目標は行動を変える。一流を目指すなら、まずは徹底的に自分と向き合うべき。

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あなたは、ビジネスパーソンとしての目標をもっているでしょうか? 「何かを成し遂げたい」「一流になりたい」と漠然と思いながらも、明確なビジョンまで描けている方は少ないかもしれませんね。

リクナビNEXTジャーナルが20代のビジネスパーソンを対象に行なった調査結果によると、「具体的なキャリアプランを立てていますか」という質問に対して、約6割もの人が「いいえ」と答えています。 目標を見つけるにはどうすればいいのか? そもそも、なぜ目標をもたねばならないのか? そんな疑問を、グロービスのEdtech推進部門にて「グロービス学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志(とりがた・こうじ)さんに伺いました。

ビジネスパーソンが勉強をすべき理由

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編集部
勉強が本分の学生ならわかるのですが、なぜ社会に出てからも勉強をするべきなのでしょうか。ビジネスパーソンが学び続けるべき理由を教えてください。
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鳥潟さん
現代では、テクノロジーの進化によって仕事の前提がめまぐるしく変わっていきますよね。ついこの前まで普通だった業務プロセスも、テクノロジーによりどんどん代替されてなくなってしまったり、あるいはガラッと変わってしまったり……。

したがって、自主的にスキル開発をしていない人は、変化していく外部環境に対応できなくなってしまうリスクが高いんです。

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編集部
要するに「学び続けなければそもそも食っていけない」時代になったということですか?
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鳥潟さん
そうですね。特に、今20代~30代の方は、現在就いている仕事がこの先もずっと存在しているとは思わないほうがいいですよ。

一昔前までは、1つの職業がなくなるまでにはおよそ3世代くらいかかるイメージだった。つまり祖父母の世代がやっていた職業が、私たち孫の代になって減っていくというイメージですよね。ですから特に大きな自己変革をしなくても、一生同じ仕事を続けることができたんです。

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編集部
現代はそうではないということですか?
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鳥潟さん
今の時代は、おそらく1世代のうちに3回ほどのペースで職業が入れ替わっていきます。つまり、それに合わせて、私たちも常に新しいことを学び、変わり続けていかなければならないということですね。

たとえ大企業にいても、リストラをされる、業態がガラッと変わってしまうなど、いつ何が起こるか本当にわからないですよ。

仮に今やっている仕事がなくなったとしたら、次は自分に何ができるのか? 今会社を辞めたとして、すぐに別の仕事に就けるのか? 自分の市場価値は今どれくらいなのか? 

そういうことを常に考えながら、積極的にスキル開発をしておくべきだと思います。

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思考を紙に書き出せば、目標が見つかる

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編集部
今後の目標やキャリアプランが定まらずに悩んでいる人も多いかと思います。「10年後に自分はどうなっていたいのか?」「自分が本当にやりたい仕事は何か?」といった目標を見つけるには、どうすればいいのでしょうか。
目標は行動を変える8
鳥潟さん
まずは、自分が考えていることを紙に書き出してみるのがいいと思います。

そもそも私たちの思考というものは、とりとめもなく浮かんではすぐに消えてしまう、非常につかみどころのないものです。ただ頭の中で考えているだけでは思考は一向にまとまりません。

自分がどんな考えを胸に秘めているのか、自分自身でもわかっていないことが多いんですよ。
目標は行動を変える9
編集部
書くことによってはじめて、自分の思考を整理できると。
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鳥潟さん
そう。紙に書き出すと、思考が自分の外に出て目に見える状態になります。思考の外在化ですね。すると「ああ、自分はこんなことを考えていたんだ」「この考えは単なる自分のエゴかもな」という具合に、自分の思考を客観的に分析することができるんです。

色々と書いているうちに、自分の中でピンとくるようなキーワードが見つかることも多いですよ。

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編集部
なるほど……。思考を書き出すというのは、具体的にはどんなことを書けばいいのでしょうか?
目標は行動を変える12
鳥潟さん
まずは自分が抱えている不安や、今後やりたいこと人に言われて気になったことなどを「問い」として立て、その問いに対する自分なりの考えを書いていくのがいいと思います。
目標は行動を変える13
編集部
たとえば「10年後にどうなっていたいか?」といった、自分が今解決したいテーマに対して答えていくわけですね。
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鳥潟さん
そうですね。ただ、すぐに答えを書き進められる人は、少ないかもしれません。

どうしても書けない場合には、まず自分の過去の経験を書き出してみるのがオススメです。プラス・マイナスどちらの出来事でも構いません。今まで生きてきて嬉しかったことや、反対に悲しかったこと・悔しかったことなど、とにかく感情が大きく動いたときの経験を思い出して書いてみてください。

目標は行動を変える15
編集部
そうすると、何がわかるのでしょうか?
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鳥潟さん
感情が動いた出来事を掘り下げていくと、必ずその裏には自分の「価値観」が見つかります。

たとえば「みんなで○○を成し遂げたのが楽しかった」という経験が見つかったとします。するとそこから「自分は仲間とチームを組んで何かやるのが好きなんだ」という価値観が浮き彫りになりますよね。

