あなたは、アイデアを考えようとしてもなかなか思いつかず、深夜まで頭を抱えた経験はありませんか? 「発想しよう」「ひらめこう」と思えば思うほどひらめかない……そんな悩みを抱えていませんか?
じつは、脳にはアイデアがひらめきやすい時間帯やタイミングがあります。それを上手に使えば、上のような悩みを抱える人でも、スムーズにアイデア出しができるようになるのです。
そこでこの記事では、1日のなかで発想しやすい時間帯について詳しく解説し、ひらめきを生むための1日の過ごし方をご提案します。「明日の会議までにアイデアを出さないといけないのに、いっこうにいいアイデアが浮かばない……!」といったことでよく困ってしまう方、必読です。
ひらめきやすい時間帯1. 朝起きたとき
1日の最初の発想タイムは「朝起きたとき」です。脳科学者の茂木健一郎氏によると、人の脳は寝ているあいだに前日の記憶を整理するのだとか。そのため、起きてすぐの脳はクリアな状態になっていて、創造性を発揮しやすいのだそうです。
また、同じく脳科学者の篠原菊紀氏も、朝はひらめきやすい時間帯だと話しています。朝には、物事への意欲が向上するドーパミンや、脳の機能を覚醒させるアドレナリンなどの分泌量が増えます。そのため朝は、企画書や提案書のアイデアを考えるなどの作業をするのに向いているそうですよ。
ひらめきやすい時間帯2. 電車に乗っているとき
作業療法士で脳のケアが専門の菅原洋平氏は、アイデアが浮かびやすい場所として電車の中を挙げています。理由は、電車内でぼーっとしていると、脳が「インプットモード」から「まとめモード」に切り替わるから。
私たちは仕事中、メールに会議に商談にと、常に情報を脳にインプットし続けています(インプットモード)。そこから一転してぼーっとした時間に入ると、脳のなかではインプットされた情報を整理する作業が始まるのだそう(まとめモード)。
菅原氏いわく、まとめモードに入った脳は、情報を結びつけたり分類したりしているとのこと。このとき、一見関係がなさそうな情報同士が結びつくため、ひらめきが生まれやすくなるのです。
もしアイデアの発想に迫られているのなら、出勤時や帰宅時の電車内では、スマートフォンでニュースを見たり読書をしたりするよりも、ただぼーっとして過ごすほうがよさそうですよ。
ひらめきやすい時間帯3. 仲間との昼食時
午前の仕事を終えて昼休みに入ったら、ぜひオフィスの外に出て、同僚などと昼食を食べに行きましょう。これにより、脳科学的にアイデアがひらめきやすい状況をつくることができます。
特に、新しいお店を訪れたり、食べたことのない新メニューを食べてみたりするのが効果的。精神科医の樺沢紫苑氏によれば、いつもと異なる刺激を受けることで、創造力やひらめき力がアップする脳内物質アセチルコリンが活性化するのだそうです。
また、昼食はひとりで黙々と食べるのではなく、同僚と話しながら食べるのがおすすめです。時間管理コーチングを手がけるリアルライフE社のCEOエリザベス・グレース・サンダーズ氏は、ひらめきの可能性を高めるには他人との相互作用が欠かせない、と話しています。
サンダース氏いわく、アイデアについて他人と話し合うことで、新たな思いつきにつながるとのこと。ひとりでじっくり考える時間と、他人とともに考える時間とを行き来することが、アイデアを練り上げるうえでもっとも有効な方法であるのだそう。
昼休みは、リフレッシュがてら仲間と外にご飯を食べに行きましょう。きっと、アイデア出しのよい手助けをしてもらえますよ。新型コロナウイルスが終息したらぜひ!
