「数字に強い」と聞くと、皆さんはどんな人を思い浮かべるでしょうか。高等数学に精通している人? 数学の試験で高得点をとれる人? 圧倒的な計算力を持っている人? 学生時代までであれば、たしかにそのとおりかもしれません。

でもビジネスの世界では、「数字に強い」の定義は少し異なっているようです。“ビジネス数学の専門家” として活躍する深沢真太郎(ふかさわ・しんたろう)さんは、数字に強い人の特徴として「数字にできる」「口から数字が出てくる」の2つを挙げています。

そんな、数字に強い人(=数字を使える人)になるには、どうすればいいのでしょうか?

■第1回『文系理系なんて関係ない! すべての社会人に求められる「ビジネス数学」というリテラシー』はこちら

物事を “数字で表す” ためのキーワード

——物事を数字で表現する。会話に数字を織り交ぜる。いざ実行するにはどうすればいいのでしょう?

深沢さん:
数字を使って語れないのは、数値化できる概念にまで変換できていないからです。そこで私はいつも、数値化したいテーマがあったら「ヒト」「ジカン」「カネ」に置き換えてみることをおすすめしています。なぜならば、ビジネスの世界では、これら3つのうちのどれかが必ず動いているはずだから。人数が増えた、時間が短くなった、売り上げが増えた、などですね。

たとえば、「うちの会社はホスピタリティ精神がすばらしい」ということを誰かに主張したいとします。でも、これをこのまま言っただけでは、あまりにも抽象的すぎて伝わりません。

だから、こういうときは、先ほどの「ヒト」「ジカン」「カネ」に当てはめてみるのです。「ホスピタリティ精神がない組織と比べて、人の数はどうなっているのか?」「ホスピタリティ精神向上のためにかけている時間はどれくらいか?」「そこにお金はどれくらいかけているのか?」などですね。すると、自然と数字の情報になっていくはずです。

さらに、これらの数字から、新たに別の数字をつくることもできます。「ヒト」と「カネ」の数字を使えば、“ひとりあたりいくら” となりますし、「ジカン」と「カネ」を使えば “1時間あたりいくら” となりますよね。

こうして数字の情報が浮かび上がってくれば、普段の仕事はもちろん、メンバーや上司とのコミュニケーションの際にも使えるはずです。

——「ヒト」「ジカン」「カネ」。覚えやすく、とてもシンプルですね。このような指針があると、物事を数字で表現しやすくなりそうです。

深沢さん:
ほかにも、「何と比べて?」や「どれくらい?」といったキーワードも効果的ですね。「何と比べて、どれくらいホスピタリティ精神があるの?」なんて考えてみると、必然的に数字の情報が欲しくなってくるでしょう?

「ヒト」「ジカン」「カネ」と合わせて、こういったキーワードで普段から自分に問い続けていると、徐々に数字で考えられるようになっていきます。

数字に強い人とそうでない人は、じつはそれほど大きな差はありません。「数字にする」という発想があるかどうか、そのためのちょっとした考え方のコツを知っているかどうか。本当にその程度の差なんですよ

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今の時代は「割り算」に注目せよ!

——ここまで「数値化」についてお話しいただきましたが、ビジネスパーソンが特に注目するべき数字はありますか?

深沢さん:
仕事によってさまざまですが、ひとつ挙げるとすれば「割り算」の考え方でしょう。四則演算には「足し算」「引き算」「掛け算」「割り算」の4つがありますが、じつは時代時代によって、重きが置かれる概念が異なってきたのです。

ひと昔前、世の中は「足し算」の時代でした。こつこつ丁寧に積み上げることが美徳とされていたのですね。

ところが、ITのツールが出てくると、こつこつやることが逆にカッコ悪い時代になった。便利なツールを使って “ぴょーん” と行こうと。「掛け算」の概念ですね。

しかし、世の中があまりにも便利になってしまうと、今度は物があふれる時代になってしまった。そうすると、人は「これは要らないのではないか?」と捨てる方向に走ります。そう、「引き算」ですね。何年か前に、片付けに関する本がヒットしたのも、そういう背景があったからです。

