「なぜか伸びていかない人」の考え方には、3つの “決定的な誤り” がある。

全然成長できない人が変えるべき3つの思考01

「あの人は持ってるものが違うから……」
デキる人を見て、そんな言葉で諦めていませんか?

たしかにデキる人は、才能に恵まれて仕事への情熱もある “手の届かない存在” のように思えるかもしれません。でもよく考えてみれば、そのデキる人は生まれた瞬間からデキる人だったわけではないはず。自分でもがきながら成長を続け、今の「デキる人」という地位を確立したのです。

「成長し続けられる人」と「成長が止まっている人」には、普段の思考に大きな違いがあります。成長が止まっている人が今すぐ改善するべき3つのNGポイントを指摘しましょう。デキる人に近づいていきましょう!

1. 「地頭は鍛えられない」と思い込んでいる

デキる人を「あの人は地頭が良いから」と結論づけてしまう人は少なくないはず。しかし、実際のところ、この「地頭」という言葉は何を表しているのでしょうか。

ビジネスコンサルタントの細谷功氏は、著作『入門『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法』の中で、「地頭」を「知識を詰め込んだのではなく、柔軟な発想ができて新しい分野にも短期間で対応していく力を持っていること」と定義し、「地頭力」を以下の3つの要素に分解しています。

  • 「結論から」考える仮説思考力
  • 「全体から」考えるフレームワーク思考力
  • 「単純に」考える抽象化思考力

つまり、「結論から」「全体から」「単純に」考える思考力こそが、「地頭が良い」と言うときに私たちが指している能力なのです。ここで気になるのは、「そもそも地頭は鍛えられるのか」ということ。その疑問に、細谷氏は「定義による」と答えます。

「地頭が良い」というのは魔法の言葉で、いかようにも解釈できてしまいます。しかし、「地頭が良い」という言葉を分解し、“鍛えられる能力” としてとらえ直せたとしたらどうでしょう。成長するためのヒントが見つかるはずです。反対に、「あの人は地頭が良いから」で片づけてしまうのは、完全に思考停止している証。成長のきっかけさえつかめません。

こうして自分の思考を変えたら、「では地頭を鍛えるにはどんな能力を高めていけばいいのか」を考えてみてください。たとえば「論理的思考力(ロジカルシンキング)」を鍛えるのもひとつの手です。「結論から」「全体から」「単純に」考える思考力のベースとなり、問題を分解して整理する力も身につくでしょう。詳しくは『思考のぜい肉をそぎ落とせ! 『ロジカルシンキング』超シンプルなトレーニング方法。』をお読みください。

全然成長できない人が変えるべき3つの思考02

2. 仕事への情熱を「才能」や「運」のせいにしている

論理的思考力を鍛えて「地頭が良い人」になったとして、それだけで充分に成長していけるのかというと、そうではありません。次に必要なのは「仕事への情熱」です。

マッキンゼーを経て経営コンサルタントとして活躍する並木裕太氏は、論理的思考力しか武器のないビジネスパーソンを「ロジカル思考バカ」として一蹴します。論理的思考力の落とし穴は、どんな問題であってもロジックで「説明」できてしまうこと。並木氏は「ロジックは人を説得する道具でしかない。仕事で成果をあげる、新しい価値を生むにはまるで役に立ちません」と語ります。

論理的思考力は一流のビジネスパーソンになるうえで必須の能力。しかし、人を惹きつけて仕事をうまく進め、自分を成長させていくためには、別のものも必要になります。それが「仕事への情熱」なのです

では、今の仕事に「情熱」を感じていないのだとしたら、 転職をするしかないのでしょうか。それは早計な判断かもしれません。コロンビア大学ビジネススクール上級講師のウィリアム・ダガン氏は、あなたが今の仕事を選んだのは「やりたいこと」だったからだと述べます。なぜならば、「やりたいこと」というのはひとつではなく、また、ひとつ実現されればほかが成り立たなくなるような性質を持つから。

たとえば、やりたいこととして「給料のいい仕事に就く」「快適な環境で働く」「海外旅行」「両親の世話」「ノーベル賞受賞」「結婚する」「陶器をつくる」を挙げたとします。もし「陶器をつくる」を選択したら、別の地域にしか職がなく、しかも給料は安いかもしれません。

