仕事熱心なハカオくん。でも、最近よく眠れず困っているようです。いったい何があったのでしょうか……?
こんなお悩みを携えて、スタディ博士のもとにやってきました。
~ハカオくん(25歳、会社員)のお悩み~
仕事でミスをすると、夜までずっと抱え込んでしまいます。「なんであんなことになっちゃったんだろう……」って、頭のなかでぐるぐる思い返してしまって、なかなか眠りにつけないんです……。気持ちをさっと切り替えるために、寝る前にできることって何かあるのでしょうか?
眠れないとさまざまな問題が生じる
寝ようとしても、仕事のミスが頭に浮かんできてしまうのです……。
そういう悩みはよく耳にするよね。ハカオくんの場合も、ベッドの中で反省会モードになってしまうということかい?
はい。「あのときこうすればよかった」とか「あっちのほうがよかったんじゃないか」とか、後悔の念が頭から消えないのです……。
ふむ、それで眠れずに寝不足ぎみになってしまうということだね。仕事に支障はないかな?
正直、仕事中にウトウトしちゃったりしてます……。
それはいけないね。それに、寝不足は脳にとってもよくないことがわかっているんだ。書籍『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』によれば、寝不足が続くと、考えをつかさどる脳の頭頂葉と前頭前皮質脳のグルコース(※脳のエネルギーになる成分)が減少する。つまり、考える力が大きく低下してしまうんだ。
うわ……ますます大変なことに……。
ほかにも、睡眠不足が続くと、うつ病や動脈硬化、糖尿病などの発症リスクも高まってしまう。すぐに解消しないといけないね。
……どうしたらいいのでしょうか?
「成功記録」で “よかったこと” に注目してみよう
ハカオくんの場合は、日中の悪い出来事を引きずってしまうことに根本原因があるよね。したがって、そちらに意識が向きすぎないようにする必要がある。方法をいくつか紹介しよう。
お願いします!
まずおすすめしたいのが、夜寝る前に「成功記録」を書くこと。文字通り、その日1日の中でよかったことやうまくいったことを思い出し、ノートに書き出してみるんだ。
成功記録――。
ハカオくんの場合、どうしてもネガティブな出来事に意識が向きがちになっているよね。そうではなく、
ポジティブな出来事に意識を向ける習慣をつくるんだ。
- 大小問わず成功したこと
- 自分が誇りに思えたこと
- うまく対応できたこと
- 他者に褒められたこと
こういったことを書き出していくと、自己評価が上がっていくというわけだ。ハカオくん、今日1日を振り返って、よかったことやうまくいったことはあったかな?
うーん、そう言われても……電話応対で失礼があって、上司から注意されてしまったし……。
どんなに小さなことでもいいから、もっとよく思い出してみるんだ。
そう言われてみれば……普段より15分早く出社したから仕事を早く始められたし、後輩にアドバイスしたら「ハカオさん、頼りになります!」って言われて嬉しかったかな。
そうそう。どんな些細なことでもいいから、とにかくポジティブな出来事に目を向けることが大切なんだよ。それを続けていけば、自然と自分を認められるようになるんだ。
自分の「いいところ」を見返すのですね。
そう。夜寝る前に「成功記録」をつけて、それを読み返す習慣をつけてごらん。自分への評価がアップして、気持ちの切り替えもしやすくなるよ。
医師推奨「3行日記」もおすすめ
ほかに「3行日記」という方法もある。“自律神経研究の第一人者” で順天堂大学教授の小林弘幸医師が提唱しているものだ。
3行だけ日記を書く、ということで合っていますか?
うん。ただし、書く項目は以下の3つだ。
- よくなかったこと(うまくいかなかったこと、嫌だったこと)
- よかったこと(うまくいったこと、感動したこと、嬉しかったこと)
- 明日の目標(小さなことでもいいので目標を定める)
たとえば、今日のハカオくんだったら、
「電話対応で上司に怒られた」(=よくなかったこと)、
「職場に早く着いたので仕事が捗った」(よかったこと)、
「今日みたいに誰よりも早く出社しよう」(明日の目標)といった具合だね。これも毎日続けてみよう。
なるほど。ひとつの項目につきたった1行、合計3行ならば、さっと書けそうです。
「成功記録」同様、この3行日記もポジティブな出来事に目を向けさせてくれる作用がある。とにかく自分のプラス面を見つけ出すことが大事なんだ。
わかりました、やってみます!
