企業の研修導入担当者の方のなかには、「オンライン研修が気になっている」という方が多くいるのではないでしょうか。
場所・時間を選ばず実施できるオンライン研修は、会議室などで行なう一斉研修と比べ、圧倒的に効率がよいのが特徴です。ただ、数多く存在するオンライン研修サービスのうちいったいどれを選べばよいのか、なかなかわかりにくいもの。
今回の記事では、数あるオンライン研修のなかでも、「Udemy Business」のようなコンテンツを豊富に抱えるオンライン研修サービスを導入する際のポイントを解説します。
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コンテンツが豊富なオンライン研修を導入するメリット・デメリット
オンライン研修の導入を検討中の方のなかには、「Udemy Business」「LinkedInラーニング」「Schoo for Business」「GLOBIS学び放題」などの、コンテンツが豊富なオンライン研修プログラムに注目している方がいるはず。
「コンテンツがたくさんあるから安心だろう」と思いつつも「本当に大丈夫かな?」といった心配もあるのではないでしょうか。
そこでこの項では、さまざまなコースが開講されているオンライン研修プログラムのメリットとデメリットをまとめてみました。
メリット:幅広いニーズに対応している
膨大なコンテンツを擁するオンライン研修サービスを導入するメリットとして、まず挙げられるのが汎用性の高さです。新入社員に必要なマナー研修から、管理職になりたての社員に必要なマネジメント研修まで、社員ひとりひとりのニーズに合った有益な研修プログラムを探すことができます。
多様なニーズに合わせた研修を自社で実施するとなると、企画を考えて、スライドを作成して……といった作業をすべての研修に対して行なわなければなりません。ですが、豊富なコンテンツをもつ研修サービスを導入すれば、すでに完成されている研修を選ぶだけ。企業にとって、研修を行なう手間が大幅に省けます。
「多くの社員に多様なプログラムを受講させたら、管理できなくなるのでは?」と心配になるかもしれませんが、各社員の視聴履歴や学習履歴はオンラインで管理することが可能。企業担当者として進捗管理がしやすいのも大きなメリットです。
また、多くのサービスではアカウント数ごとの料金体系になっており、かかる費用は研修が必要な人数分のみ。無駄なく研修を導入できる点も魅力でしょう。
デメリット:適切なプログラムを探すのが難しい
デメリットとしては、コンテンツが豊富にありすぎるため、どれを視聴すればよいかわかりにくいという点が挙げられます。
また、コンテンツが豊富とはいっても、発展的な内容や、スキルをさらに深めたりするようなコンテンツまでは扱われていないケースもあるので、注意が必要です。
なお、そもそも、オンラインで各自が講座を受講するタイプの研修では、講師が直接指導するスタイルの研修と比べて、社員の自己管理能力が求められます。受講する場所や時間を問わないオンライン研修では、社員にとって、受講の強制力がどうしても低くなってしまうためです。
「コンテンツがたくさんあるサービスを導入しておけば間違いないだろう」などと安心するわけにはいかないようですね。
では次に、コンテンツを豊富にもつオンライン研修を導入する際のポイントについて見ていきましょう。
自社のニーズに合ったオンライン研修の選び方
研修の目的を設定する
初めに、研修の目的を明確にしましょう。
せっかくコンテンツが豊富なオンライン研修を導入しても、導入しただけで放置してしまえば費用の無駄。個人でもよくある、サブスクリプションに無意味にお金をかけ続けてしまうようなケースになりかねません。
研修を導入するWHYの部分を明確にしないと、無駄なコストを払い続けてしまうことになるので、注意しましょう。
たとえば、
- 部署間の認識をそろえる
- 新入社員にビジネスマナーを身につけさせる
- バックオフィス社員のITリテラシーを底上げする
などのように、多くの社員のスキルの底上げや均一化を目的とする場合、コンテンツの守備範囲が広い研修サービスは非常に向いています。
質の高い研修コンテンツを選ぶ
コンテンツ量が豊富な研修サービスを導入する場合、そのコンテンツの質の見極めが大切になってきます。
たとえば、新入社員に向けてビジネスマナーについて動画研修を行ないたい場合は、まず会社の人事担当者がその動画をチェックするといいでしょう。会社で推奨しているビジネスマナーと齟齬がないか、これまで人事担当者が行なっていた研修との親和性はあるか、といったことを基準に判断します。
また、社内のマーケティング人材を育成したい場合は、社内のマーケティングのエキスパートに動画の視聴を依頼し、判断を仰ぐといいでしょう。
参加者のモチベーションを保つための工夫をする
