あなたの周囲に、早く起きて朝時間をのんびりと過ごす習慣があり、仕事もプライベートも順調な人はいませんか?
その人は、朝寝坊な人の何倍も得をしているようです。世界的な成功者の習慣や、専門家の意見、エビデンスを交えて説明しましょう。
1. より創造的になれる
世界一の富豪として知られる、Amazon.com の共同創設者で取締役会長のジェフ・ベゾス氏は、2018年9月13日(当時はCEO)に、ワシントンDCの経済クラブで次のように語ったそうです。
“I like to putter in the mornings”
“My puttering time is very important to me”
(Make It|Amazon's Jeff Bezos shares the daily routine he uses to succeed より、言葉を抜粋して列記。太字は筆者にて施した)
この言葉のなかにある「putter(パター)」とは、“ダラダラと何かをする、無為に過ごす、ブラブラする、うろつく” といった意味をもつ言葉です。そして、ベゾス氏が実際にパタータイムとして朝に行なっていたのは、新聞を読んだり、コーヒーを飲んだり、朝食をとったりなど当たり前のことでした。
つまり、早寝・早起きが習慣のベゾス氏は、何か特別なことをするわけではなく、ただのんびりと過ごす朝の時間が好きで、その時間をとても大切にしているということです。
ビジネスや経済の情報を扱う「Make It(CNBC.com)」内のコラムでは、こうしたベゾス氏の朝時間と、2012年に発表されたカリフォルニア大学サンタバーバラ校ら研究チームの知見を関連づけています。同研究が、「ボンヤリと心をさまよわせながらできる単純なタスク」を行なうことで、より創造的になると発見したからです。
私たちが無意識に近い状態でボンヤリしているとき、脳内ではデフォルトモード・ネットワークが働き、経験などに準じて情報処理等を行なうといいます。
朝のパタータイムがベゾス氏の創造性にひと役買っていること、そして、誰もが少しの早起きで、ベゾス氏と同様の朝時間を過ごせることは間違いありません。リモート勤務も一般的になったいまなら、より実践しやすいのではないでしょうか。
2. その日のパフォーマンスが向上する
活動の「交感神経」と、休息の「副交感神経」で構成される自律神経は、人間の生命活動を支え続けているといいます。私たちの身体が意識せずとも働いているのは、この自律神経のおかげなのだとか。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によれば、朝につくられた自律神経の状態は持続しやすいため、通常より1時間早い起床を習慣づけると、その日1日のパフォーマンスが劇的に向上するそう。余裕があればゆっくりと朝食や準備ができ、自律神経が良好な状態になるからです。自律神経が整えば血液の循環もよくなるので、頭もさえわたるのだとか。
逆に、少しでも長く寝ていたいからとギリギリに起床してしまうと、慌てて準備を行なう羽目になり、交感神経が極端に優位になって、自律神経のバランスが乱れてしまうとのこと。その状態は回復しにくいため、1日中引きずることになると小林氏は言います。
早起きして、ゆったりと準備を行ない、1日を順調に過ごすか。少しの時間をベッドで粘り、バタバタと1日を始め、ずっと不調が続くか……。どちらを選ぶべきかは明白です。
3. 潜在能力を発揮できる
私たちには自覚している「顕在能力」と、自覚していない「潜在能力」があるそうです。早朝、まだ目覚めきっていないボンヤリとした頭で、たとえば――
「今日みなの前で、〇〇部長に『いいアイデアだね』とほめられ、『どこで思いついたんだ?』と聞かれたらいいなぁ。そしたら、あのエピソードを話そう。それを聞いた部長らは、とても感心して……」
――などと、ワクワクしながらイメージトレーニングしてみてください。あなたの潜在能力が活動し始めるかもしれません。
多くのトップアスリートを指導してきたメンタルトレーナーの久瑠あさ美氏によると、早朝は「潜在能力」を引き出す絶好のチャンスなのだとか。意識と無意識の境目にあり、頭のなかがまだ白紙の状態であるからです。その状態で、ワクワクするような今日の出来事を予想してイメージトレーニングすると、モチベーションが高まり、積極的に行動できるとのこと。
快感情でやる気が湧いて、無意識下の潜在能力が発動しやすくなるわけですね。
4. 幸福感が高まる
マサチューセッツ総合病院で指導医を務めるジャクリーン・レイン氏は、アメリカのテレビ番組『TODAY』とのインタビューで、早起きの傾向がある人は、幸福度が高い傾向にあると語ったそうです。逆に夜型の人は、統合失調症やうつ病の発症リスクが高いのだとか。
レイン氏らの研究対象となったのは、遺伝子検査サービスを利用した25万人のアメリカ人と、生体試料の収集・保管施設に登録した45万人のイギリス人。朝型の人々と、夜遅く就寝する人々の2グループに分けて、それぞれのゲノムを解析し、遺伝子・起床時間・健康との関係を調べました。その結果、「朝型」と「良好なメンタルヘルス」の因果関係が明らかになったそうです。
レイン氏は、先述した精神的な病気の発症リスクについて、「体内時計と合わない生活を送ることが大きく関与している」と伝えています。加えて「夜型から朝型への転換で健康に好影響が及ぶでしょう」とのこと。早寝・早起きしない手はありませんね。
(※エクセター大学医学部准教授のマイケル・ウィードン氏らの研究では、遺伝子により朝型か夜型か決まると示されました。本記事は、朝型の遺伝子をもつ人に対する一般的な見解です)
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朝、少しだけ早起きしてのんびり過ごす人が、ものすごく得をしている4つの理由を説明しました。ぜひ参考にしてみてください。
(参考)
Make It|Amazon's Jeff Bezos shares the daily routine he uses to succeed
SAGE Journals|Inspired by Distraction: Mind Wandering Facilitates Creative Incubation
STUDY HACKER|1時間早く起きるだけで心身が整い、頭も冴えわたる。自律神経のメカニズムに沿ったパフォーマンス向上法【小林弘幸『カリスマの言葉』第1回】
PRESIDENT Online|早朝は潜在意識を引き出しやすいまどろみの時間
Women's Health|早起きする人のほうが幸福度が高いって本当?
WIRED.jp|「夜型」の人が努力しても、決して「朝型」になれない:研究結果
東洋経済オンライン|脳の仕組みを知れば一変!集中力を鍛えるコツ
goo辞書|putterの意味
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