「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法3選。“聞く勉強” ばかりしていませんか?

「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法01

みなさんは勉強を楽しんでいますか?

「勉強はけっこう好きなほう。楽しく勉強できていて、とても充実してる!」
「正直あまり楽しめていない……。もっと楽しく勉強できるようになりたい」

上記どちらのタイプの方にも、ぜひ知っていただきたいことがあります。それは、“勉強が楽しい”ことは一見強みのようでいて、必ずしもそうとは言えないということ。

脳科学者の中野信子氏は、「努力そのものを楽しむと成績が落ちる」と指摘します。楽しい努力には落とし穴が潜んでいるのです。

今回は、「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法を3つお伝えします。ご自身の勉強で最適な努力ができるよう、ご確認ください。

1.「いろいろな勉強法を試す」ばかりでは、楽しいだけで結果は出ない

記憶に定着するノート術、効率的な読書術——少し調べれば、さまざまな勉強法を知ることができますよね。「学び方を学ぶ」こと自体を楽しんでいる人は少なくないようです。

『知的戦闘力を高める 独学の技法』著者で独立研究者の山口周氏は、多種多様な勉強法を学ぶのが好きな人たちを「勉強法ホッパー」と呼んでいます。“ホッパー(hopper)” の意味は、「飛び回る人」。さまざまな勉強法を試し、渡り歩くイメージでしょうか。

山口氏はそんな、“勉強法のハシゴ” を問題視しています。というのも、勉強法は使ってこそ価値があるものだから。勉強法を知ったり試したりするのが楽しくても、自分のものにして結果を出さなければ、結局のところ楽しんだだけに留まってしまうのです。

さらに、心理学の専門家によれば、勉強法にこだわるのはナンセンスとのこと。カリフォルニア大学のハル・パシュラー教授と、サウスフロリダ大学のダグ・ローラー教授は、学習方法が学業成績に影響を与える科学的な証拠は存在しないと述べています。

勉強法をあれこれ試しながら楽しむ——そんな「勉強法探し」をし続けるのは、科学的観点から見ても非効率なのです。

「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法02

とはいえ、自分に合った勉強法を模索すること自体は必要ですよね。「上手な模索の仕方はあるのかな?」と悩む人に、別の識者のアドバイスを紹介しましょう。

『東大教授が教える独学勉強法』の著者で東京大学大学院教授の柳川範之氏は、資格試験勉強のように勉強期間が決まっている場合、「最初の1割」を勉強法を模索する試行錯誤の期間とすることをすすめています。仮に試験日が1年後だとすれば、最初の約1か月で、少しずつ勉強法を変えながら自分に合った学び方を探すのです。

加えて、「いまやっている勉強法では、どの程度知識が身についたか」と振り返る癖をつけることも重要だそう。「その勉強法は、本当に自分に最適か?」と客観的に考えるためです。

たとえば、勉強した日ごとに、「勉強法」と「どの程度理解できたか」をセットで記録してみるのはいかがでしょうか。可視化すれば後日振り返ることもしやすくなります。”自分の武器” にできそうな勉強法を見つけるのに役立つはずですよ。

「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法03

 

2.「周辺知識」ばかりの勉強では、楽しいだけで結果は出ない

資格試験に向けた勉強自体は、楽しく継続できている。けれど、模試の成績が芳しくなく、このままじゃ合格できるか不安だ――こんなふうに悩んでいるのだとしたら、難しい知識ばかりに関心が行き、基本知識を押さえられていない可能性も。

トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏は、長く試験勉強をしている人には ”知識のドーナツ化” が起きがちだと指摘しています。知識のドーナツ化とは、難解で細かい周辺知識にばかり関心が向かい、肝心の中心部分である基本知識がおろそかになってしまう状態のこと。

たとえば、経済学を勉強しているが、難しい経済用語に気をとられてばかりで、じつは基本的な経済活動の仕組みを押さえられていない……といったように、基礎が抜け落ちている状態を指します。

宇都出氏によると、細かくてレベルの高い周辺知識を勉強することはおもしろく、「こんな知識を自分は知っているんだ!」という満足感を得やすいもの。対して基本知識は、シンプルで何度も出てくるので「もうこれはわかっている」と “わかったつもり”に陥りやすいのだとか。そのため宇都出氏は、テキストを読む前から過去問に取り組み、毎年共通して出題される基本知識をしっかりと潰すことが重要だと述べます。

