「就職したい!」と思われる会社の特徴、第1位は○○。企業研修で行なう「人的資本経営」の基本

2つの高層ビル

近頃「人的資本経営」というワードが注目されています。その背景にあるのが、2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化されたことです。

人的資本経営とは、従業員の能力、知識、スキルを経営の中心に据え、これを最大限に活用しようとする経営戦略を指します。ただ、こう聞くだけではどう対応していいのかわからず、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、人的資本経営に対応するため、すぐに取り組める従業員の研修について解説していきます。

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STUDY HACKER 編集部
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(参考)

経済産業省|関連データ・政策集
経済産業省|人的資本経営
岡田幸士(2024), 『図解 人的資本経営 50の問いに答えるだけで「理想の組織」が実現できる』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
株式会社リクルート|就職プロセス調査(2023年卒)「2022年12月1日時点 内定状況」

人的資本経営とは?

人材に投資しない日本企業

日本企業は人材にどれくらい投資しているのか、ご存じでしょうか?

経済産業省がまとめたデータ「人材投資(OJT以外)の国際比較(GDP比)」によると、なんと日本の人材投資はGDP比のわずか0.1%です(2010~2014年)。しかも年々低下しています。

米国はGDP比2.08%、フランス、ドイツ、イタリア、英国だとGDP比は1%超え。こうしたデータからは、日本は諸外国と比べて、人材に対し極めて低い額の投資しかしていないことがうかがえます。

(参考:経済産業省|関連データ・政策集

「人材投資」と聞いても、イメージが少し湧きにくい読者の方もいるかもしれませんね。では、いま注目されている「人的資本経営」という言葉から、この人材投資について詳しく見ていきたいと思います。

人的資本経営の定義

まず、人的資本経営の定義を確認しましょう。

経済産業省は人的資本経営を以下のように定義しています。

人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方

(引用元:経済産業省|人的資本経営

人を「資本」としてとらえる――そう聞くと、なんだか冷たい響きだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。ですが、以下の内容を理解すれば、その印象は少し変わるでしょう。

日本マクドナルドで16万人の人材マネジメントに携わった岡田幸士氏は、著書で下記のようにまとめています。

人は投資する量によって価値が変わる資産(可変資本)と捉えるべき

(引用元:岡田幸士(2024), 『図解 人的資本経営 50の問いに答えるだけで「理想の組織」が実現できる』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.)

「資本」とは一般的に、事業活動を行ない収益を生み出すための元手となる資金のこと。消費されるような資源ではなく、収益を生み出すための源泉だということですね。「可変」というところもポイントで、採用や育成といった「投資」を行なうことが、人材の価値を引き出し、企業を成長させることにつながると、人的資本経営では考えます。

オフィスで働くビジネスパーソン

人的資本経営・開示のメリット

先の岡田氏は、人的資本経営・開示のメリットとして下記を挙げています。

  • 経営者:人材確保・業績の向上
  • 株主(投資家):安心して投資ができる、株価・企業価値の向上
  • 人材:働く環境が良くなる
  • 顧客:価値・満足度が向上する

(引用元:同上)

ここからが企業や担当者の方が悩ましいところ。「具体的にどうすればいいのか?」「どこから手をつければいいのか?」と感じる方が多いはずです。

次の項目で、どのような手が打てるのかを見ていきましょう。

人的資本経営はまず「既存社員への投資」から

人的資本経営には、採用、育成、エンゲージメント(既存人材の流出を防止するための施策)といった、多岐に渡る人事体制の構築や整備が必要です。

そのなかでも、まず取り組みやすいのは育成。特に既存社員への研修です。

企業が育成を率先してやるべき理由1. スキル差を解消できる

従業員には、それぞれ強みや弱みがあります(当たり前ですね)。

Aさんは英語ができるけれど、ITが苦手。Bさんは英語はできないけれど、ITスキルがある――など、同じ会社に正反対のスキルをもつ人がいるケースも珍しくないでしょう。

そんな会社が突然買収されて外資企業の子会社になったとすると、英語ができないBさんにとって、英語を学ぶ緊急度は一気に上がります。急いで英語を学ばなければならないわけです。このとき会社は、研修の機会を用意したり、補助をしたりして、Bさんが英語ができるように育成していくことが大事。

このように、スキルが足りない社員に研修を行ない、社員間のスキル差を解消することは、社員全体の生産性向上につながるでしょう。

企業が育成を率先してやるべき理由2. 入社時と求められるスキルが変わってくる

社員に求められる知識やスキルは、部署の異動や昇格・昇進といったフェーズごとに変化するもの。ですから、そのフェーズに合わせた知識・スキルのアップデートが必要になります。

なお、社員を採用する時点で、各社員がどのようなスキルをもっているか把握している会社は多いかもしれません。ですが社員がもつスキルは、入社後の業務経験や自己学習によって変化するもの。

研修を行なう前にスキルマップで社員の長所・短所を評価し、スキルレベルを数値化すれば、育成計画も立てやすいでしょう。スキルマップとは、個人のもつスキルや能力を視覚的に表現したマップのこと。たとえば、マネージャー(マネジメント)のスキルマップであれば、以下の項目でスキルを可視化します。

  • チームビルディング
  • 問題解決力
  • プロジェクト管理
  • 対人コミュニケーション
  • 意思決定

あくまでこれは一例ですので、その企業や部署によって必要なスキルの一覧を作成するといいでしょう。

企業が育成を率先してやるべき理由3. 社員を成長させる企業としてブランディングできる

最後に対外的なメリットも紹介しておきましょう。それは、既存社員への「投資」を惜しまない姿勢が、自社のブランディングに役立つという点です。

株式会社リクルートが2023年卒の就職内定者に対して実施した調査によると、「就職先を確定する際に決め手となった項目」として最も多かった回答が「自らの成長が期待できる」というものでした。2021年卒、2022年卒を対象に調査した際も、同様の結果だったとのことです。

(参考、カギカッコ内引用元:株式会社リクルート|就職プロセス調査(2023年卒)「2022年12月1日時点 内定状況」

社員の育成を大切に実施すれば、採用面でも優位性を確立することができるのです。

資料を見るビジネスパーソン

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本記事では、人的資本経営の定義とその必要性、企業が取り組むべき育成の重要性について解説しました。人的資本経営は、従業員の能力、知識、スキルを「資本」ととらえ、これらを最大限に活用しようとする経営戦略です。

そして、育成に焦点を当てた企業研修は、人的資本経営において特に取り組みやすい分野。研修を行なうことは、社員の成長だけでなく、対外的な企業ブランディングにも有効です。

もし社内に研修を実施するためのリソースが不足している場合は、社外の研修会社の利用を検討し、人材への「投資」を進めていきましょう。

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