個人のビジネススキルがどんなに秀でていても、リーダーとしての資質に欠けていれば、会社組織のなかで高い評価を得ることはできないでしょう。では、いまの時代にはどんなリーダーが求められているのでしょうか。

建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなどとしても活躍する石川和男(いしかわ・かずお)さんは、「まずはチームの舵を取ることが最重要」だと語ります。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

リーダーがまずやるべきことはチーム全体の舵取り

わたしが会社員になったのは1991年のこと。当時のビジネス環境はいまとまったく異なるものでした。当時は誰がどんな仕事をしているのかがわかりやすく、上司や先輩を見て仕事を覚えることができたのです。

それこそ、パソコンは部署に1台という時代です。それを使って誰がどんな作業をしているかは一目瞭然。上司や先輩から「これ、FAXしておいて」「コピーしておいて」と指示されれば、それを見て「株主総会議事録というのはこういうものなんだ」と、仕事の知識を増やすこともできました。

また、上司と顧客との電話での会話を聞いて、「こういう対応をすればいいのか」と学ぶこともできた。上司が先輩を叱っていれば、「こういうことはしちゃいけないんだ」と反面教師にした。そうして、さまざまなビジネススキルを高めていく機会が日常にあふれていたのです。

ところが、いまはまったく違いますよね。パソコンはひとりに1台の時代ですから、各自が何をしているのかが見えづらい。部下が熱心に仕事をしているのかと思いきや、よく見ればただネットサーフィンをしているだけということもあるでしょう(笑)。

書類などもメールで送れば済むので、FAXを使うこともほとんどありません。メールでやり取りすることが増え、上司と顧客との電話を聞くということも減っている。また、セクハラやパワハラが問題視される時代、人前で部下を強く叱るような人間もほとんどいませんから、誰かを反面教師にするような機会も減っています。

同僚の仕事内容すら見えづらい時代のなかでチームが円滑に仕事を進めるには、リーダーがチームのメンバーの仕事を把握しておく必要がある。そのために、出勤後と退勤前に必ずミーティングを行なうべきです。そうして、メンバーそれぞれが進めている仕事の内容、その進捗といった状況を知り、誰かにフォローの必要があればその指示をして、チームの舵を取る。そこれそ、いまの時代のリーダーがまずはやらなければならないことでしょう。

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思い切って重要な仕事を任せてみる

また、上司や先輩の背中を見て仕事のスキルを盗むことができづらくなっているのであれば、部下をきちんと育てることもリーダーの重要な責務です。部下を育成するには、何はともあれ仕事を任せるという姿勢が大切だと思っています。

部下に仕事を任せることに躊躇してしまうこともあるでしょう。特に、部下が慣れていない重要な仕事を任せれば、進行が遅かったりミスをしたりして二度手間になってしまう可能性だってある。つい、「自分でやったほうがいい」と思ってしまうのものですよね。

でも、どんなことも最初はそんなものです。子どもの頃、はじめて自転車に乗ろうと挑戦したときのことを思い出してください。何度も転んでしまうし、なかなか真っすぐには進めない。歩いたほうが速いくらいです(笑)。でも、自転車に慣れたらどうでしょうか? 当然、徒歩の何倍ものスピードで走れるようになります。

部下に仕事を任せることもそれと同じです。最初は部下本人もリーダーも不安かもしれませんが、慣れるまでの辛抱です。信頼して任せることが部下の成長につながり、いずれはチーム全体の仕事のスピードを格段に上げることにもなるのです。

「どうしたら」は人を成長させる言葉

部下の成長を促すという点では、部下に萎縮させず、部下自身に考えさせるよう努めることもリーダーに求められることでしょう。

部下が遅刻をしたとします。あなたが上司ならどんな言葉をかけますか? まず、「どうして遅刻したんだ?」と聞きたくなるかもしれません。上司であれば、ミスの原因を把握しようとするのは当然のことです。でも、それだけでは部下はただ遅刻の理由を述べて、萎縮しながら謝罪して終わり。

そうではなくて、「どうして」に加えて、「どうしたら遅刻しなくなると思う?」と聞くのです。そうすると、部下は「早寝をする」「目覚ましをふたつセットする」「カーテンを開けて寝る」など、どうすればいいのかと自分の頭で考えるようになるのです。

これは、部下がミスをした場面に限ったことではありません。新たな顧客を獲得しようとしている営業担当であっても、新商品の企画を練っている開発担当でもいい。「どうしたらいい?」と声をかければ、なにが最善策なのかと、自らの頭で考えるようになるのです。「『どうして』は相手を萎縮させる言葉、『どうしたら』は相手を成長させる言葉」と覚えてください。

これと似たようなことが会議の場面でもいえます。わたしは、会議では「絶対に頭ごなしに否定しない」というルールとともに「立ち場が上の人間ではなく、下の人間から発言させる」というルールをつくっています

立ち場が上の人間が発言した後で下の人間に意見を聞いたところで、どうしても上の人間の発言にこびた内容になってしまうもの。そうではなくて、最初に下の人間に考えさせ、自由に発言させることでその成長を促すわけです。

もちろん、あらゆる経験が浅い若い部下なら、大した意見は出てこないかもしれません。でも、「それはあり得ない」「絶対に無理」といった否定はご法度です。リーダーがそんな発言をすれば、部下は萎縮するだけで成長できません。自分の頭で考えさせて伸び伸びと育てれば頼もしい戦力になってくれるはずの部下の成長を阻害してしまえば、リーダーが自らの首を絞めることになるのです。

【石川和男さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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【プロフィール】
石川和男(いしかわ・かずお)
1968年3月12日生まれ、北海道出身。建設会社の総務経理担当部長を務めながら、税理士、大学講師、専門学校講師、ビジネス書作家、時間管理コンサルタントなどさまざまな顔を持つスーパーサラリーマン。独学、通信、通学などさまざまな学習方法で資格試験勉強をした経験、資格試験講師を務めた経験から、独自の勉強法を確立。そのノウハウをまとめた『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』(CCCメディアハウス)がベストセラーとなる。勉強法の他、『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(ともに明日香出版社)など、ビジネススキル関連の著書も多い。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。