ひらめきやすい時間帯4. 入浴時
前出の茂木氏は、仕事を終えて家に帰り、スマートフォンを手放して入浴しているときのようなリラックスタイムにも、ひらめきが生まれやすいと言います。
茂木氏の言うひらめきの仕組みとは、こうです。
――これまでに見聞きしたすべての知識や経験を司る側頭連合野(脳内ビッグデータ)に対し、文脈や過去の成功体験から外れた常識外の思考をする前頭葉が「情報を引き出せ」とリクエストを送ると、アイデアを思いつくことができる――
茂木氏はこの仕組みを「ひらめきは、脳内ビッグデータと前頭葉の掛け合わせによる0.1秒の同時発火からもたらされる」と表現しています。その同時発火が起きるタイミングというのが、「集中した思考のあとのリラックス」タイムであり、その代表例が入浴時なのだそう。先ほど菅原氏の解説として紹介した「まとめモードへの切り替わり」とは、まさにこのことなのでしょう。
これについては、実験でも証明されています。アメリカの心理学者スコット・バリー・カウフマン氏が2014年に、シャワーヘッドの世界トップレベルシェアを誇る独ハンスグローエ社と共同で研究を行ないました。その結果、なんと世界中の72%もの人が、シャワーを浴びているときに新しいアイデアが浮かんだ経験があることがわかったのです。
とは言え、入浴しさえすればいいわけではありません。茂木氏いわく「そもそもの情報がなければアイデアは生まれてこない」とのこと。思いつきたいテーマについてあらかじめ調べ、集中的にインプットしたうえで、リラックスタイムを設けましょう。
「集中→リラックス」という流れを大事にすれば、日中にはなかなかアイデアが思いつかなくても、入浴中のふとした瞬間に良いアイデアが「ポン」と浮かぶかもしれませんよ。
良いアイデアがひらめく、1日の過ごし方をご提案!
ここまでの解説を踏まえ、ひらめきを生むためにはどのように1日を過ごし、どの時間帯にアイデア出しをすればいいのか、ご提案しましょう。日中に仕事があることを想定して組んだタイムスケジュールがこちらです。
ひらめきの時間1は「起きてすぐ」です。企画書や提案書を作るためにアイデアを練りたいのなら、朝にベストコンディションで発想に取り組めるよう、早寝早起きをしましょう。
ひらめきの時間2は「通勤の電車に乗っているとき」です。「電車」と書いていますが、バスやタクシー、新幹線などでももちろん同じです。少しぼーっとするくらいでいいので、なるべく脳をリラックスさせてください。いいアイデアが生まれることでしょう。
ひらめきの時間3の「昼食時」は、唯一、他人と一緒にアイデアを練ることを想定したタイミングです。同僚と、行ったことのない飲食店を訪れてアセチルコリンを活性化させましょう。たとえいいアイデアが出なくて行き詰まっていても、ランチ時に同僚から意見をもらえば、アイデアの大幅なブラッシュアップができるはずです。
仕事が終わったら、出勤時と同様に「電車の中」でひらめきの時間4が始まります。疲れているかもしれませんが、無理して頭を悩ませる必要はありません。出勤時と同様に、ぼーっとするくらいの気持ちでアイデアが浮かんでくるのを待ちましょう。
ひらめきの時間5は「入浴中」です。シャワーを浴びるだけでも効果的ですが、ゆっくりお風呂に入ってリラックスすれば、脳が集中状態からより開放され、アイデアが浮かんできますよ。
以上が、いいひらめきが生まれやすい1日の過ごし方の例です。生活スタイルが異なる人でも、今回紹介したひらめきの時間を自らの生活にあてはめれば、アイデアが浮かびやすいタイムスケジュールを組むことができるので、ぜひ実践してみてください。
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いいアイデアが生まれやすい時間に別のことをしてしまったり、ボーっとすることでいいアイデアが浮かぶはずの時間に考え込みすぎてしまったりするのは、もったいないこと。間違ったタイミングでアイデア出しに挑んだり、無理やりひらめこうとしたりしても、あまり成果は期待できません。
むやみに頭を悩ませるのではなく、まずは生活の中で発想しやすい時間帯をいくつか見つけ、アイデア出しの時間として使ってみてください。
(参考)
PHPオンライン衆知|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方 「朝の3時間」は、最速で仕事がはかどるゴールデンタイム
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武山和正
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