睡眠学者が提唱「快眠メソッド」を1週間やってみたら、仕事の生産性まで上がった話。

仕事中、眠そうにあくびをする女性

誰よりも勉強して、誰よりも真摯に取り組んでいるのに、どうも仕事がうまくいかない……。

そんなときは、まずご自身の「睡眠」から見直してみるといいかもしれません。睡眠が不十分だと作業効率が下がるだけではなく、ネガティブ思考になってしまうのだとか。その状態で頑張っても空回りしそうです。

じつは筆者も睡眠不足気味な生活を送っているひとり。そこで今回は、専門家監修の快眠メソッドを参考にした習慣を取り入れ、眠気やスッキリしない頭、感情的なバイアスに邪魔されることなく、生産性を上げられるかどうか数値で確かめてみました。

睡眠不足は感情処理に悪影響

睡眠に関わる最新研究をひとつ紹介しましょう。2020年4月7日に「Journal of Sleep Research」で公開された伊ラクイラ大学の研究では、睡眠が不十分だと、感情処理に悪影響が及ぶとわかったそうです。

研究では、まずはじめに42人の参加者が「通常の睡眠で5泊」したあとテストを行いました。さらに続けて、同じ参加者が「1日『5時間』という睡眠制限を設けて5泊」したあとにもテストを行なったそうです。

テストは、参加者があらゆるタイプの画像を見て、感情価(ポジティブ⇔ニュートラル⇔ネガティブ)と、覚醒度(興奮性⇔中間⇔沈静性)を判断するというもので、朝(午前中)に行われました。

その結果、【不快な画像】については「通常の睡眠」でも「睡眠制限5時間」でも差はありませんでしたが、【楽しくて中立的な画像】については、「睡眠制限5時間」のほうが、よりネガティブな受け止め方をしたそう。つまり、睡眠が不十分な状態が続くと、否定的な感情の偏りが生じると明らかになったわけです。

寝不足で不機嫌そうなビジネスパーソン。ネガティブな感情に偏っている様子

睡眠不足の経済損失は約15兆円

また、睡眠が不十分だと頭がボンヤリして眠気も襲ってくるので、仕事や勉強の作業効率を下げてしまいます。

久留米大学学長の内村直尚氏がリーダーを務める「目覚め方改革プロジェクト」によれば、OECD経済協力開発機構に加盟する28ヶ国のなかで、日本人女性は最も睡眠時間が短いそうです。日本人男性も3番目に短いとのこと。

米シンクタンク・ランド研究所の試算では、睡眠不足による日本の経済的な損失は、なんと約15兆円にも上るのだとか。

睡眠不足で思わず寝てしまったビジネスパーソン

心と体のリズムを整え、リセットする方法

研究による実証やシンクタンクの試算などから、不十分な睡眠が心身と経済に悪影響を及ぼすとわかりました。ここで改めて、睡眠にとても大切なことを確認しましょう。

明治薬科大学准教授で睡眠に詳しい駒田陽子氏が監修した「スッキリ目覚めのメソッド10ヶ条」を参考に、ビジネスパーソンを意識してまとめました。

ビジネスパーソンの快眠メソッド
  1. 仕事日も休日も起床時間を変えない
  2. 8時間睡眠が目標、最低でも6時間は寝る
  3. 起きたらまずは日光を浴びて体内時計リセット
  4. 朝ご飯をきちんと食べて体内時計リセット
  5. バランスのいい食事(野菜多め、肉魚もしっかり、米やパンは少なめ)をとる
  6. 歩く時間や階段昇降を増やすなど、体を動かす意識をもつ
  7. 仕事の合間のおやつなど、日常的で自分に合ったストレス解消法をもつ
  8. お酒は少したしなむ程度で、深酒はしない
  9. 昼食後は10~20分昼寝、あるいは座ったまま目を閉じる
  10. 夜はゆっくり湯船につかってリラックス

実際に、これらを日々取り入れていく努力をしてみようと思います。加えて今回は、この快眠メソッドの実践で、本当に生産性が上がっていくかどうかも確認します!

