「何かを始めるときに目標を立てるものの、いつも達成できずに終わってしまう」
「長期的な目標を立てたいが、無理なく続けられるかどうかわからない」
このように、勉強や仕事を進めるとき、目標の上手な立て方がわからなくて困っている人はいませんか?
目標が高すぎても低すぎても、モチベーションはなかなか上がらないもの。今回は、やる気を維持できる目標設定の方法についてご紹介しましょう。
適切な目標を立てることの重要性
メリーランド大学のエドウィン・ロック教授とトロント大学のギャリー・ラッサム教授による研究では、目標を設定することでやる気が向上し、自尊心および自信も高まることが示されています。この効果は、行動の指針が定まり、自分が何をすべきか明確になることから得られるものです。
また、精神科医の樺沢紫苑氏は、設定した目標に向かって努力するプロセスにおいてドーパミンが脳内に分泌され、モチベーションが維持されやすくなると伝えています。さらに、設定した目標を達成することによって、ドーパミンは再び大量に分泌され、その後もやる気を継続できるとのこと。このように、目標を設定することは科学的に重要だと言えるのです。
とはいえ、目標が高すぎたがゆえに挫折してしまったり、逆に目標が低すぎたがゆえにその後のやる気につながらなかったりするのは避けたいところ。目標をうまく設定するためのコツはあるのでしょうか。
【目標設定のコツ1】「5つのゴールデンルール」にならう
キャリア・経営についての学習サービスを提供するMindToolsのチームは、適切な目標設定の際に活用できる「5つのゴールデンルール」を提唱しています。
【ルール1】モチベーションが上がる目標を設定する
まずは目標自体を、そもそも自分のモチベーションが上がるようなものにすることがポイントです。つまり、自分にとって優先順位が高く、それを達成するに値するような目標を立てるようにしましょう。
自分にとって重要でない、もしくは興味がないことを目標にしたところで、取り組む意欲は湧いてきませんよね。結果として、立てた目標を達成しづらくなります。
たとえば、「自身の成長」を最も大事に考える人がいたとしましょう。そのような人は、「来年は必ず留学して海外経験を積む」という目標を設定すれば、成長の機会を得られることに期待して事前学習のモチベーションが高まるに違いありません。
【ルール2】「SMART」の法則で目標を設定する
目標を立てるときは、「SMART」の法則に当てはめるのもおすすめです。「SMART」の法則とは、「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「到達可能(Attainable)」「価値のある(Relevant)」「時間制限のある(Time Bond)」という5つの要素の頭文字をとったものです。
これらのうち、「測定可能」という要素は、日々の進捗を測れるような目標設定を意味しています。たとえば、「お金を無駄遣いしない」という目標をもし立てたとしても、どのくらいお金を使ってはいけないのかわからなければ、また無駄遣いしてしまうかもしれませんよね。しかし、「今月の出費を10万円以内に抑える」のように具体的に設定すれば、その効果を数値で確認できるようになるでしょう。
また、「時間制限のある」という要素は、締め切りなど時間的な制約を設けたほうがよいことを示しています。単に「この問題集を終わらせる」ではなく、「『来週までに』この問題集を終わらせる」と設定することで、モチベーションが上がり目標を達成しやすくなるのです。
【ルール3】目標を紙に書き出す
さらに、「書き出す」といった身体的な動きをともなうと、目標をより現実的なものに感じられる効果があるとのこと。
目標を書き出す際の注意点としては、「〇〇したい」ではなく「〇〇する」という書き方にすること。そうすれば、達成できなかったときの言い訳の余地が残りません。
また、書き出した目標をいつでも目に入るところへ掲げておくことも重要だそう。書いた紙を壁に貼ったり、付箋をパソコン画面に貼りつけておいたりすると、目標を常に意識できますよ。
【ルール4】目標の実行プランを立てる
目標を設定するときは、それを達成するための計画を練る作業も同時に行なうようにしましょう。
