Z世代の育成で大切なのは “○○しない” こと。「飲み会はNG」と決めつけていませんか?

Z世代がスマートフォンを扱いながら仕事をしている様子

「Z世代の入社が増えてきて、新人の研修が大変」
「新入社員とどう接していいのかわからない」
——人事担当者や管理職の方であれば、一度は悩んだ経験のある方が多いのではないでしょうか。

実際、リクルートワークス研究所の調査によると、大手企業の課長級管理職で20代の部下を評価する立場にある人の、70%以上が「若手が十分に育っていない」と感じており、60%以上が「このままでは職場の若手が離職してしまう」と感じていることがわかっています。(参照:リクルートワークス研究所|大手企業管理職の若手育成に関する定量調査報告書

日々、多くの管理職が若手社員の育成について懸念し、若手が離職してしまうのではとびくびくしている状況なのです。

この記事では、人事担当者や管理職のみなさんに、「Z世代」の若手社員を上手に育成するためのポイントをご紹介します。育成のみならず、世代を超えて仕事を円滑に進めるヒントにもなるはずです。

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STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

(参考)

リクルートワークス研究所|大手企業管理職の若手育成に関する定量調査報告書
ダイヤモンド・オンライン|Z世代はなぜ時間があるのに時短を求める?「タイパ消費」の実態
古屋星斗(2023), 『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』, 日経BP 日本経済新聞出版.
野村総合研究所|Z世代

Z世代とは?

Z世代とは、1990年代中期から2010年代初期に生まれた世代を指します。この世代の人たちは、生まれたときからインターネットやデジタル機器が身近にある環境で育っているため、「デジタルネイティブ世代」とも言われます。

動画を倍速で視聴するなど、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する傾向がZ世代にある点は有名ですね。青山学院大学経営学部マーケティング学科の久保田進彦教授は、これについて幼少期からデジタルツールに親しんできたことが要因だと分析しています。(参照:ダイヤモンド・オンライン|Z世代はなぜ時間があるのに時短を求める?「タイパ消費」の実態

Z世代の人にとって、情報は手元のスマートフォンで収集し、記録したい情報は写真やスクリーンショットで保存するのが当たり前。「時短」する習慣が染みついているのも当然かもしれません。

調べたい情報があるときには書店や図書館で書籍を探したり、記録したい情報は紙でメモをとったり……といった「時間と手間を要する行為」しか選択肢がなかった時代を経験してきた世代とは、大きく異なります。

ただ、これらはあくまで “傾向” に過ぎません。「Z世代は全員こう」だと決めつけてしまうと、接し方を間違えてしまう可能性も……。

並んで立っているZ世代

二極化しているZ世代

いつの時代も聞かれるのは「最近の若者は..….」という枕詞で始まる若者批判ですよね。特にZ世代は、年上の世代からするといかにも個性的な存在に思える世代。人は何か理解できないものがあると、カテゴリをつくって理解したい生き物であり、その最たるものが「世代」かもしれません。

しかしじつは、一概に “Z世代だからこうに違いない” とひとくくりにできないのも大きな特徴です。

リクルートワークス研究所主任研究員・古屋星斗氏による好著『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』に、興味深い傾向が紹介されています。それは、アンケートにおいて「どちらともいえない」という「中間回答が減少」しており「二極化している」というもの。

たとえば、以下のようなアンケートには「どちらともいえない」という中間回答が減少しているのだとか。

  • 「自分が所属するコミュニティ(学校、職場、地域など)のルールやしくみに不満がある場合、提案するなど自ら変えるための行動を起こす」
  • 「他人が幸せか否かには関心がない」
  • 「自分ひとり、または誰かひとりが褒められるのは、好きではない」
  • 「親や上司など、周囲の大人や年長者に反抗するのは得がない」
  • 「将来も、地元を離れたくない」

古屋氏はこういったアンケート結果を見て、下記のように総括しています。

全く違う志向をもった者が同世代に”混在している”

(カギカッコ内含む引用元:古屋星斗(2023), 『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』, 日経BP 日本経済新聞出版.)

