みなさんは、夢や目標をもっていますか? もしもっているなら、それを叶えたいと思うのは当然の心理です。そのための方法を解説してくれたのは、「思考現実化コーチ」の横川裕之(よこかわ・ひろゆき)さん。
「目標を叶える」ことを「思考を現実化する」と表現する横川さんは、そうするためにまず「未来を文字化する」ことが重要だと説きます。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
15分でできる「未来を文字化する」方法
私は、著書などを通じて「思考は文字化すると現実化する」と提唱しています。これは、文字通り「文字化することで、考えたことが現実になる」こと。当然のことですが、「東大に合格する」と思考を文字で表せない人、つまり「東大に合格する」と思ってもいない人が東大に合格できるわけもありません(『考えを現実化するには「文字化」が欠かせない。結果を出せる思考習慣の身につけ方』参照)。
そして、思考を現実化するには、まず何よりも「未来を文字化」することが欠かせません。「東大に合格する」こともそうですが、「仕事で成果を挙げる」「資格試験に合格する」といった未来を文字化できて初めて、そうするために自分に足りない部分を認識したり必要な力を身につけようと努力したりできるからです。
では、未来を文字化するための具体的方法をお伝えしましょう。この方法は、「なんとなくやりたいことはあるけれど、それが人生の目標かと聞かれるとわからない……」のように、夢や目標が曖昧な人に特に有効です。手順は以下のとおりです。
【未来を文字化する方法】
- A4の紙1枚とペン、タイマーを用意する
- タイマーを15分にセットする
- 15分間、「もし、お金・時間の制約がなければやりたいこと」を書き続ける
お金がないから……時間がとれないから……なんていっさい考えなくてかまいません。15分間、とにかく手を止めずに書き続けることがポイントです。「こんなことを書いていいのかな」「これはやりたいことじゃないかも」といった判断もいっさい不要です。判断を入れようとすると、判断することに脳が働いてしまうので、やりたいことを見つけにくくなります。
実際に始めてみるとわかると思いますが、多くの人がだいたい3分くらいで書けなくなります。でも、重要なのはそこから先です。普段は自分で意識していなくとも、潜在意識のなかで「やりたい!」と思っていたことなどが出てきます。それらのなかから、人生の目標とも言うべき大きな夢が見つかる可能性もあるでしょう。
やりたいことを分類し、「本当にやりたいこと」を見つける
そうして書き出したたくさんのやりたいことを、今度はいくつかのカテゴリーに分類していきましょう。たとえば、「自分」「仕事」「健康(心・体)」「人間関係」「趣味」「教養」「お金(収入・財産・老後)」「家族・家庭」「奉仕活動」といった具合です。
すると、どれかひとつのカテゴリーに偏っている状況が見えてくるかもしれません。それが、現状におけるあなたの思考パターンです。
でも、その現状に違和感を覚えることもあるはず。「やりたいことが『お金』に関わることばかりになっているけれど、『家族・家庭』のことももっと大事にしたいんだけどな……」といったことです。
そうであるなら、「家族・家庭」に関わることなど、「本当にやりたい!」「これこそが自分にとって価値がある!」と思えるやりたいことにフォーカスし、目標としてみてください。「本当にやりたい!」と強く思えることだからこそ、思考を現実化するための努力を続けられ、その目標を叶えられる可能性が高まるからです。
目標実現の可能性を高める「目標の4観点」
また、目標への思いをさらに強め、それを叶える可能性を高めるには、以下のような「目標の4観点」を活用することをおすすめします。
【目標の4観点】
これは、「目標を達成することで自分が得られるもの」を4つの観点に分けて書き込んでいくワークです。4つの観点は、横軸の「私」か「社会・他者」か、縦軸の「有形」か「無形」かによって分けられます。無形とは、ここでは「気持ち」「感情」を指します。
「1. 私にとって有形の得られるもの」は、わかりやすいものならお金や順位、表彰状、記念品、あるいは仕事上の地位など。
「2. 私にとって無形の得られるもの」は、「誇らしい」「自信」「優越感」などです。
それから、「3. 社会・他者にとって有形の得られるもの」は、家族など自分に関わる人、自分が所属するコミュニティーの人が得られるものです。たとえば、会社の売上や、講師など何かを教えている人の場合なら受講者の成果といったものになります。
最後の「4. 社会・他者にとって無形の得られるもの」は、自分が目標を達成したときに、家族など自分に関わる人や、自分が所属するコミュニティーの人がどんな気持ち・感情になるかということ。「一緒に喜んでくれる」「私のことを誇りに思ってくれる」といったことです。
こうして実際に書き込んでみて、得られるものが多いと感じるほど、目標への思いが強まります。特に重要なのは、図の左側にあるふたつの「社会・他者にとって得られるもの」です。
人類がこんなにも進化できたのは、コミュニティーのなかで互いに貢献し合う社会生活を営んできたから。そのために、私たちは誰かに貢献することに大きな喜びを感じるようになりました。だからこそ、「社会・他者にとって得られるもの」を意識すれば、それだけ目標への思いを強められ、ひいては目標を叶える可能性も高まっていくのです。
【横川裕之さん ほかのインタビュー記事はこちら】
考えを現実化するには「文字化」が欠かせない。結果を出せる思考習慣の身につけ方
成果を出せる人と出せない人の決定的違い。“この力” を高めるため「夜、紙に書く」べきこと
【プロフィール】
横川裕之(よこかわ・ひろゆき)
1979年4月24日生まれ、新潟県出身。思考現実化コーチ。早稲田大学卒業後、一部上場ICT企業、外資系生命保険会社を経て独立。「何者でもない人が何者かに変わる」というコンセプトの「文字化メソッド」を開発し、オンラインスクール「文字化合宿」で提供。参加者は出版・テレビ出演・転職・独立・全国大会に出場するなど次々と思考を現実化させ、知る人ぞ知る何者かに進化。この「文字化メソッド」をまとめた書籍『思考は文字化すると現実化する』(WAVE出版)がロングセラーに。また「ひとりひとりが大切な人を幸せに導く世の中を創る」という志に共感する人たちが集まる「日本一のランチ会」を2010年から開催。そのランチ会で延べ3,000人以上の自己紹介を添削し、人の心を動かす自己紹介を創るメソッドをまとめた『すごい自己紹介[完全版]』(日本実業出版社)も出版。他の著書に『思考を現実化する「ねるまえ」ノート』(WAVE出版)がある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。