幸せを感じながら毎日を過ごしたい。けれど、仕事では嫌なことが多いし、勉強もうまくいかないし、忙しすぎてゆとりはないし。やる気すら湧かないことだってある――いったいどうしたら幸福になれるの?
そうお悩みのあなたへ。やる気や意欲が下がる場面でも「こんな行動をすれば、前向きになれる!」という指針をご紹介します。
- 1. ネガティブ思考のループにはまったときは「気を紛らわす」
- 2. ストレスで頭がいっぱいになったら「他者に優しくする」
- 3. やる気を失ったら「自分に優しくする」
- 4. やることも心配事も多すぎるときは「“いま” に没頭する」
1. ネガティブ思考のループにはまったときは「気を紛らわす」
嫌な経験を繰り返し思い出しては、いっそう落ち込んでしまう——ということはありませんか? こういったネガティブ思考のループは、心理学で「反すう思考」といいます。
臨床心理士の石上友梨氏によると、反すう思考はうつの原因になると考えられているそう。また心理学者のガイ・ウィンチ氏は、反すうを続けると、気分が落ち込んだり、問題解決能力が低下したり、ストレスを感じやすくなったりすると述べます。反すうは、仕事にも勉強にも悪影響を及ぼし、負の連鎖を引き起こしかねないのです。
そんなネガティブループを断つには、「気をそらすこと」が効果的だとウィンチ氏。「ネガティブになってはいけない」と思うと、余計にネガティブなことを考えてしまうものなので、完全に別のことに気を向けるほうがいいのだそう。
さらに、いつでも気を紛らわすことができるように、「こんなときにネガティブになりやすい」というパターンと、そのときにできる行動をリスト化しておくのもおすすめだとか。
たとえば、次のようなリストがつくれるでしょう。
- 通勤電車のなかでネガティブ思考に陥ったら……
- お気に入りの動画を見る
- 好きな音楽を聴く
- 休日の計画を立てる
- 日曜日の夕方に気分が落ち込んだら……
- 映画鑑賞をする
- 散歩に行く
- 料理をする
気晴らし行動を繰り返し行なうことで、反すうは次第に減っていくそうですよ。
2. ストレスで頭がいっぱいになったら「他者に優しくする」
自分の仕事がはかどらない。自分の思ったとおりに物事が進まない――ストレスを感じると、「自分のこと」で頭がいっぱいになってしまうものですよね。ですがこんなときにこそ、あえて「他者のこと」を考えることがストレス軽減につながります。
イェール大学医学部助教授(肩書は研究当時)エミリー・アンセル氏の実験により、「他者に対する小さな親切」がストレスを軽減することが明らかになりました。小さな親切とは、誰かのためにドアを開けてあげる、困っている人に声をかける……といったほんの些細なこと。
実験では、多くの親切な行動をしたグループがよりポジティブな感情を経験し、メンタルヘルスも向上。その一方で、あまり親切な行動をしなかったグループは、ポジティブな感情を味わうことが少なく、メンタルヘルスも停滞したのだとか。
アンセル氏はこの結果を受けて、特にストレスを受けやすい時期には「これからの1か月間は毎日、人のためにエレベーターのドアを開けてあげよう」など、小さな親切を決意して行動に移すことをすすめています。
小さな親切をするチャンスは、どこにでもありますよね。自分のことがうまくいかず頭がいっぱいになったら、些細なことでも人の役に立つことで、心に少しの余裕をもちましょう。自分のストレスを自ら癒やせるはずですよ。
3. やる気を失ったら「自分に優しくする」
希望の会社に入社することができた。念願のプロジェクトを担当できた。それなのに、突然やる気が出なくなった——そんな人は「バーンアウト(燃え尽き)」に陥っているかもしれません。
バーンアウトとは、高いモチベーションをもって行動していた人が、思うように成果を出せなかったときや、逆に一定の成果を出したことで目指すべき目標がなくなったときに、やる気を突然失うこと。
バーンアウト症候群などの治療を手がける「かせ心のクリニック」によると、ストイックに頑張りがちな人ほどバーンアウトに陥りやすいそう。予防するには、適度な息抜きが大事だと説きます。
とはいえ、適度な息抜き自体が難しいからつい燃え尽きてしまう……という人もいるでしょう。そこで、ペンシルバニア大学大学院のアニー・マッキー氏とカンディ・ウィーンズ氏がすすめる「自分に優しくする」ことを意識してみてください。具体的な方法は、とてもシンプルな以下のふたつ。
- 長時間働きすぎない
成果が出ないからといって、より長時間働くことで返上しようとしても逆効果。長く働くほどストレスがたまり、それでも成果が出ないとなったとき、本格的にバーンアウトしてしまうのだとか。
マインドフルネスをする、家族や友人と過ごす、たっぷりの睡眠をとる――そんな、自分を優先して穏やかに過ごす時間を増やすことが、ストレスの軽減とバーンアウトの予防には大切なのだそうです。 - 自分を責めない
思うような結果が出なかったときや失敗したときには、自分を責める代わりに「自分を思いやる」といいとのこと。
「この状況であれば、ほかの人だって自分と同じように感じるかもしれない」などと視野を自分以外にも広げてみることで、自分への思いやりをもちやすくなるそうですよ。
やる気に満ちていたときの気持ちをキープするために、成果だけではなく、自分自身を大切に扱ってあげましょう。過剰なストレスを防ぎ、より前向きな気分でいられるようになるはずです。
4. やることも心配事も多すぎるときは「“いま” に没頭する」
たくさんのToDoをこなし、仕事はそれなりに充実している。けれど、あれこれ心配しながらなんだか心地よくないことばかりしているうちに、一日があっという間に過ぎていく――そんなときは、どんなに忙しくても、あえて自分のための時間を確保することを意識してみてください。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、幸福度について、「いまこの瞬間」への滞在時間に比例するものだと語ります。「いま」に集中すればするほど幸福になり、不安や後悔などの雑念が入り込んできて「いま」に集中できないと幸福度が下がる、ということです。
古川氏によると、「いま」に集中する時間を増やすには、時間の経過を忘れるほど没頭できる行動をする習慣をもつといいのだそう。具体的には以下の条件を満たせるものがよいとのこと。
- 自分が心地よくなれる行動
……例:マインドフルネスや瞑想といった習慣や、家族や友人との談笑など - ワクワクできる行動
……例:読書、ジョギング、創作活動など
実際に古川氏は、毎朝のルーティンとして、執筆や瞑想、音声講義の聴講、片づけなどの6つの行動に15分刻みで没頭して、充実感を味わっているそうですよ。
やるべきことがたくさんあって忙しいときほど、自分の心が平和になり、ワクワクできる行動に没頭する時間を確保しましょう。きっと幸福度がアップするはずです!
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疲れたり落ち込んだりするシチュエーションは、人によってさまざま。自分に合った方法を取り入れて、毎日にほんの少しずつ幸せを増やしていけるといいですね。
(参考)
Yoga Journal Online|臨床心理士が解説!反すう思考を止める3つの方法|誤った対処法と正しい対処法とは
東洋経済オンライン|折れない人が実践する「嫌な妄想」を絶つ方法
Yale School of Medicine|Ansell: Helping others dampens the effects of everyday stress
かせ心のクリニック|燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)
Harvard Business Review|Prevent Burnout by Making Compassion a Habit
PRESIDENT Online|雑念のない時間が多い人ほど、幸福に近づく
【ライタープロフィール】
平野ももこ
大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。