たとえば、「今年中に英語能力検定試験で9割の点数をとる」という目標を設定したとします。しかし、そこで終わってしまってはいけません。「来週までに試験対策問題集を購入し、今月中に終わらせる」「来月は過去問を解いて時間配分の感覚を習得する」など、具体的な実行プランも一緒に立てるようにしてみてください。
特に、目標が自分にとっては高いレベルであったり、長期的なものであったりするときには、目標をどのように達成するのかまで検討しなければ、実際の行動へ移せません。目標へのプロセスが明確になってさえいれば、どんな目標でもやる気を維持しながら実行できるのです。
【ルール5】目標達成に専念する
目標と具体的な実行プランが決まったら、目標を自分へ定期的にリマインドしたり、あるいは目標自体を随時見直したりしながら行動に移してください。実行プランをそのつど改善することで、目標までの道のりを最適なものにできるはずです。
以上に掲げた5つのゴールデンルールに則れば、モチベーションが下がることなく効率的に目標を達成できるでしょう。
【目標設定のコツ2】最初は「小さい目標」から設定する
神経科学者デボラ・ノーブルマン氏は、夢は大きくもつべきとしている一方、初めの目標は小さなところから設定するべきだと言います。
同氏によれば、そもそも「夢」と「目標」は区別すべきとのこと。たとえば「自家用車を購入する」は夢ですが、そのために「1,000万円貯金する」、もっと言えば「毎月20万円ずつ貯蓄する」という実行プランまで含めたものは目標だということです。
そして、大きな夢を叶えるためには、最初のうちは小さく達成しやすい目標を立て、徐々に夢へと近づいていくような、現実的な設計をする必要があります。
「語学の資格をとる」という夢のために勉強を行なう場合について考えてみましょう。目標として、たとえば「資格試験の対策問題集に毎日5ページずつ取り組み、3ヶ月で終わらせる」といった目標を設定してみてはいかがでしょうか。それが達成できたら、「過去問を毎日1年分、1ヶ月解き続ける」など徐々に目標の難易度を高めていくことで、やる気を維持しつつ夢も無理なく実現させられるでしょう。
【目標設定のコツ3】立てる目標の数を絞る
ニューヨークタイムズのベストセラー『Atomic Habits』の作者である作家のジェームズ・クリア氏は、目標達成における最も大きな障害のひとつとして、「ほかの目標の存在」が挙げられると指摘します。達成したい目標をたくさん立てていると、自分の関心や集中が分散してしまい、目標をむしろ達成しづらくなってしまうのです。
そこで、「目標競争」と呼ばれる一連のプロセスが有効なのだそう。目標競争とは、それほど重要でないと思う目標をどんどん消していき、結果として最も優先順位の高い目標ひとつに焦点を当てるという方法です。
優先順位による目標の絞り込みに悩む必要はありません。現段階で最も積極的に取り組んでいることが、自分にとって最も優先順位が高い目標だからです。たとえば、「語学の資格を取得したいが、ビジネスレベルの英会話もできるようになりたい」と考えている場合、力を一番入れて取り組んでいる「資格の取得」に目標を絞ることで、より達成しやすくなりますよ。
ジェームズ氏によれば、よりよい目標を設定することよりも、よりよい集中を可能にすることのほうが大切なのだそう。やる気の維持を妨げる余計な目標については、容赦なく減らしていきましょう。
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適切な目標設定の仕方を学んで、実践に活かしていってくださいね。
(参考)
PositivePsychology|The Science & Psychology Of Goal-Setting 101
ANANニュース|モルヒネの6倍以上の恍惚感!? 幸福感に作用する“脳内物質”とは?
MindTools|Golden Rules of Goal Setting
Lifehack|How to Set Goals and Achieve Them Successfully
JAMES CLEAR|Goal Setting: A Scientific Guide to Setting and Achieving Goals
【ライタープロフィール】
YOTA
大学では法律学を専攻。塾講師として、中学~大学受験の6科目以上の指導経験をもつ。成功者の勉強法、効率的な学び方、モチベーション維持への関心が強い。広い執筆・リサーチ経験で得た豊富な知識を生かし、効率を追求しながら法律家を目指して日々勉強中。