気持ちよく目覚めた女性

「生産性」が上がるかどうか確認してみる

OECDの労働生産性の計算式は、「労働生産性=アウトプット(GDP)÷インプット(労働投入量/労働者数×労働時間)」とのこと。

ライターである筆者の場合は、「情報収集や構成案出しを15」「執筆を30」「図解やイラストなどの作成を15」「編集を10」「大きな加筆修正を含む編集を20」「簡単な修正・訂正などを5」「その他の業務を5」といった具合に、それぞれのタスクの性質やボリュームを考慮して数字を振り分け、1日ごとに合算してアウトプットの数値を出します。

それに対し、インプットは1人×労働時間です。

【例1】
  • 「執筆(30)」と「編集(10)」を行なった場合はアウトプットが40
  • インプットの労働時間が8時間の場合
  • 40÷8=5がその日の生産性を示す数値
【例2】
  • 「図解作成(15)」と「その他の業務(5)」を行なった場合はアウトプット20
  • インプットの労働時間が4時間の場合
  • 20÷4=5がその日の生産性を示す数値
【例3】
  • 「執筆(30)」が6割までしか終わらなかった場合
  • 執筆単体のアウトプットは18(30×0.6)

かなり大雑把ではありますが、こうして出した数値の推移を見ていけば、睡眠の改善が生産性に影響するかどうか多少は見えてくるはず。

こうして、実践してみました。

生産性をラフなグラフで示すビジネスパーソン

快眠メソッドを実践してみた結果

次のグラフは、筆者が実際に快眠メソッドを取り入れる努力をした1週間(仕事日)の、生産性の推移です。

快眠メソッド取り入れる努力をした1週間(仕事日)の生産性の推移

ものすごーく本音をいえば、7日目を記録したあとの印象は「あれ? この程度の変化なの?」でした。なんせこの試みを始めてからというもの、右肩上がりの推移だけを想像して意欲を燃やしていましたから。

しかし、冷静になってみると、確かに2日目から生産性が上昇していき、3日目以降は多少の上がり下がりはあるものの、2日目以前の数値に近づくことはありませんでした。しかも、この変化がたった1週間で起こったのですから、よく考えたらすごいことかもしれません。

詳細を述べると、もともと習慣的に行なわれていた快眠メソッドはこれだけありました。

  • 起きたら日光を浴びる
  • 朝ご飯をきちんと食べる
  • バランスのいい食事
  • 体を動かす意識をもつ
  • 深酒しない
  • 湯船につかってリラックス

したがって、今回加わった習慣は次のとおり。どの程度実行できたかも記載します。

  • 休日も起床時間を変えない→完全ではないがいつもよりは差が少ない
  • 8時間睡眠、最低でも6時間は寝る→最高が6時間、8時間睡眠は皆無
  • ストレス解消法をもつ→ご褒美おやつと、完璧主義的な頑張りの放棄
  • 昼食後は10~20分昼寝→3~5分くらい目を閉じた程度

家族の早朝時間差出勤や、高齢の身内のサポートなどで、どうしても寝る時間が遅くて朝が早い状況を避けられないなかの、かなり中途半端な実践――つまり、不完全ながら快眠メソッドをどうにか取り入れていく努力をしただけで、多少なりとも生産性が上がったわけです。

ぜひぜひ、みなさんも今日から始めてみてください!

***
快眠メソッドと実践、その結果を紹介しました。先述のとおり「グラフが右肩上がりになりますように」と思いながら実践すると、モチベーションが上がるので、おおよその数字でも推移を見ていくのは非常におすすめです。

(参考)
Wiley|Restricting Sleep May Affect Emotional Reactions 
Wiley Online Library|Journal of Sleep Research|The impact of five nights of sleep restriction on emotional reactivity 
本間喜子(2014),「単語の感情価と覚醒度にもとづいた単語刺激の作成」, 愛知工業大学, 愛知工業大学研究報告, 第49号, pp.13-24.  
目覚め方改革プロジェクト|現代日本人の睡眠の実態~睡眠時間や取り方など、睡眠不足が目立つ~  
目覚め方改革プロジェクト|スッキリ目覚めのメソッド10ヶ条  
働き方改革ラボ|日本の労働生産性は、なぜOECDで21位と低迷しているのか?/田口佳孝氏
オムロン ヘルスケア|はじめよう!ヘルシーライフ|紫外線の功罪

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