勉強や読書を重視するのは危険!? キャリアアップのための「しなくていい努力」とは

キャリアアップのための「しなくていい努力」01

将来をきちんと見据えているまじめな人ほど、キャリアアップのため、勉強や読書などに熱心に取り組んでいるものです。一見、すばらしいことのように見えますが、「勉強や読書は、キャリアアップのための『しなくていい努力』になってしまう可能性もある」と警鐘を鳴らすのは、企業研修講師として活躍する堀田孝治(ほった・こうじ)さん。いったいどういうことなのでしょうか? その真意を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

キャリアアップのための「しなくていい努力」02

「手段と目的」を勘違いしてはいけない

キャリアアップのために、資格取得の勉強やたくさんのビジネス書を読むといった努力をするのはすばらしいことです。しかしながら、みなさんのまわりにも「資格ハンター」のようになっている人はいませんか? もし、資格をとることだけが目的になっているのだとしたら、それは私が言うところの「しなくていい努力」です。

先行きが見えないとも言われる時代のなか、将来への不安から「いろいろな資格をもっておきたい」という気持ちは理解できます。でも、資格をとることはゴールではない。医師免許を取得することは、これから医師としてのキャリアを始めるスタートラインに立つことに過ぎないのです。さまざまな資格を取得しようとしている人は、ただスタートラインに立つ準備をいくつもしているだけ。スタートを切ったその先で、実際にどんなことをしたいのかをじっくり考えることこそが重要です。

つまり、「手段と目的」を勘違いしてはいけないということ。アメリカのメジャーリーグで一線級の成績を残したイチロー選手にとって、アメリカに行くことが目的だったわけではありませんよね? 自分が愛する野球というスポーツを追求していた結果、その最高の舞台がアメリカにあったからアメリカに渡っただけのこと。イチロー選手の目的は、世界最高の野球を経験し、そこで結果を残すということだったでしょう。アメリカに行くことではなく、アメリカでなにをするかが大事だったわけです。

……と、偉そうなことを言っている私も、かつては手段と目的を勘違いしていたひとりです。ある会社の支店で営業マンをしていた20代の私は、本社のマーケティング部署で働きたいという希望をもっていました。あるとき、本社の優秀な先輩と食事をする機会に恵まれ、先輩に自分の希望を伝えて本社に行くためにはどうしたらいいかと相談しました。先輩は、やはりこう言ったのです。「で、本社でなにがしたいの?」と。

当時の私は、本社に行くことを目的にしていて、その先を考えられていませんでした。それでは、いいキャリアを築けるはずもありませんよね。

キャリアアップのための「しなくていい努力」03

インプットではなくアウトプットを重視する

また、キャリアアップのために、勉強や読書といったインプットを重視しすぎることにも注意すべきです。私はある会社の人事部に所属していたときに、中途採用の面接を担当したことがあります。そのとき、志望者に自己PRをしてもらうと、大きくふたつのケースに分かれました。

ひとつは、「僕はこんな資格をもっています」「ビジネススクールで学びました」と、それこそインプットをPRするケースです。一方が、「以前の会社ではこういう成果を出しました」「僕が御社に入社したら、こういうふうにお役に立てます」とアウトプットをPRするケース。どちらの人材を企業が欲しがるかといえば、やはり後者です。

もちろん、資格などのインプットもある程度の武器にはなるでしょう。しかし、「こんな資格をもっている」とPRされた場合、雇う側からすれば「だとしたら、彼にはどんなことをやってもらうのがいいのか」を考えるというアクションがひとつ増えることになる。ですから、もしインプットを武器にする場合にも、もう一歩踏み込んで、そのインプットを使ってなにをやってきたのか、なにをやれるのかというアウトプットをPRすることを考えるべきなのです。

「医師免許をもっているが、手術を1回もやったことがない人」と「無免許だが、いままで数多くの難手術に成功し、多くの人の命を助けてきた人」がいたとします。自分の息子が大けがをし、緊急手術が必要になったら、どちらの人に大事な息子の命を託しますか? おそらく後者の人に頼むのではないでしょうか。極端な例ですが、仕事におけるキャリアも、原則的にはそれと同じなのです。

キャリアアップのための「しなくていい努力」04

目の前の仕事を将来のキャリアにつなげる

最後にお伝えしたいのは、将来のキャリアを考えることと同じくらい、いま目の前の仕事に全力を尽くすことも大事だということ。なにがどこでどうなって、将来のキャリアにつながるかわからないからです。

私のキャリアはけっこう動きが激しく、営業に始まり、マーケティング、総務、人事、広告など多くの部署を渡り歩きました。いまの私の仕事は企業研修講師です。どの部署の経験も役立っていますが、一番となると総務の経験だと思っています。

総務の人間は、数百人の社員に向けた通達次項の文書を作成しなければなりません。当時の上司には、「読んだ全員がわかるものが文書だから、文書を読んだ社員から問い合わせがきたら負け」と言われました。総務部に配属されたばかりの頃には、私が作成した文書をメールで送って数分後には内線がじゃんじゃん鳴る……(苦笑)。上司は、にやっと笑って「おまえの負けだ」と言っていましたね。

それからは、とにかく上司に鍛えられて、どちらにもとれるような表現をなくし、誰が読んでも一発で内容を把握できる文書を作成するように努めました。その経験が、いまになって、企業研修講師としての資料の作成や本の執筆に大いに役立っています。

みなさんのなかにも、いまの仕事に不満を抱えている人もいるでしょう。でも、目の前の仕事のなかにも、将来のキャリアにつながるものが必ずある。たとえ退屈に思えることであっても、それを誰がやっても同じ「作業」にするのではなく、自ら付加価値を与えて将来につながる「仕事」にしてください

キャリアアップのための「しなくていい努力」05

【堀田孝治さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「理不尽だ!」と感じたら要注意。あなたは仕事で“しなくていい努力”をしているのかも
「ほめられたい、認められたい」と願う人がしている大きな間違い。あなたは当てはまる?

【プロフィール】
堀田孝治(ほった・こうじ)
1966年12月14日生まれ、東京都出身。クリエイトJ株式会社代表取締役。1989年、中央大学法学部卒業後、味の素株式会社に入社。大手外食チェーンの営業担当、冷凍食品の開発マーケティング、「休職」、支店の人事・総務業務、本社人事部での採用・教育業務を担当後、広告部マネージャーを経て2007年1月に独立。現在は主に企業研修講師として活躍している。売り手と買い手、新人とマネージャー、前線と後方部隊といったさまざまな「相手の立場」に実際に立ったこと、そして成功と失敗、挫折と回復を経験したことによる豊富な失敗談を含むビジネスの事例と、当意即妙でユーモアのあるファシリテートに定評がある。著書に『生まれ変わっても、この「仕事」がしたい』(ファーストプレス)、『入社3年目の心得』(総合法令出版)、『自分を仕事のプロフェッショナルに磨きあげる7つの行動原則』(総合法令出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

会社案内・運営事業

  • スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >> HPはこちら

  • english company

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >> HPはこちら

  • strail

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >> HPはこちら