そのほかにも、基本知識の ”わかったつもり” を回避できる方法があります。学習法などに関する著作家のスコット・H・ヤング氏が推奨する、「ファインマン・テクニック」という手法です。やり方は以下のとおり。

  • 白紙の一番上に、理解したいテーマを書く
  • 白紙の残りのスペースに、テーマに関する説明を「人に教えるように」紙に書く
  • うまく書き出せなかった場合、テキストを見るなどして答えを書き出す

「人に説明してあげる」つもりで書き出すのが、この手法のポイント。「説明できない=書き出せない」のであれば、「あぁ、自分は理解できていないんだな」ということに気づけます。だから「わかったつもり」の落とし穴にはまることを回避できるのです。

周辺知識のインプットが楽しくなり始めたときは、一度基本に立ち返り、自分がそれを説明できるか、試してみるといいかもしれません。

「楽しい」けれど「結果につながりにくい」勉強法04

3.「聞く」ばかりの勉強では、楽しいだけで結果は出ない

動画やポッドキャストなど、耳から学ぶ勉強は楽しく続けられる方法のひとつです。しかし、「聞く勉強」ばかりしても結果を出しにくいよう。

教育事業などを手がける株式会社キャストダイス代表取締役の小林尚氏は、「聞く勉強」には注意が必要だと指摘します。なぜなら、「聞く」行為は、「読む」「書く」「話す」ことよりも比較的楽なため、そればかりしてしまうケースが起こりうるから。

加えて、「聞く勉強」は「読む勉強」よりも勉強効率が上がりにくいとのこと。本を読む場合、読み飛ばすことも、あとで読み返すことも可能ですが、聞く勉強は基本的にそのどちらも不可能。知りたい項目だけをインプットすることができない、という点で非効率的なのです。

小林氏によると、勉強の効率を大きく引き上げるには、「読む」「聞く」というインプットと、「書く」「話す」というアウトプットの精度をともに上げることが重要だそう。そもそも勉強とは、インプットした知識をアウトプットして初めて成立するものだからです。

ではどうすれば、インプットとアウトプット両方の精度を上げることができるのでしょう。ここでおすすめの方法が「要約」です。

800個以上の資格取得歴がある資格・勉強コンサルタントの鈴木秀明氏は、知識を効率よく吸収したいなら、そのまま覚えるのではなく、「要するにどういうことか」と圧縮したうえで覚える必要があると述べます。人間の脳の特性上、学習内容を一字一句すべて覚えることはできないからです。実際、物覚えのいい「頭のいい人」たちは、この方式で記憶しているのだとか。

たとえば、動画で講義を楽しく視聴したのであれば、そのあとに内容を要約して、紙にまとめてみてはいかがでしょうか。聞く勉強に「要約」という作業を加えるだけで、インプット・アウトプット双方の質が高まりますよ。

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いまは「楽しい」と感じられていても、結果が追いついてこなければ、あとあと苦しくなるもの。今回の記事を参考に、ご自身の勉強法を工夫してみてください。本来の ”学ぶ喜び” を感じられるようになりますよ。

(参考)
STUDY HACKER|勉強能力を最短距離で上げる方法。「努力そのもの」を楽しむと、成績は落ちていく
ダイヤモンド・オンライン|【山口周×『独学大全』】残念な「勉強法ホッパー」と「独学を武器にできる人」の決定的な差
Insider|The idea that we each have a 'learning style' is bogus — here's why
東洋経済オンライン|知っておこう!「独学」で進むための思考法
宇都出雅巳(2017),『ゼロ秒勉強術~最短で受かる! 世界一シンプルな試験合格法』, 大和書房.
ダイヤモンド・オンライン|「TEDで話題の勉強法」が解説!“独学”最大の落とし穴「わかったつもり」が解決できる技術とは?
STUDY HACKER|インプットの精度が上がる! 勉強の深い理解に役立つ「開成流・ロジカルに読む&聞く」方法
STUDY HACKER|“開成流ロジカル勉強法”の提唱者が語る「○○を意識すれば、勉強の効率は劇的に高まる」
ダイヤモンド・オンライン|覚え方は要約力で決まる

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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