ビジネスパーソンには2つのタイプの人がいます。右肩上がりにどんどん成長していく人と、そこそこのところで頭打ちになり成長が止まってしまう人。
あなたはどちらのタイプでしょうか。
「最近、どうも伸び悩んでるな」
「頑張っているのに成果が出ないな」
そんなふうに感じている方には、本記事で紹介するメソッドがきっと役立つはずです。
今回は、ビジネスパーソンとして今後も成長を続けるために、今日からでもすぐに実践すべきフレームワークをひとつご紹介しましょう。
成長が止まる人は、自分の経験を「体系化」していない
成長が止まってしまう原因のひとつとして、これまでに積んできた経験を自分の中で整理できていないということが挙げられます。
日々仕事をするなかで、あなたはさまざまなことを経験してきたはずです。たとえば入社したての頃には、必死で業務を覚えていったことでしょう。先輩の振る舞いを一生懸命観察しながら仕事の仕方を学んでいったり、初めての取引先訪問でがちがちに緊張しながらも必死でメモを取ったり――。ほかにも、仕事がうまくいかないときにいろいろ試行錯誤したり、時には大変な仕事を苦労してやり遂げて大きな達成感を味わったこともあったでしょう。
そうした経験のひとつひとつを、あなたはきちんと振り返ってみたことがあるでしょうか。また、「あの経験から何を学べるだろう?」と、改めて分析してみたことがあるでしょうか。もし、こうした振り返りを行なわず「経験しっぱなし」になっているのだとすれば、せっかくの成長のチャンスを損していることになりますよ。
人財教育コンサルタントの村山昇氏は、以下のように述べています。
確かにどんな出来事でもそれを試練として乗り越えれば成長は得られます。が、漫然とそれをくぐり抜けているだけでは“モグラたたき”がうまくなるだけの上達です。それは「成長ベタな人」のすることです。「成長上手の人」は、観のもとにその試練に意味づけをしたり、あるいは成長機会を意図的につくり出したりして進んでいくことができます。
(引用元:GLOBIS知見録|「成長上手な人」と「成長ベタな人」の差 ※太字は筆者が施した)
ビジネスパーソンとして成長を続けたければ、まず「自分はこれまで、どんなときに成長できたのか?」ということを振り返ってみてください。すると、そこから逆算して、「では今後はどうすれば成長できるのか?」という見通しを立てられるようになります。
たとえば、「憧れの上司の営業スタイルをひたすらまねしていたら営業成績が上がった」という経験が過去にあるとしましょう。この経験を抽象化すると「目標となる人のまねをすると成長できるのではないか」という仮説を導くことができますよね。そうなると、今後自分がさらに成長するためには、まず新たな「目標となる人」を見つければいいんだ、ということがわかってきます。
このような「今後こうすれば成長できるはず」という自分なりの “成長観” を確立しておかないと、これからの目標やビジョンがいつまでも定まらず、行き当たりばったりに仕事をこなすだけの毎日になってしまいかねません。
自分の “成長観” をつくる4つのステップ
では、過去の経験を分析し、自分なりの成長観をつくるためにはどうすればいいのでしょうか。村山氏は「コンセプチュアル思考」というフレームワークを紹介しています。4つのステップを順番に見ていきましょう。
【STEP1】過去に成長できた経験を書き出す
まずは、自分が仕事の中で「成長できたな」と感じたときの経験を、なるべく多く書き出しましょう。
例1:憧れの上司の営業スタイルをひたすらまねしたら、営業成績が上がった。
例2:事務作業の進め方を見直して無駄を省いたら、30分も早く仕事が終わるようになった。
例3:会議の資料を徹底的につくり込んだら、企画が通った。
【STEP2】経験を法則化し、言葉で表現する
次に、その成長経験を法則化(抽象化)し、「成長とは何か(どうすれば成長できるのか)?」を自分なりの言葉で定義しましょう。
例1:成長とは「目標となる人を追いかける」こと(=目標となる人を追いかければ、成長できるはず)
例2:成長とは「現状を疑う」こと(=現状を疑い改善することで成長できる)