同様に「あのとき○○ができなくて悔しかった」「裏切られて悲しかった」などのマイナスな経験も、掘り下げていけば「自分は何が嫌なのか」という価値観に突き当たります。

ですから、ただ出来事を書き出して終わるのではあまり意味がありません。あくまでも、出来事の裏にある自分の価値観まで掘り下げることが重要なんです。

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編集部
文章を書くのが苦手な人はどうすればいいでしょうか?
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鳥潟さん
人によってやり方は様々でいいと思いますよ。文章が苦手なら絵に描いてみたりとか、キーワードだけ書き連ねてみたりとか。とにかく思考を外在化できるなら、自分がやりやすい方法で構わないと思います。
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編集部
自分の得意な方法でいいんですね! 手を出しやすそうです。

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目標が決まると行動が変わる

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編集部
鳥潟さん自身、「思考を書き出す」という方法は重宝しているそうですね。
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鳥潟さん
今でも年に何度か書くんですよ。新規事業に踏み出すかどうかといった、大きな判断をする局面になると。
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編集部
初めて起業をした際にも「思考を書き出す」プロセスを経て決断に至ったのだとか。
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鳥潟さん
そうですね。私が起業したのは23歳、まだ社会人として2年目でした。 だから「起業しようかどうか迷っているんです」と先輩たちに相談をして回ると、ほぼ100%「やめとけ」と言われてしまいました(笑)経験も全然ないし、さすがにまだ早すぎるじゃないかと。周りの人にはそういった反対意見しか言われないので、当時は悩んでいました。

先輩や同僚たちの意見を一通り聞き終えたあとで、私はパソコンに向かい「Word(文書作成ソフト)」の中に自分の気持ちをぜんぶ書いてみることにしたんです。「自分はなぜ起業をしようとしているのか?」「先輩はこう言ったけれど、自分は違うと思う」そんな具合に、自分の思いをひたすら吐き出していった。2~3時間はぶっ通しで書いていましたね。

そうやって書き終わったあと、改めて文章を読み返しました。すると、自分の気持ちはどう考えても起業する方向に向いているということがはっきりした。「本当は、自分は何がしたいのか?」ということに真摯に向き合った結果、答えが明らかになったんです。

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編集部
具体的にはどんな思いが起業の動機となったのでしょうか?
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鳥潟さん
新しいことにチャレンジしたいという思いが強かったですね。自分という人間がどこまでやれるのか試してみたかった。それと、当時一緒に勉強会をやっていた仲間と何かやりたい、という気持ちも大きかったです。
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編集部
事業のビジョンはすでにもっていたんですか?
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鳥潟さん
いいえ。具体的な事業戦略まではまだ決まっていませんでしたね。ただ、「今一歩を踏み出すとしたら何ができるか」という自分のエモーショナルな思いだけをとにかく書いていました。
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編集部
ほかの人からの反対意見に対しては、どのように折り合いをつけたのでしょうか?
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鳥潟さん
1つの意見として受け入れながらも「では、それに対して自分はどう思うのか?」ということは冷静に考えました。たとえば、Aさんが「起業は無理だよ」と言ってきたとする。まずは「たしかに一理あるな」と受け入れた上で、「ではできないから諦めるのか」「それでもやりたいのか」という最終的な判断は自分でする、という感じでした。
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編集部
そうして目標が定まると、どんなメリットが期待できるのでしょうか?
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鳥潟さん
目標が見つかると、何よりも行動が変わります。

たとえば仕事でチャンスが回ってきたとき、目標が明確であれば「やります!」と迷いなく手を挙げられる。でもやりたいことがあやふやな状態だと、つい躊躇してしまうかもしれませんよね。

また、目標の有無は、時間の使い方にも関わってきます。一流になるためには1万時間の努力が必要だと言われている。1万時間というと、1日8時間として約3年。仕事以外の時間から1日2~3時間を切り出すとしても約10年。つまり、目の前の仕事と並行しながらほかのスキルを習得することだって、やろうと思えばできるんです。

でもそれは、明確な目的をもっていなければ、なかなか続かないことですよね。

目標は行動を変える32
編集部
明確な目標がなければ、行動も努力も中途半端になってしまうと。
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鳥潟さん
与えられた仕事をやるだけでいいなら、目標の有無はそれほど関係ないと思うんですよ。しかし「自分のキャリアをステップアップさせたい」という意志があるならば、話は別です。ざっくりとした方向感だけでもいいので、目標はなるべく早めに見つけるべきだと思いますね。

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自分の思いを紙に書き出す機会はあまりないと思います。自分は何をしたいんだろう? と悩んでいる方は、一度徹底的に自分と向き合い、頭の中にくすぶっている思いをすべて吐き出す時間をもってみることでブレイクスルーを起こせるかもしれません。 時間やチャンスを浪費しないために、目標やキャリアプランについては早い段階から考えておきましょう。

【「グロービス学び放題」を詳しく知りたい方はこちらhttps://hodai.globis.co.jp/

【鳥潟幸志さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「論理的思考力」と「経営の基礎知識」を身につければ、これからの時代を生き残れる。

(参考)
リクナビNEXTジャーナル|キャリアプランは立てている? 先輩社会人のキャリアに関する意識調査

【プロフィール】
鳥潟幸志(とりがた・こうじ)
埼玉大学教育学部卒業 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了 学位:MBA サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。 現在は、社内のEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行う。

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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