どこでも視聴や参加が可能なオンライン研修は、視聴率や参加率が低くなりがちです。豊富なコンテンツが魅力の研修サービスを導入しても、いつ視聴するのかや、確実に視聴するかどうかを社員任せにしてしまうと、参加率や完遂率を上げることができません。
たとえば、研修を受講する社員どうしが参加状況を報告し合えるようなコミュニティを用意することは、参加者のモチベーションを保つために有効な方法のひとつです。
また、業務の都合がゆるせば、「毎週◯曜日の◯時からは一斉にオンライン研修を受講する」といったルールをつくり、社員に参加を促すのも効果的でしょう。
続いては、オンライン研修を成功させるための注意点をいくつか紹介します。
オンライン研修成功のためのベストプラクティス
コンテンツの豊富なオンライン研修を、さまざまな部署で働く多くの社員に受けさせる際、企業の研修担当者が必ず押さえておきたいことが2点あります。それは「スキルマップ」と「キュレーション」です。
その社員に必要なスキルマップを提示する
オンライン研修を導入する目的を明確にしたあとは、オンライン研修を受ける社員に身につけてほしいスキルマップを作成して提示しましょう。
たとえば、マネージャーに昇進したばかりの社員を対象にする場合、スキルマップの一例として以下が考えられます。
- 指示能力
- 状況判断力
- 問題解決能力
- コミュニケーション力
- 人材育成能力
- コンプライアンスの知識
上記のような能力や知識が必要であることを提示し「これらを身につけるためにオンライン研修を受けてもらいたいのです」と伝えることが、シンプルかつ効果的です。
上司・先輩社員がコンテンツのキュレーターになる
スキルマップができあがったら、次は視聴・学習するコンテンツを選びます。ここでは、研修を受ける社員の直属の上司や部門長にキュレーターとしてコンテンツを選定してもらうといいでしょう。
たとえば、Netflixにある膨大な数の映画のなかからどれを見たらいいかわからないとき、映画評論家のおすすめを見ますよね。それと同じように、研修コンテンツにも適切なキュレーターが必要なのです。
なお、スキルマップに対応するコンテンツを、研修を受ける社員の上司が直接選定することは、上司の側にもメリットをもたらします。それは、同じ部署内・部門内の「共通言語」を教えやすくなるという点です。
たとえば、上司が新入社員にマーケティングの用語をいちいち教えるよりも、まずは研修動画でCPA、CPO、CTRなどの用語を覚えさせ、それを土台として上司が「部署としてCPAをどう定義しているのか」を教えるほうが、スムーズなのです。
企業の研修担当者は、コンテンツのキュレーションが大切であるという点を、社内の関係者に認識してもらいましょう。
スキルを深掘りしたい場合は専門の研修会社を選定する
コンテンツが豊富なオンライン研修は、特定のスキルを深めることには向いていない可能性があります。
コンテンツの数は多くても、各コンテンツの専門性が際立って高いとは限らないもの。たとえば、社員にハイレベルな英語力をつけさせたい、プログラミング言語を習得させたいと思っても、基本部分だけをカバーしたコンテンツしかなければ、ニーズに合ったものを見つけることができません。
そうした場合は、英語研修やプログラミングなどを専門に扱っている研修サービスを探すことも検討してみてください。オンライン研修で高い参加率や完遂率を見せ、基本スキルを習得した社員に専門研修を受けさせれば、成功する確率は高まります。
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この記事では、コンテンツが豊富なオンライン研修を効果的に導入し、社員のスキル向上を実現するための重要なポイントを紹介しました。以下がそのまとめです。
メリットとデメリットの理解:
コンテンツが豊富なオンライン研修は、幅広いニーズに対応しているメリットがありますが、適切なプログラムの選択や参加者のモチベーション維持など、いくつかの課題も存在します。これらを理解し、事前に対策を講じることが重要です。
明確な目的の設定:
どのようなスキルや知識を社員に身につけさせたいかを明確にします。目的が明確でなければ、研修の効果が半減してしまう可能性があります。
質の高いコンテンツの選定:
豊富なコンテンツのなかから、社員のニーズに合致し、企業の目標に貢献するものを選び出すことが肝心。これには、部門長や経験豊富な社員がコンテンツのキュレーターとして活躍することも有効です。
参加者のモチベーション維持:
オンライン研修では自由度が高い反面、参加者のモチベーション維持が課題となります。コミュニティをつくる、一定の時間を研修に充てるなどの工夫が必要です。
専門研修の活用:
基本的なスキルを獲得した社員には、より専門的な研修を受けさせることも検討しましょう。社員のスキルをさらに深めることができます。
オンライン研修の導入は、社員の能力開発と企業の成長に大きく貢献します。本記事が、コンテンツを豊富にもつオンライン研修サービス導入の成功の一助となれば幸いです。