つまり、あなたはそのとき置かれる状況の中で「給料の良い仕事に就く」「快適な環境で働く」といった自分にとって優先したいことを優先したのです。

ここから知っておくべきことは、「やりたいこと」の全てを実現することはできず、転職を考えるにしても「やりたいこと」のうちのひとつしか実現されないということ。結局、仕事は「やりたいこと」と「できること」のバランスを取ることが重要なのです。最高の環境を手に入れるのは非常に難しいので、少しでも「できること」を「やりたいこと」に近づける、つまり好きになる努力をするほうが賢明でしょう。

ライフコーチの関口梓氏は、その際に役立つ「あなたが今の仕事を愛している度合いは何%ですか?」という簡単な質問を紹介しています。今の自分の仕事への情熱を数値化し、コーヒーをゆっくりと飲む時間を設ける、気になっていたプレゼン資料を片づけるなど、すぐにできる行動を起こし、1%でも仕事を好きになることが、「仕事への情熱」を持つための簡単な方法です。そしてそれが、あなたを成長へと導いてくれます。

全然成長できない人が変えるべき3つの思考03

3. 知識がないことを恥じている

成長していくには、たしかに「知識」も重要でしょう。しかし、かつてのように「物知り」である必要はありません。

事業家で思想家でもある山口揚平氏は、情報は思考の素材であり、目的ではないと述べます。例として挙げるのは、フォード社の創業者、ヘンリー・フォード氏の逸話です。

あるとき、知識人と呼ばれる人たちがフォード社を訪れた。フォード氏は落ち着いて「皆さん、どのような質問でも良いです。答えてご覧に入れます」と言った。

小学校しか出ていないフォード氏の無知さを晒そうと、知識人が次から次へと質問を浴びせると、フォード氏はおもむろに電話を取り上げて、部下を呼びつけた。そしてそれらの質問にあっさりと答えさせてこう言った。

「私は何か問題が起こったら、非常に優秀な、私よりも頭の良い人を雇い、答えを出させます。そうすれば、自分の頭はすっきりした状態に保つことができますから。そして自分はもっと大事なことに時間を使います。それはたとえば、『考える』ということなのです」

(引用元:プレジデント・オンライン|頭のいい人がまったく新聞を読まないワケ

人間の記憶容量を電子記憶メディアが超えた現代において、一流のビジネスパーソンに必要なのは、多くの情報を持つ「専門家」になることではなく、思考のために情報を集める「実践者」になることです。思考力を磨かないまま情報だけを増やしていくと、固定観念を強め、考えることを放棄させます。

では、そのうえで私たちが得るべき知識はなんなのでしょうか。哲学者の東浩紀氏は、それはGoogle検索で必要な情報を引き出せる「検索ワード」であると言います。

東氏は、著書『弱いつながり 検索ワードを探す旅』のなかで、インターネットを代表とする高度に情報化された社会において「知らない情報に触れる機会が減った」ことを指摘します。たとえば、Googleの検索履歴やSNSのおすすめユーザーがわかりやすい例。私たちは努力せずとも自分の知りたい情報を得るようなシステムの中にいる反面、努力しなければ自分の知らない情報にアクセスすることはできません。そして、インターネットの快楽は私たちにその努力を怠らせます。

そのために東氏が私たちに推奨するのが「観光」、つまり新しい検索ワードを知る「偶然」を生み出す機会を持っておくことです。「観光」という言葉どおり、旅行をしてもいいでしょうし、書店で名前だけから好きな本を買ってもいいでしょう。新たな検索ワードを得るための偶然性を担保しておくこと、それが固定観念にとらわれず思考を自由に働かせるための「知的好奇心」であり、デキる人に近づくために必要なことなのです。

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「なんだか成長が鈍ってきているな……」と感じている人は、ぜひ普段の思考から変えてみてください。それが、成長のための行動へとつながっていきます。

文 / 谷口亮祐

(参考)
東洋経済オンライン|「地頭がいい人」とそうでもない人の決定的な差
日経ビジネス|[議論]不祥事の背景に潜む企業のジレンマは?
プレジデント・オンライン|"ロジカル思考バカ"がまるで使えない理由
ダイヤモンド・オンライン|「好きを仕事にしなさい」に従ったら絶対ダメな理由
FAST COMPANY|The Secrets To Career Contentment: Don’t Follow Your Passion
東洋経済オンライン|転職より楽!「今の仕事」をまた好きになる術
プレジデント・オンライン|頭のいい人がまったく新聞を読まないワケ
東浩紀(2016),『弱いつながり 検索ワードを探す旅』, 幻冬社.

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