほど、病気にかかりやすい傾向にあると示されたのだとか。

なぜ、自分を偽ることが免疫力の低下を引き起こしてしまうのでしょうか。それには、過度の緊張からくる自律神経の乱れが関係しています。

内向的であるのにもかかわらず無理をして明るく振る舞うと、常に緊張するため、交感神経が活発な状態に。それが自律神経のバランスを崩し、免疫システムの機能低下を引き起こす要因となります。自分の本来の姿を偽る人ほど、風邪やインフルエンザなどの免疫系の病気に対する抵抗力が弱くなってしまうというわけです。加えて、自律神経が乱れると疲れやすくなり、頭痛肩凝り、さらには不眠にもつながるとか。

本音を言えないことによる心理的負担は想像できますが、知らず知らずのうちに、身体にも負担をかけているとは驚きですね。健康を保てなければ当然仕事に支障が出ますから、気をつけたいところです。

言いたいことを言えないデメリット02

デメリット2「ビジネス能力が低下する」

「仕事では自分を演じていたほうが得」だと考える人もいるでしょう。ところが、ハーバード・ビジネス・スクールの調査(2017年)で、意外にもそうとは言えない事実が確認されたのです。

その調査では、起業家たちを次のふたつのグループに分け、彼らの投資家への交渉能力を調べました。

  • A. 普段の性格を隠し、相手の性格や要望に合わせて交渉するグループ
  • B. 普段の性格と自分の要望を表に出して、交渉するグループ

驚くことに交渉の成功率が高かったのは、自分の性格を表に出したBのグループ。無理に相手に合わせるよりも、自分を偽らずストレートに要望を伝えたほうが、ビジネスを有利に運べたのです。

なぜ、このような結果になったのでしょうか。これに関してメンタリストDaiGo氏は、自分を偽ると脳のリソースを浪費してしまうからだと考察しています。多くの人は、本来の自分の性格を偽るとき、「不自然ではないか?」「相手に合わせられているだろうか?」というふうに神経を使ってしまうもの。そのエネルギーが、限りある脳のリソースを減らし、表現能力やニーズを読み取る能力を低下させることにつながるのだとか。これではビジネススキルが低下して当然です。

逆に言うと、脳のリソースを浪費しない自然体でいるほうが、本来の能力を発揮できてパフォーマンスも上がるというわけなのですね。

言いたいことを言えないデメリット03

デメリット3「脳の潜在能力が低下する」

相手に気兼ねして自分の気持ちを抑えていると、脳にも負荷がかかります。

“いい人” を演じるとき、脳の前頭葉にある抑制回路が強く働いてしまうと述べるのは、脳科学者の茂木健一郎氏。

脳の前頭葉という部位では、自分に不利な方向に思考が働くと、脳に抑制をかけて思考を止めて自分を守ろうとする性質があります。
これは人間関係においてもまったくその通りで、お互いの関係に波風が立ちそうな局面で「嫌われないように」「変なやつだと思われないように」と、脳はさまざまな抑制をかけ始めるのです。

(引用元:cakes|「いい人」をやめると、脳がブルブル動き出す!

脳の抑制回路が働くと、“いい人” としての自制心が強まり、結果として脳の潜在能力を低くしてしまうと茂木氏は述べます。

自分を偽ることは、脳の柔軟な動きを止め、新しいアイデアを生み出す障害となってしまうのです。

言いたいことを言えないデメリット04

どうすれば「言いたいことを言える」ようになるのか?

とはいえ、自分の意見を相手に伝えることに、ためらいや抵抗を感じる人もいるでしょう。意見を言いやすくするには、その方法を知っておく必要があります。

コンサルタントのエイミー・ギャロ氏が「Harvard Business Review」に寄稿した、自己主張する方法を3つご紹介しましょう。

1. 自分の自己主張レベルを把握する

自分が普段どのくらい意見を伝えられているのかを把握しましょう。そのためには、会議やディスカッションの前に、自分が伝えるべきことを書き出してみるのが有効です。書き出したものを伝えられなかった場合、改善する余地があります。

また、信頼できる同僚や友人に「私ってどれぐらい主張できていると思う?」と直接聞いてみるのもおすすめ。普段の自分の自己主張レベルを知ることができます。

2. 現実的な目標を設定する

意見を言えない状況があったときには、「何が言えなかったのか」「なぜ言えなかったのか」を自問し、明確にしておきましょう。それをふまえ、次に自己主張する際には同じ状況に陥らないようにするのです。

また、意見を言う準備として、時間を含めた目標を立てることも効果的です。たとえば、「会議が始まって15分以内に1回発言する」「言えずにいた問題を、3日以内に上司に伝える」など。達成できなかった場合は目標を修正し、無理のない基準で再度試みてください。

3. 人間関係を築く

自己主張をためらう多くの原因は、ほかの人の反応や意見を恐れているから。反対に安心できる環境に身を置くことで、意見を言いやすくなります。

そのためには、仕事以外で同僚と話す機会を設けることも重要です。意見を交わし合う相手のことを知り、親しみやすい関係を築くことは、意見表明を助ける力となりますよ。

***
自分の考えを伝えることは、脳や心身にゆとりをもたせるためにも、本来の仕事能力を発揮するためにも、大切なことです。無理のない程度に、意見を相手に伝える方法を試してみてくださいね。

(参考)
Mentalist DaiGo Official Blog|自分を偽ると起きる【3つの人生崩壊の罠】
Mentalist DaiGo Official Blog|自分を偽ると病みまくるキャラ疲れの原因と対策
cakes|「いい人」をやめると、脳がブルブル動き出す!
Harvard Business Review|How to Be Assertive (Without Losing Yourself)
SAGE Publishing|Arlie Hochschild:The Presentation of Emotion

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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