寝る直前に実行したい「4つの前向きな考え方」
ところで、ハカオくんは寝る直前に何をしているのかな?
最近はスマートフォンをいじっていることが多いですね……。気晴らしのつもりです。
そこにも問題がありそうだね。杏林大学医学部の古賀吉彦教授の研究によると、スマートフォンの画面からは「ブルーライト」という光が出ていて、体内時計のリズムを乱してしまうのだそうだ。ここ数年、眠れないと訴える人が増えているのも、スマートフォンの普及が要因ではないかと指摘されている。
そうだったんですね。寝つきが悪くなっているのは、それも原因かも……。
古賀教授も、寝る直前のスマートフォンはなるべく控えようと言っている。寝る前はスマートフォンを手から離して、意識的に気持ちを切り替えるように努力しよう。
その方法が、先ほどの「成功記録」と「3行日記」というわけですね。
そうだ。心理カウンセラーの上西聰氏は、睡眠前の時間を「ゴールデンタイム」と呼んでいる。この時間をどう過ごすかで、人生の良し悪しが変わるそうだ。上西氏は、寝る前にポジティブになれる思考習慣をいくつか紹介してくれているから、それもハカオくんに教えよう。
思考習慣ですか、なんだか難しそうだな……。
いや、とても簡単だよ。まずは「新しい挑戦は “6割の出来” で満足する」こと。特に、完璧主義者の人は少し失敗しただけでひどく落ち込んでしまうことがあるけれど、何事も最初から完璧にできるわけじゃない。失敗を繰り返して、少しずつ成功に向かっていけばいいんだよ。
今までの僕は、失敗するたびに落ち込んでいました……。
「いつまでも報われないものは『別の可能性』に目を向ける」ことも大切だ。必死に頑張っているのに報われないときは、後悔し続けても仕方がない。むしろ、別の道に進むことで成功をつかめるかもしれない。いずれにしろ、いつまで悩んでも仕方がないということだね。
そうですよね、悩んでいても何も始まりませんからね。
また、「小さな命に触れて『心をやわらかく』する」こともすすめている。古賀氏は、「動物には人の心を癒やし、安定させるパワーがある」と語っている。家にペットがいない場合は、好きな動物の写真を見てもいいそうだ。
へえ~! それなら、僕みたいにペットを飼っていない人でも大丈夫ですね。
それから、「『楽しそうに生きている人』を観察してまねする」のも大事なのだそうだ。自分の周りの、夢を叶えた人の話を思い出してもいいし、憧れの人物の言葉が書かれた本や雑誌を読み返してもいい。とにかく、自分がなりたいと思う人物の行動を参考にすれば、気持ちを切り替えるヒントが見つかるかもしれないね。
なるほど。
上西氏は、寝る直前の時間にプラスの思考を行なえば、潜在意識に刷り込まれるとも語っている。「成功記録」や「3行日記」を書いてベッドに入ったあと、紹介した思考習慣を思い出してごらん。心がずっと楽になるだろう。
アドバイス、ありがとうございました。今晩、さっそく試してみます!
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その日のネガティブ思考はその日にリセット。新たな1日を気持ちよく始めるために、ぜひ気持ちを切り替えるための夜習慣を始めてみてください。
(参考)
厚生労働省|e-ヘルスネット
ショーン・スティーブンソン(2017),『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』, ダイヤモンド社.
STUDY HACKER|就寝前に「成功記録」を書くメリットがすごい。失敗だけじゃなく成功にも目を向けるべき本当の理由。
STUDY HACKER|自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。
オムロン|vol.152 体内時計に影響する「ブルーライト」
Precious.jp|眠る前の1分で人生が変わる!心の状態がポジティブになる「睡眠前の習慣」6 選
【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。