通勤時間で「読書PDCA」を回せ。

多忙な毎日を送る社会人にとって、いかに効率的に仕事を進めるかということは、常についてまわる最大の課題といっていいでしょう。仕事ができる、仕事が速い人は、どういうふうに日々の業務をこなしているのでしょうか

アドバイスをくれたのは石川和男(いしかわ・かずお)さん。建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなどとしても活躍する、それこそスーパーサラリーマンです。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

通勤時間は未来の自分に好影響を与えることに使う

その使い方次第で「財産」にも「ただの無駄」にもなるのが通勤時間です。どうせなら、しっかり自分の財産にしたいものですよね。そうするためには、通勤スタイルによってやれることを把握することが重要です。

電車で座って通勤できるのなら、それこそ読書に使ってほしい。しかも、その勉強で最大限の成果を出すには、「通勤時間でPDCAサイクルを回す」と考えることが大切です。

たとえば、行きの電車でビジネス書を読んで「これを会社で実践してみよう」というものを見つける。それを勤務中に実践する。そして、帰りの電車では、やろうとしたことがきちんとできたのかを検証し、できなかったのならその理由を考えて改善法を導く。これを繰り返せば、1年間の勤務日数が250日なら250項目のチャレンジができ、ビジネススキルを格段に高めることになるのです。

電車で立って通勤する、車で通勤するという場合はオーディオブックを使ってみましょう。いまは自己啓発ものから資格試験勉強のためのものなど、オーディオブックにはありとあらゆるコンテンツが用意されています。それを1.2倍、1.4倍などの再生速度で聴く。2倍速なら、30分の通勤時間に60分の勉強ができることになります。ただスマホで音楽を聴いたりゲームをしたりしている人とは大きな差を生むことになるはずです。

徒歩や自転車で通勤する場合は、読書はもちろんオーディオブックを使うのも難しいでしょう。でもそういう人は、毎日体を動かすことで、ビジネスマンとして最も重要なもののひとつである健康を確保しているといえます。

いずれにせよ、忙しい社会人の場合、通勤時間を最大限に生かす方法を考えることが重要です。そして、その時間は未来の自分に好影響を及ぼすことに使う。それが大原則だとわたしは考えています。

リーダーが早めに出社すればチームの仕事がスムーズに進む

出社時間も重要です。特に、部下を抱える立ち場の人には、誰よりも早く出社することをおすすめします。なぜなら、部下が話しやすい環境をつくってあげるためです。誰もが出社直後というのは慌ただしいものですよね。上司のそういう姿を見ると、たとえ重要な相談事があったとしても、部下からはなかなか話しかけにくいのです。チームの仕事をスムーズに進めるため、余裕を持った姿を部下に見せられるように早めの出社を心がけてみてください

また、効率化とは少し違う話になりますが、早めの出社は、上司や部下など立ち場によらず、自分のためにすべきことでもあります。それは、通勤中に思いついたアイデアなどをきちんとメモして残すためです。ひらめきというものは基本的に右脳が生み出すもの。右脳が生み出したものには記憶に残りにくいという特徴があります。

でも、始業時間ぎりぎりに出社すると、落ち着く間もないまま上司から指示を受けたり部下から指示を仰がれたりすることになる。そうすると、せっかくのアイデアをメモする時間を取れず、結局忘れてしまうのです。

効率を最大化する12のメール術

始業後には、多くの人がメールのチェックから仕事をはじめるでしょう。ここで、なるべく仕事の効率を上げるためのわたしなりのメール・ルールをお伝えします。

<効率を最大化するメール・ルール> 【1】1日のメールチェックの回数と制限時間を決める 【2】60分単位の隙間時間にメールチェックする 【3】原則はメールチェック後に即返信だが、できなければ返信期日を決める 【4】午前中は重要なメールしか見ない 【5】社内メールに関する社内ルールを決める 【6】複雑な内容なら電話で伝える 【7】受信通知はオフにする 【8】24時間以内に返信すればOK 【9】不要なメルマガは配信停止し、迷惑メール設定で受信メールを制限する 【10】単語登録機能を使って入力時間を短縮する 【11】結論から先に書く 【12】件名をわかりやすく書く

いくつかのルールについて解説もしておきましょう。【1】は、「メールチェックは出社直後、13時、15時、退勤直前に行ない、15分以内に返信する」というふうに決めるというもの。時間を制限して、メールに無駄な時間をかけないようにすることが重要です。

【2】に関しては、わたしが15分単位で仕事をするようにしていることが前提となります。それが4つで60分。15分でするべき仕事をなるべく早く終わらせるようにすれば、60分のうちにわずかな隙間時間ができるものです。メールチェックはその時間に行なうのです。

【3】は多くの人がやりがちな無駄をなくすためのものです。受信メールを読み始めたものの、長くて後回しにした――。そんな経験がある人も多いでしょう。でも、これは完全な二度手間。メールは、見たら即返信するのが原則です。ただ、本当に時間がない、他に重要かつ緊急の仕事が控えているという場合には、その場で返信する期日を決めて、後回しにしましょう。

会社組織としては【5】が特に重要になります。社内メールに関しては「『お疲れさまです』といった儀礼的なものは省く」といったルールを決めることで、どんどん効率化できるはず。「簡単な内容のものは件名にすべて盛り込む」といったルールも有効ですね。

【8】は【3】と矛盾するようですが、そうではありません。メールは見たその場で返信するのが原則ではありますが、本当に重要な仕事がある場合、それを優先することが結果として効率を高めることになります。「すぐに返信しなければ失礼」と考えてしまいがちですが、24時間以内に返信すれば、失礼にはあたりません。

【10】も工夫次第で大幅にメールの時間を減らすことができます。頻繁に使う文をパソコンの辞書に単語登録してしまうのです。たとえば、「こんご」と入力すれば、「今後ともよろしくお願いいたします」と変換できるようにするという具合です。

メールに関しては、職種や立ち場によって、使い方が大きく異なります。客からの連絡を待っている営業担当者やメール対応の担当者が、「まだメールチェックの時間じゃないから」と悠長に構えているわけにはいきません。これらのなかから、自分の職種や立ち場にフィットしそうなものをピックアップして活用してみてください。いくつか実践するだけでも、無駄を大きく省くことになるはずです。

【石川和男さん ほかのインタビュー記事はこちら】 後回し癖をすっと解消できる「アイスピック仕事術」がすごい。 部下を成長させるリーダーは会話で「どうしたら」を好んで使う。

『G-PDCA勉強術 必ず目標達成できる方法』

石川和男 著

明日香出版社(2018)

【プロフィール】 石川和男(いしかわ・かずお) 1968年3月12日生まれ、北海道出身。建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなどさまざまな顔を持つスーパーサラリーマン。独学、通信、通学などさまざまな学習方法で資格試験勉強をした経験、資格試験講師を務めた経験から、独自の勉強法を確立。そのノウハウをまとめた『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』(CCCメディアハウス)がベストセラーとなる。勉強法の他、『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(ともに明日香出版社)など、ビジネススキル関連の著書も多い。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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