リスキリングが浸透しないのは「社員が○○を嫌う」から。社員に「学びたい」と思わせる2つのヒント

笑顔で話す3人のビジネスパーソン

2022年に岸田内閣が「骨太の方針」において、重点投資分野の第一に「人への投資」を掲げてから、「リスキリング」という言葉が注目されるようになりました。

リスキリングとは、新たな分野や職務にて新しいスキルを習得すること。このリスキリングについて、「必要性はわかってはいるものの、社内にうまく浸透させることができない……」と悩んでいる、企業の研修担当者の方は多いかもしれません。

  • 社を挙げてリスキリングに取り組んでいるが、成果が出ない
  • さまざまな施策を行なっているが、社員が積極的に学ぼうとしてくれない
  • リスキリングの社内担当を任されたが、社員のマインドをどう変えていいのかわからない

このようにお困りの方へ、この記事ではリスキリングが浸透しない原因と対処法をお伝えします。この記事を読めば、社員はなぜ学ぼうとしてくれないのか、どうすれば彼らに学ぼうという意識をもたせられるのか、わかりますよ。

 

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

(参考)

パーソル総合研究所|グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)
経済産業省|関連データ・政策集
Schoo|スクーがメルペイと共同でリスキリングを支援する「みんなのリスキリング」を開始
小林祐児(2023),『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』,光文社.

なぜリスキリングはハードルが高いのか

企業やビジネスパーソン個人にとって、なぜリスキリングはハードルが高いのでしょうか。その要因をひもとくキーワードとして、下記が挙げられます。

  • 長時間労働
  • “職業訓練” 的なイメージ
  • 終身雇用制度
  • 個人の意識
  • 学びのための資金

長時間労働による学習時間確保の問題

日本は諸外国と比較して労働時間が長い傾向にあります。働き方改革で改善されつつあるとは言われますが、労働時間や通勤時間が長いという問題は依然として存在。そのため、学習時間を確保することが現実的でない人が多くいるのです。

職業訓練に対するイメージ

リスキリングとは新たな分野や職務に対して新しいスキルを身につけることを意味するので、世間では「リスキリング=職業訓練」というイメージが根強いよう。

職業訓練というと、低所得者や失業者が受けるものととらえられることも。このことが、リスキリングが敬遠される一因となっています。

終身雇用制度の影響

終身雇用制度も、リスキリングが浸透しない要因のひとつ。近年では見直されている企業も多くありますが、依然としてこの制度が維持されている企業も少なくありません。

終身雇用制度では、ジョブローテーションはあるものの、既存のスキルを深化させることが重視されます。そのため、終身雇用を前提とした企業にとって、社員に新たな分野でスキルを身につけさせる優先順位は低いのです。

個人の “学ぶ意識” の欠如

パーソル総合研究所が発表した「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」のレポートには、日本人は世界一学ばないということを示す驚くべきデータが記されています。

同調査によれば、「勤務先以外での学習や自己啓発活動」を「とくに何も行っていない」人の割合が、世界平均が18.0%であるのに対して、日本では52.6%にも及びます。つまり、これは日本の社会人のおよそ半分は、まったく学習や自己啓発に取り組んでいないことを表しているのです。

日本に次いで割合が大きかったオーストラリアでは28.6%ですので、日本人は世界でも突出した “学ばない人” であることがわかります(「何も行っていない」人の割合が最も低いインドでは3.2%です)。

学びのための資金不足

学習に費やす資金の問題は、企業と個人のどちらにも見られます。

  • 企業
    経済産業省のデータ『人材投資(OJT以外)の国際比較(GDP比)』によると、日本は2010~2014年において、GDP比のわずか0.1%しか人材投資をしていません。しかも、1995~1999年における0.41%から年々縮小し続けています。
    アメリカ2.08%、フランス1.78%、ドイツ1.2%、イタリア1.09%、イギリス1.06%に比べると、いかに低い水準であるかがよくわかります。(参照:経済産業省|関連データ・政策集

  • 個人
    また個人では、現実的な問題として、リスキリングにかけるお金がないというデータも。2023年にメルペイが実施した調査で、「スキルアップを実践したくても実践できない理由」として、「お金に余裕がない」と答えた人が73.6%にものぼったそうです。(参照:Schoo|スクーがメルペイと共同でリスキリングを支援する「みんなのリスキリング」を開始