そして、今は「割り算」の時代だと私は思っています。“何兆円も稼いでいる大企業” よりも、“規模は大きくなくとも、ひとりあたりの利益が高い組織” のほうが、効率的でクールだ。そんな価値観が広がってきているのです。この “〇〇あたり”、まさに割り算ですよね。

だから皆さんも、この割り算の考え方を普段から大切にしてほしいのです。「テレビでドーンとCMを打ったら、売り上げもドーンと伸びます」などと安易に考えるのではなく、「じつはインターネット広告を使ったほうが、広告費1円あたりのリターンは高いかもしれない」などですね。

今の自分の仕事を割り算で考えるとどうなるのか。企画を通すためにどんな割り算で説明すれば、上司は納得してくれるのか。そう考えながら数字をつくり、言葉に表してみてください。割り算をいかに上手に使って人に伝えられるかどうかが、今の時代では非常に大事なリテラシーだと思いますよ。

“2つの習慣” で数字力は磨かれる

——「数字力」を磨くために、日頃からできる習慣や訓練方法があれば教えてください。

深沢さん:
まずは、スキマ時間にざっくり計算をしてみるということですね。AIが活躍していくこれからの時代、緻密な計算はすべてマシーンがやってくれるようになります。だから私たち人間は、細かな計算をしていく必要なんてないんです。その代わり、物事の規模感を把握するために “ざっくりこれくらい” という大雑把な数字を短い時間でつくれるかどうかが大切になってきます。

たとえば、私たちが普段飲んでいる、ペットボトルの水。日本では、1日あたり何本ぐらい売れているでしょう? 「1日あたりひとり〇本飲むと仮定して、日本の人口は1億2,000万人だから……」などと考えていくと、ざっくりとした数字が算出されてくるはずです。

加えて、ニュースも読むようにしましょう。ニュースの中には必ず何らかの数字が出てきますよね。それらを、関連する数字と比べてみたり、さらに深く調べてみたりしてみてください。これを朝の2、3分で行なうだけでも、数字力はだいぶ変わってくると思います。

とはいえ、いきなり「やってください」と言われても、なかなか続かないものです。そこで、私がいつもおすすめしているのは、これらを 自分が興味のあるテーマ” で始めてみること。

たとえば、パスタが好きなのであれば、パスタ屋さんに行ったときに実践する。たとえば、オーダーした品が運ばれてくるのを待っているあいだ、店内を見渡してみてください。席数や混雑具合から、そのお店の1日の売り上げを推測すること、できそうですよね。あるいは、洋服に興味関心があるのであれば、ファッションに関するニュースをチェックして、そこで出てきた数字について考えてみてください。

そして、もし可能であれば、自分が導き出した数字について、実際はどうなっているのかを答え合わせしてほしいのです。まれに、「自分の予想が正しかった!」なんてことが、きっとあるはず。そういう成功体験が、数字力を磨く習慣の形成を後押ししてくれますよ。

【プロフィール】
深沢真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学の専門家。
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。
予備校講師や外資系企業での管理職を経て研修講師として独立。数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンを劇的に変えてしまうその独特な指導法が「史上最強にわかりやすい」と好評。担当した講義は100%リピート依頼がくる人気講師である。
大学でも教鞭をとる傍ら指導者育成にも従事し、ラジオ番組のパーソナリティなどメディア出演も多数。さらに作家として著作は国内で累計13万部超。一部は海外でも翻訳され多くのビジネスパーソンに読まれる。
公益財団法人日本数学検定協会が認定した国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」である。

BMコンサルティング株式会社代表取締役
一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事
多摩大学非常勤講師
パールハーバープロダクション所属

★ビジネス数学.com ~深沢真太郎オフィシャルウェブサイト~
http://www.business-mathematics.com

数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです

深沢真太郎

日本実業出版社 (2013)

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数字力を磨く。難しく考える必要はありません。普段の意識がけや習慣次第で、「数字に強い人」には誰でもなることができるのですね。

次の第3回では「数学コトバ」を取り上げます。お楽しみに。

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