休憩時間を惜しんで仕事をし続けている。休日も仕事のことばかり考えている。このように、焦ったり頑張りすぎたりしてはいないでしょうか。
いつもアクセル全開だと、かえって生産性は上がらないもの。一度立ち止まったりきちんと休息をとったりしたほうが、長い目で見ると高いパフォーマンスを維持できますよ。たまには肩の力を抜いてみませんか?
時には先延ばしするのも戦略のひとつ
物事を先延ばしするのがなんだか気持ち悪くて、「すぐにやらなければ」と急ぎすぎてしまう……。きまじめな人ほど、その傾向は強いかもしれませんね。一般に、先延ばしは悪いこととしてとらえられがちですが、本当にそうなのでしょうか。
もちろん、すぐに対処できるものであれば、わざわざ先送りしないほうが賢明でしょう。でも、そうでないものは、あえて先送りにするのも手。東京大学名誉教授で医師の矢作直樹氏は、著書『自分を休ませる練習 しなやかに生きるためのマインドフルネス』のなかで、「『早い』ことが良いとは限らない。『先送り』にしたほうが良いこともある」と述べています。
矢作氏によれば、ある程度時間を置くことで、複雑化した思考がすっきりしたり、考えがまとまったりすることもよくあるとのこと。さらに、とりうる選択肢も、考える材料も増えるそうです。
たとえば、3日後までに新商品のアイデアを出さなければいけないとします。デスクで考え続けても思い浮かばないようだったら、あえて放置してみてもいいのです。たわいない雑談からヒントを得たり、お風呂に入っているときに何かひらめいたり、たまたま立ち寄った書店で参考になりそうな本と出会えるかもしれません。
過度な焦りは禁物。時には、問題をいったんわきに置いて、時間に解決を委ねるのも戦略のひとつなのです。
平日は5分でいいから「好きなこと時間」を確保しよう
頑張りすぎて疲れている気がする……そんな人は、細切れ時間を使ってリフレッシュする習慣をつくりましょう。
『休む技術』などの著書をもつ精神科医の西多昌規氏は、小さなことでもいいので、自分のささやかな「好きなこと」をする時間を少しだけ取り入れてみることをすすめています。他人にしてみたらくだらないことでもいいとのこと。自分が「嬉しい」「すがすがしい」「満ち足りた」気持ちになれることが重要です。
これは、ストレス解消の面でも大切。何か行動を起こすことでストレスに対処する方法は、ストレス心理学において「行動的コーピング」と呼ばれます。臨床心理士の伊藤絵美氏によれば、ストレスを感じたときに何をするかを細かく具体的に決めておくのがコツなのだそう。
移動時間にお笑い動画を観たり、休憩時間にゲームをしたり、仕事が一段落したらコーヒーを飲んだり、といったことでかまいません。ちょっと疲れてしまったとき、ストレスを抱えていると感じたときは、遠慮せず気分転換を図りましょう。
休日にする楽しいことを用意しておこう
みなさんは、「休日前が一番やる気が出る」と感じたことはありませんか。「この3日を乗りきれば夏期休暇だ」「今日頑張れば連休だ」といった期待感は、なぜか私たちをやる気にさせてくれますよね。
前出の西多氏によれば、将来への「期待」を感じると、やる気をもたらす物質「ドーパミン」の分泌が脳で盛んになるそうです。ドーパミンのこの性質を考慮すると、休みに対する「期待感」を1年を通して継続的かつ自覚的に用意できれば、うまい具合にやる気を維持できるということ。
そこで、仕事のしすぎでもやもやしている人には、休日の過ごし方の計画を立てたうえで、休日は思いきりリフレッシュすることをすすめます。
たとえば、カレンダー通りに休みがとれる仕事ならば、通年で何をするかを考えておくのもいいですね。3ヶ月先や半年先の計画を立てるのもいいでしょう。旅行、スポーツ、登山――楽しいことを早めに決めてドーパミンの恩恵を受けつつ、当日は思いきり楽しんで心身にエネルギーをためましょう。
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いつもアクセル全開なあなたへ、“ブレーキのいい踏み方” を3つご紹介しました。頑張りすぎないことで、生産性を高めていきましょう。
(参考)
矢作直樹(2017),『自分を休ませる練習 しなやかに生きるためのマインドフルネス』, 文響社.
西多昌規(2017),『休む技術』, 大和書房.
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【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。