「資格取得のために勉強したいけど、仕事との両立でつまずいている」
「時間ばかりかかって、勉強が進まない……」
このように悩むビジネスパーソンは多いものです。働きながら学び続けるには、限られた時間の使い方が課題。日々の仕事に追われて時間に余裕がないなかでも勉強の成果を挙げるには、やるべきことの取捨選択が必須です。
東京大学出身の資格・勉強法アドバイザーである鈴木秀明氏も、勉強は「『手を抜いてもいいところは適度に手を抜いて、真に注力すべきところにエネルギーを注ぐ』というスタンスで臨む」べきだと述べます。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|東大生のなかで「すごい!」と言われる人たちの「手の抜き方」とは?)
この記事では、どう取捨選択すれば仕事と勉強を両立できるのかを紹介していきます。ぜひ日々の勉強にお役立てください。
【ライタープロフィール】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格を取得。現在は国際中医師合格を目指し毎日勉強している。勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。
ダイヤモンド・オンライン|東大生のなかで「すごい!」と言われる人たちの「手の抜き方」とは?
並木秀陸(2016),『捨てる勉強法』,明日香出版社.
プレジデントオンライン|「勉強する=考える」は大間違い…現役東大生が効率的な学習のため最初に削った"ある時間"
ベネッセ教育情報サイト|考え込んで時間ばかりが過ぎてしまいます[中学受験]
1.「目的」を優先し、「範囲外」は捨てる
勉強するにあたり、ひとつのことを完璧に理解してから次に進むというやり方にとらわれていませんか? 専門家になるのであれば話は別ですが、すべてを完全に理解しようとしていては、いくら時間があっても足りません。
宅建試験対策研修などの事業を展開するナルミナスキャリア株式会社代表で、講師も務める並木秀陸氏は、「学んでいることがわかるまで先に進まないというふうに考えてしまうと、いつまでもすべてを学び終えることなどでき」ないと話します。(カギカッコ内引用元:並木秀陸(2016),『捨てる勉強法』,明日香出版社.)
筆者も資格の勉強の際、理解を深めるために試験範囲外まで勉強したところ、案の定、先に進むのに時間がかかってしまったことがありました。試験が迫るなか、「この勉強の仕方では間に合わない……」と焦った日も。限られた時間で勉強するには、取捨選択の必要があると実感する出来事でした。
では、どう取捨選択すればいいのでしょうか。
並木氏いわく、資格の勉強は「試験合格に必要なレベルと、自分の持っている能力とを比べて、足りないピースを探して、はめていく作業」なのだそう。(カギカッコ内引用元:同上)
合格という目的のために必要なレベルに達していない部分を優先して勉強し、それ以外は捨てるのです。
これは、資格試験以外の勉強でも同様だと言えるはず。筆者がそのことを身をもって感じたエピソードを紹介しましょう。
ピラティス講師でもある筆者は、レッスンにおいてわかりやすく伝えるスキルを向上させたいと考えており、日頃からコミュニケーションに関する本を読んで学んでいます。
しかし、本の内容は、説得の方法や議論の方法など多岐に渡るもの。筆者に必要なのはあくまでわかりやすく伝える方法であって、説得や議論の方法ではありません。
そこであるとき、本をすべて読むのではなく、必要な部分を優先して読み進めてみたのです。すると、すぐ実践に入ることができ、効率的に学べました。説得や議論など、目的以外の部分は、今後必要になった場合に読み返すつもりです。
納得いくまで勉強をすると充実した気持ちにはなれますが、仕事と勉強の両立を考えると、現実的ではありません。時間が限られているのであれば、勉強の目的を明確にし、そこから逸れないための取捨選択が肝要なのです。
2.「理解」を優先し、「考える時間」は捨てる
勉強していてわからない箇所に遭遇したとき、答えを導き出せるまで悩み続けていませんか? 自分の頭で考えるのはもちろん大切ですが、仕事と勉強を両立するには時間配分も大切。少ない時間で効率よく勉強を進めていくならば、わからない問題は先に解答・解説を見るのも方法のひとつです。
『東大大全』などの著書をもち、全国で勉強法の講演を行なう現役東大生の布施川天馬氏は、「調べれば済むような問題をいつまでも腕組みして考え続ける」のは「時間の無駄」だとし、次のように語ります。
効率よく考えるためには、「答えを出すための道具をもっているか」を確かめなくてはいけません。たとえば、2次方程式の解を求めなさいと言われても、「2次方程式の解の公式」を知らなければ、到底無理な話でしょう。(中略)
だからこそ、考え始める前に「自分は何がわかっていないのか」をしっかり確認しなくてはいけません。
(カギカッコおよび枠内引用元:プレジデントオンライン|「勉強する=考える」は大間違い…現役東大生が効率的な学習のため最初に削った"ある時間" ※太字は編集部が施した)
筆者の過去の勉強を振り返ってみても、暗記していなければ答えられない問題であるにもかかわらず、「どうにかして答えを導き出せないか?」と考え込んでしまった経験が何度もあります。この場合、布施川氏の言う答えを出すための道具とは、暗記した知識です。いまになってみると「暗記できていないのなら潔く答えを見たほうが、早く理解でき、暗記もはかどったのでは……」と感じます。
とはいえ、「じっくり考えるより前に解答を見てしまって、本当に身につくのだろうか……」と不安になる人もいるでしょう。その点について、教材の研究者で教務コンサルタントの小泉浩明氏は、以下のように述べています。
一定時間真剣に考えたあとは問題意識を持っていますから、解答・解説を読んでも、解くための「着目点」や「方針」をはっきり理解できるのです。「着目点」や「方針」が完全に理解できれば、次に同じような問題が出ても必ず答えを導くことができると思います。
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|考え込んで時間ばかりが過ぎてしまいます[中学受験] ※太字は編集部が施した)
試しに筆者も、資格の勉強をするなかで、少し考えてもわからない問題は解答を見るようにしてみたところ、効率よく理解が進むようになりました。そして、解答を見たあとは、「ほかの選択肢はどのような点で誤りなのか?」「なぜ、その答えになるのか?」などと考察。すると、その問題を解くのに必要な着眼点が明らかになり、類似問題が出たときにも答えを導き出せるようになったのです。悩む時間が減り、勉強がはかどるようになりましたよ。
わからない問題につまずいて時間がかかってしまうならば、解答を見てから考えるように変えてみてはいかがでしょうか。
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仕事と勉強を両立する秘訣は、取捨選択です。何を優先すべきなのかを明確にし、それ以外のところは適度に手を抜いて、効率よく勉強するための参考にしてみてくださいね。