「朝すっきり起きられず、だるい……」
「朝から体が重く、やる気が出ない……」
このように、朝の目覚めがイマイチだった日は、日中の仕事や勉強もなかなか捗らないものですよね。なんだか頭が働かないな……そんな状態で1日を終えたことのある人も多いのではないでしょうか。
じつは筆者もそのひとり。目覚めの悪い朝を終わらせ、気持ちのいい朝を迎えるためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、朝や夜の過ごし方を振り返り、「10のしないこと」を考えてみました。
「最近、頭が働かない……」という人は注意。「朝」は脳の活動維持の原点になる
脳神経外科医の築山節氏によれば、「頭が働かない」のは、脳機能そのものが低下していることのほかに、単に “脳の活動が安定していない” ことに原因がある場合も少なくないのだそう。そして、そういう人の多くは生活リズムに問題があるのだとか。なかでも、「朝」の過ごし方に問題を抱えていることが多いのだといいます。
朝、ある程度一定の時間に起き、太陽の光を浴びる。脳がもっとも活発に活動する時間帯に仕事のピークを合わせ、夜はできるだけ早く寝る。そうやって生活のリズムを安定させると、脳の活動も安定してきます。それが誰にとっても、まず重要なことです。
(引用元:築山節(2006),『脳が冴える15の習慣: 記憶・集中・思考力を高める』, 生活人新書.)
朝の重要性を唱えるのは、築山氏だけではありません。作業療法士の菅原洋平氏は、「朝を制すれば、その後はひとりでにうまくいく」といい、睡眠ストレスクリニック院長・中村真樹氏は「一日の計は “起床” にあり」と述べています。
脳の活動を維持するための原点は「朝」にあるのですね。
目覚めの悪い朝を終わらせるための「10のしないこと」
では、朝の目覚めが悪くなってしまうのはなぜなのでしょうか。そこには必ず何らかの原因があり、前日の夕方・夜や当日の朝に「してはいけないこと」をしてしまっているはずです。
そこで、目覚めの悪い朝を終わらせるための「10のしないこと」をリストアップしてみました。
朝の目覚めを悪くするさまざまな要因
脳生理学者の有田秀穂氏によれば、太陽光を浴びることで脳内に分泌される「セロトニン」は、目覚めのスイッチを押す重要な存在とのこと。
セロトニンは、朝の心地よい目覚めをもたらし、心をポジティブにし、自律神経を整え、姿勢や顔の表情を引き締め、身体の痛みを調整する、といった健康的な生活に欠かせない働きをする。
(引用元:ダ・ヴィンチニュース|幸せを感じないのは太陽の浴び方が間違っているせい? 不調をリセットする生活習慣)
セロトニン分泌には、目の網膜を通して太陽光の刺激を受けることが大切とのことなので、朝に布団の中でいつまでもゴロゴロするのは控えたほうがよいでしょう。朝が苦手な人にとっては至福の時間かもしれませんが、その後のことを考えると、明らかにしないほうがよさそうですよね。
同じ理由から、暗い部屋での二度寝もNGです。ただし、作業療法士・菅原洋平氏によれば、明るい部屋での二度寝ならかまわないとのこと。光を浴びながらの二度寝は、それほど長く眠ることができないため、自然と起きられるそうです。
また、個人的な話で恐縮ですが、目覚めの悪さから、筆者には「ポットのお湯が沸くまで座って待とう」といったふうに、ほんの一瞬でも座ってしまう癖があります。しかし、医学博士の吉田たかよし氏によると、立っているだけでも脳のメインスイッチである脳幹網様体が刺激されて脳全体の活動が活発になるとのこと。脳の活性化のためにも、朝の座り癖はなくしたほうがよさそうです。
そして、朝の目覚めを良くするには、夜の過ごし方も重要になってきます。
聖マリアンナ医科大学名誉教授の長谷川和夫氏によると、夕食後すぐに眠っても熟眠は得られないのだそう。夕食は就寝1時間前、できれば3~4時間前までに済ませておくのが理想的ですよ。一方で、空腹も問題です。飢餓状態の情報が脳幹網様体を通って大脳に伝えられると、意識の覚醒レベルを高めて睡眠を妨げてしまうとのこと。
さらに、大脳と眠りの関係から、「寝る前に大脳に刺激を与えることを極力避けるべき」と長谷川氏はいいます。そのためには、夕食後はのんびり過ごすのが理想的なのだそう。夕食後は、仕事や今後のことについてはあまり深刻に考えず、オフモードに入ったほうがよさそうですね。
完璧は求めなくていい。できることから少しずつ自分を変えていこう
目覚めの悪い朝を終わらせるための「10のしないこと」をリストアップしてみましたが、決して完璧を求める必要はありません。
目覚めのいい朝を迎えるために必要なこととして、一般的には「起床時間を統一すべき」「スヌーズ機能は使わないべき」「二度寝はしないべき」といった、朝が苦手な人には厳しいルールがよく挙げられます。しかし実際には、先述のように、明るい部屋での二度寝ならば大丈夫ですし、自治医科大学講師の西多昌規氏によれば、1回限定であればスヌーズ機能を使うのも問題ないとのこと。これだけでも心理的な負担は軽くなりますよね。
また、休日の寝だめについて、睡眠環境プランナーの三橋美穂氏は「平日より2時間以上寝続けてしまうと、体内時計が乱れて時差ボケのような状態になる」といいます。しかし見方を変えれば、2時間以内ならば、寝だめもある程度は許容されるということ。休日に少しぐらい起床時間がずれたからといって、悲観する必要はないようです。
目覚めの悪い朝を終わらせるために、劇的な変化を起こさなければいけないというわけではありません。「すべきこと」という厳しさとは対照的な「しないこと」のリストなのですから、「今日はこれをしないようにしておこうか」ぐらいの軽い気持ちで、少しずつ自分を変えていきましょう。
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朝が苦手で、いつも目覚めが悪いという方は、ぜひ今回の「しないことリスト」を参考にしてみてください。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
(参考)
築山節(2006),『脳が冴える15の習慣: 記憶・集中・思考力を高める』, 生活人新書.
菅原洋平(2016),『仕事ができる人の脳にいい24時間の使い方』, フォレスト出版.
中村真樹(2017),『仕事が冴える「眠活法」: 疲れを「リセット」する脳を「活性化」する』, 三笠書房.
ダ・ヴィンチニュース|幸せを感じないのは太陽の浴び方が間違っているせい? 不調をリセットする生活習慣
吉田たかよし(2019),『「ついつい先送りしてしまう」がなくなる本』, 青春文庫.
長谷川和夫(2009),『熟眠の本―なかなか眠れない人のための』, グラフ社.
NIKKEI STYLE|朝つらい、だるい…を解消 スッキリ起きる14の方法
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【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。