例3:成長とは「やり抜く」こと(=中途半端で終わらせず徹底的にやることで成長できる)
【STEP3】絵図化し、STEP2をさらに明確にする
STEP2で定義した成長観を、絵や図で表現しましょう。自分で考えた成長観を絵や図に描き起こすことによって、視覚的・直感的にイメージすることができますし、言葉だけでは曖昧だった部分もより明確に表現することができます。
例1:成長とは「目標となる人を追いかける」こと……「目標となる人」がいると、到達すべきレベルと自分のレベルとを比較し、「自分には何が足りないのか」を明確に認識できようになる。そして、その足りないものを埋めようという成長意欲も沸く。
例2:成長とは「現状を疑う」こと……現状の方法やスタイルを一度飛び出してみることで初めて、より良い方法や新たな可能性に出会える。
例3:成長とは「やり抜く」こと……100点を目指して仕事をしていると、80点くらいの出来でも満足してしまう。しかし、初めから200点のクオリティを目標にしていれば、120点、150点の成果を出すことができる。
STEP4:今後の具体的なアクションに落とし込む
最後に、STEP3までで固まった成長観をもとに、これから具体的にどんなアクションを起こすのか書き出しましょう。
例1:会社の中で目標にできる人を見つけ、仕事のコツや努力の方法などを訊く。
例2:今の仕事の進め方を紙に書き出し、改善できそうなところはないか洗い出す
例3:企画書は書き上げて終わりではなく、その後の推敲やプレゼンのシミュレーションにもたっぷりと時間をかける。
村山氏によると、以上のようなステップを日頃から繰り返すことによって、しだいに自分なりの成長観が形作られていくのだそうです。成長観に限らず、仕事観や人生観など、あらゆる価値観を明確化するのに役立つフレームワークですので、ぜひ活用してみてください。
「できないこと」ばかりを振り返ってはいけない
このフレームワークには、もうひとつメリットがあります。それは、自分がこれまで「できたこと」や「成し遂げたこと」という、ポジティブな経験に目を向けられることです。
一般に “振り返り” というと、「あのとき○○ができなかった」「××をやっておけばよかった」など、失敗やネガティブな出来事を反省するというイメージが強いと思います。まじめな人ほど、過去の失敗を反省してしまう傾向は強いかもしれません。
もちろん、失敗から学ぶことも時には大切です。とはいえ、ネガティブな経験ばかりを振り返っていては、むしろやる気や自信は損なわれ、成長の妨げになってしまう恐れさえあるのです。
『できたこと手帳』の著者・永谷研一氏は、以下のように解説しています。
「振り返り」は、あなたの成長のために、あなたにとってプラスの変化をもたらすために行うことです。しかし「反省」は、ともすると、あなたを「成長できないアリ地獄」に引きずり込んでしまうかもしれません。「失敗」や「できなかったこと」を1人で悶々と考えてしまったら……。やっぱり苦しくなってしまいます。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|劇的に成長する人は「失敗」ではなく「○○」を振り返る ※太字は筆者が施した)
永谷氏は、過去の成功体験をきちんと振り返ることで気持ちが前向きになり、果敢に行動する意欲が沸いてくるのだといいます。
定期的に振り返りを行なうことは、成長へのモチベーションを維持していく意味でもとても有意義なことなのです。
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ビジネスパーソンとして成長し続けるための振り返りテクニックをご紹介しました。今後の目標や志を見つけるきっかけとして、今回解説したフレームワークをぜひ試してみてくださいね。
(参考)
GLOBIS知見録|「成長上手な人」と「成長ベタな人」の差
ダイヤモンド・オンライン|劇的に成長する人は「失敗」ではなく「○○」を振り返る
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。