勉強に夢中になるには「これ」さえもてばいい。でも “高望み” はストレスになるので要注意

有田秀穂先生インタビュー「ドーパミンの有効性」01

人生をよりよいものにしていくために、「学び」は欠かせません。しかし、同じ学びでも、好きなことを勉強する場合であればストレスがかからずに夢中になれますが、仕事などで必要に迫られてする勉強にはどうしてもストレスを感じるものです。

そこで目指したいのは、どんな場合でも「ストレスフリーで勉強できる」自分になること——。お話を聞いた脳生理学者の有田秀穂(ありた・ひでほ)先生は、神経伝達物質である「ドーパミン」の有効性を語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「夢」をもつだけでストレスを感じなくなる

脳の活動にはいろいろな種類の神経伝達物質が関わっていますが、そのなかで「勉強」と強い関係があるものが「ドーパミン」です。

勉強をするときには、「今度こそ試験に合格しないと……」「どうして暗記できないんだろう……」「やりたくないけど、来週のプレゼンのためにやらなければ……」といったふうに多くのストレスを感じるものです。

ところが、ドーパミンが分泌されていると、脳のなかのストレスをつかさどる「ストレス中枢」と呼ばれる部分の活性が抑えられることがさまざまな研究からわかっています。ドーパミンの分泌により、過剰なストレスを感じることがなくなるのです。

そのドーパミンの分泌を促す方法は、とても簡単。意外かもしれませんが、「夢」をもてばいいのです。専門的には「報酬」と呼びますが、自分のなかで「こうありたい」「こうなりたい」といったことを思い描くということです。勉強をしている人なら、「今度こそ試験に合格しないと……」ではなく「今度こそ試験に合格したい!」とか、さらに「合格したらこういう仕事をしたい!」というふうに夢を描いてください。

これはいわゆる、「ポジティブ思考」というものです。このポジティブ思考のすばらしさは、状況に関係なくストレス中枢の活性を抑えられる点にあります。それこそ100人中100人がストレスを感じてストレス中枢が興奮するような状況であっても、ポジティブ思考によってドーパミンが分泌されていればそうなりません。そのためにやることは夢をもつということだけですから、こんなに楽なことはありませんよね。

有田秀穂先生インタビュー「ドーパミンの有効性」02

ドーパミンがもつ恐ろしい特性には要注意

ただしその反面、ドーパミンには注意も必要です。夢をもてばいいといっても、その夢がいつも叶うとは限りません。誰にも失敗や挫折はありますし、どんなに願っても欲しいものを手に入れられないということはよくあることです。その積み重ねにより、ドーパミンの分泌をつかさどるドーパミン神経の暴走を招くことがあるのです。

するとどうなると思いますか? これはとても恐ろしいことですが、法律に背こうが倫理に背こうが、何がなんでも欲しいものを手に入れようとするようになるのです。ストーカー行為などは、まさにその典型だと言えます。

薬物中毒になることやギャンブル依存症になることも、ドーパミン神経を過剰に活性化させて暴走させてしまうことからの流れと考えていいでしょう。たとえば、競馬で大負けすると「もうやめた!」と思ってその日は反省します。しかし翌日になると、「やっぱり勝ちたい。負けを取り戻したい」という欲が勝ってまた馬券を買ってしまうということを繰り返すのは、典型的なギャンブル依存です。そうさせてしまう恐ろしさが、ドーパミンにはあるということです。

そうならないためにドーパミン神経の暴走を防ぎたいところですが、残念ながら、そのような方法はありません。薬物中毒に陥った人を想像してもらえればわかると思いますが、一度中毒になってしまうとその依存から抜け出すことは容易ではありません。それだけ、ドーパミンが心身にもたらす影響は強いのです。

ですから、ドーパミンのメリットをしっかり享受しながら、ドーパミン神経の暴走を招かないようにうまくバランスをとっていくことが求められます。

有田秀穂先生インタビュー「ドーパミンの有効性」03

ドーパミンの働きを生かし続けるために「高望みしない」

ドーパミン神経の暴走を防ぐ方法はないと述べましたが、できることと言えば、高望みしないことを心がけることでしょうか。夢をもつと言っても、到底実現できそうにないようなことを望まなければ失敗や挫折を味わうことも減りますし、結果としてドーパミン神経の暴走にまでは至りません。

また、ドーパミンの働きをうまく利用し、勉強において成果を挙げ続けるためにも高望みしないことは大切です。

「最初から100点をとれるに越したことはないじゃないか」と思う人もいるでしょう。ですが、もし仮に最初から100点をとれてしまうと、そのあとの勉強意欲を失うことにもなりかねません。いわゆる、「燃え尽き症候群」の状態に陥ってしまっては、より向上できる可能性を自ら狭めてしまいます。キャリアアップしていくべきビジネスパーソンとしては、いいこととは言えませんよね。

ですから、最初から「100点をとりたい」と高望みするのではなく、始めたばかりの勉強ならまずは20点、30点といった小さなステップを目標にしてほしいのです。ハードルの低い目標なら、失敗や挫折することなく叶えることができます。それにより、「今度は40点をとろう」「その次は50点をとろう」というように、新たな夢をもち続けて、前に進んでいくことができます。

重要なのは、「成功体験」を積み重ねることです。成功体験がその次の夢を生み、「ストレスフリーで夢に向かって突き進める」というドーパミンがもつメリットを享受し続けられます。それこそが、勉強して成長し続けなければならないビジネスパーソンにとって好ましいサイクルだと言えるでしょう。

有田秀穂先生インタビュー「ドーパミンの有効性」04

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【脳生理学者が解説】社会人が「ストレスフリー」でいるための超基本的な5つの日常習慣
セロトニン研究の第一人者が語る。デキる人のもつ「2つの力」がセロトニンで高められる理由

【プロフィール】
有田秀穂(ありた・ひでほ)
1948年生まれ、東京都出身。医師・脳生理学者。東邦大学医学部名誉教授。東京大学医学部卒業後、東海大学病院で臨床、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究に従事。その間、米国ニューヨーク州立大学に留学。東邦大学医学部統合生理学で坐禅とセロトニン神経・前頭前野について研究し、2013年に退職、名誉教授となる。各界から注目を集めるセロトニン研究の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントする「セロトニンDojo」の代表も務める。『医者が教える 疲れない人の脳』(三笠書房)、『脳科学者が教える やっかいな脳のクセをリセットする 朝5分の呼吸法』(総合法令出版)、『自律神経をリセットする太陽の浴び方』(山と渓谷社)、『ひらめく! ひとり散歩ミーティング』(きこ書房)、『「老脳」と心の癒し方』(かんき出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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