以上のことから、日本企業にリスキリングを浸透させるのは、かなり難易度が高いことだと言えます。企業と個人、双方で解決すべき問題は山積みですが、企業も個人の集合。ここからは、なぜ人々がリスキリングという「変化」を受け入れられないのか、心理的な面からも見ていきましょう。

考えるビジネスパーソン

リスキリングが浸透しない理由と対処法

「変化をためらう意識」がリスキリングの浸透を阻む

ビジネスパーソンが新しいスキルを獲得することは、そのスキルをもって業務をより効率的にこなしたり、新しい業務領域に挑戦したりすることにつながります。つまり、リスキリングは、会社のなかで「変化」を起こすことに直結しているのです。

しかし、その変化を社員自身がためらってしまうメカニズムがあるようです。パーソル総合研究所の小林祐児氏はそれを「変化抑制意識」と呼び、こう説明します。

〈変化抑制意識〉とは、組織の中で業務上の変化を起こすことを「負荷=コスト」として捉えてしまい、自発的な変化を起こすことを避けようとする意識のこと。

(引用元:小林祐児(2023),『リスキングは経営課題』, 光文社.)

つまり、こう変えたほうがいいとわかっているけれど、変化を「面倒」と感じるために、自ら変化を起こすことを避けてしまうのです。

みなさんも働くなかで、下記のように感じた経験が少なからずあるのではないでしょうか?

  • こうすれば業務が効率化するとわかっているけど、導入の提案、上長への承認、部署内へのメンバーの伝達、研修、育成などに時間がかかりそうだな……。
  • たぶんこの施策は有効ではないけれど、長らく実施しているし、前例踏襲でいいかな?
  • 自分だけスキルを上げても、会社の秩序を壊してしまうのではないのか……。

社員のなかでこういった心理が働くために、リスキリングという「変化」を起こすことが難しいのです。

社員の意識を変えるふたつの方法

この変化抑制意識への対処として、小林氏は以下ふたつの施策を提案しています。(以下、同上書籍よりまとめた)

  • 「変化報酬」型の施策
    簡単に言えば、具体的な報酬を用意すること。たとえば、ポスト、金銭、経験です。リスキリングをして新しいスキルを身につけた人に相応の役職を与えたり、インセンティブを与えたりすることを指します。
    これにより、変化を起こしてもコストでしかない……という意識を打ち消すことができます。

  • 「挑戦共有」型の施策
    挑戦やチャレンジ、変化を起こすことを組織全体で目標や信念として共有することです。これはトップからの発信でもよいですし、人事部からの発信でも問題ありません。こういったメッセージを発信して、「変化抑制意識」を生じさせにくくします。

まとめると、報酬を用意し、挑戦を組織全体で共有することが処方箋だということですね。

提案する人

社員の意識を変えようとする際の注意点

社員のリスキリングを促進するため、「報酬を用意する」「挑戦を会社全体の目標とする」というふたつの改善方法を上記でご紹介しました。

最後に、これらを実践するにあたっての注意点をお伝えします。

  • 報酬は長続きしない
    報酬に値するものは持続性がない点に注意しましょう。誰もが報酬としてポストや金銭を与えられると嬉しいものですが、ポストや金銭にもいつかは慣れてしまいます。報酬だけに頼るのはやめましょう
    先にリスキリングに取り組んだ社員を「モデルケース」とし、後続の社員たちの「変化」を促し続けたいもの。その一材料として報酬を活用するといいかもしれません。

  • 組織全体へ繰り返し共有する
    これまで変化しなかった社員を、すぐに変えることは難しいものです。トップやリーダーが、「なぜ挑戦すること、変化を起こすことが必要なのか」を繰り返し伝えるようにしましょう。

短期的には報酬をうまく使い、中長期的には組織全体への共有を辛抱強く行なっていく――この両輪で、社員の意識を変えていきましょう。

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この記事では、リスキリングが浸透しない背景を分析し、社員が変化をためらう「変化抑制意識」を改善するふたつの方法をご紹介しました。

「社内担当としてリスキリングを目指しているけれど、結果がともなわない」とお悩みの方は、まず今回ご紹介した改善方法を取り入れてみてください。自社の社員が「学ばない日本人」を脱する、ファーストステップとなるはずです。

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