つまり、“こういう世代だから” と若手を判断することの限界がアンケートから露呈しているということですね。

Z世代は、日本においては「ゆとり教育」が見直された「脱ゆとり世代」でもありますが、「ゆとり教育時に重視された社会貢献や環境、多様性といった教育」もしっかり受けているのも特徴。野村総合研究所の用語解説では「他者は他者、自分は自分として、「自分らしさ」を考え続ける世代」と表現されています。(カギカッコ内引用元:野村総合研究所|Z世代

団塊世代、団塊ジュニア、ミレニアル世代、Z世代……と、世代に対するさまざまな呼び名が生まれている昨今。つい世代のみで人を判断しそうになりますが、そうすると多くのことを見落としてしまいます。現代の価値観にならって、個々人の多様性に目を向け、「◯◯世代」というくくりで人を判断しないことが大切なのかもしれませんね。

並んで座っているZ世代

Z世代の育成・研修の実態

前述のように、Z世代の価値観は二極化しています。そのため、企業でZ世代を育成する際にも一概に「このやり方が正しい」とは言えないのが現状です。

古屋氏も若手の育成について、「Z世代はこうだからこう育成しよう、という平均値的なアプローチは効果が乏しくなってきている」と述べています。(引用元:古屋星斗(2023), 『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』, 日経BP 日本経済新聞出版.)

加えて、働き方改革以降、現代の管理職はますます忙しくなるとともに、若手の育成機会が縮小されているという事態も。古屋氏によれば、OJTの機会が「全くなかった」と回答した若手は、2022年の調査で20.1%。2015年の調査では14.6%だったので、増加傾向にあるとのことです。

加えてOJTだけではなく、業務から離れた知識や経験習得の機会であるOff-JTの機会も減少していることが、データからわかっています。Off-JTの「機会がなかった」と答えた若手は2015年調査の32.1%から2022年は43.3%へ増加。(参照:同上)

たとえば、以前は新入社員に対して数週間に渡って行なわれていた綿密な座学研修プログラムが数日間の簡易的なオリエンテーションに縮小され、「現場で学べ」というスタンスがとられたり、外部研修の機会が減って社員自身が自費でスキルアップを図るケースが増えていたり――こうした経験に覚えがある方は多いのではないでしょうか。

OJT・Off-JTの減少をみると、ここ数年で日本企業の多くは、若手に育成や研修を行なうためのヒト、カネのリソースが急速になくなっていることがわかります。そんな「ないない尽くし」のなか、企業の人事担当者や管理職が実践すべき若手の育成方法のヒントをご紹介しましょう。

Z世代が仕事をしている様子

管理職が若手育成で意識するべきこと1:世代で区切らず “個” を見る

前述のように、「◯◯世代」と十把一絡げに若手を判断するのは早計です。世代ではなく、個として、先入観をもたずに若手と接することをおすすめします。

極端な例になりますが、これを読んでいるあなたが「飲みニケーション」で仕事が円滑に進んだり、指導がうまくいったりした経験があるのであれば、「どうせ、いまどきの若手は飲み会が嫌いだから……」と先入観をもたずに、押しつけない範囲で若手を誘ってみるのもいいでしょう。

データが示すとおり、二極化している傾向があるので「飲み会が好きな若手」もいれば「飲み会が嫌いな若手」も存在するはず。大切なのは、若手の価値観を見極めていく視点をもつことだと言えますね。

Z世代がオフィスで話し合っている様子

管理職が若手育成で意識するべきこと2:コミュニケーションは千差万別

若手の育成に悩んだ際、「やはり1on1(ワンオンワン)が大事なのかもしれない……」と書籍などを読んで試したことがある方も多いのではないでしょうか。

たしかに、コミュニケーションをとる機会が重要なのは間違いありません。しかし、先の古屋氏の書籍では、「20代の若手育成に成功実感を得ているマネジャー」のポイントとして下記が挙げられています。

若手とのコミュニケーション頻度が(その内容を問わず)一定以上ある

(引用元:同上)

筆者は、この「その内容を問わず」という箇所が非常に大切であると感じます。個人的な話になりますが、筆者は、社内の新規事業の責任者をした経験があり、事業の拡大とともに最大で6名のマネージャーの管理職をしておりました。

「毎週コミュニケーションの機会を」と考え、1on1の時間をしっかりと設けていましたが、効果的だと感じたのは2名ほど。多くの場合には、1on1をするのが目的化してしまい、時間を有効に使えていませんでした。そこでわかったことは、「その人に合ったコミュニケーションスタイルがある」ということです。

定期的にコミュニケーションの時間を設けたほうがパフォーマンスが上がるマネージャーもいれば、チャットベースで仕事を進めたほうが適しているマネージャーもいます。あるいは、日報上の最小限のコミュニケーションだけで業務がうまくいくマネージャーも、業務外の軽い立ち話が適しているマネージャーもいました。

大切なのは「内容を問わず」コミュニケーションの機会を一定以上設けながら、その人に合ったコミュニケーションを模索すること。一見泥臭いながらも、これが一番効果的な育成につながるのではないでしょうか。

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ポイントは、「Z世代とひとくくりにしない」こと、「それぞれに合ったコミュニケーション方法を模索する」こと。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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