書けなければ何も始まらない。「文章力の重要性」と「文章の難しさ」をプロが語る――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第1回】

f:id:sh_yuta_seino:20190805180726j:plain

普段から使っているビジネスメールに始まり、社内コミュニケーションのためのチャット、上司への報告書、クライアントへの企画書、プレゼン資料など……。私たち社会人は、“文章を書くこと” から逃れられない世界を生きています。

では、「文章を書くのが得意だ!」と胸を張って言える方は、はたしてどれくらいいるでしょうか? 「こちらの意図が正確に伝わらない」「そもそも何を書けばいいのか思いつかない」など、何かしらの悩みを抱えている人のほうが多いかもしれませんね。

そこで、StudyHacker編集部は “文章術のプロ” を直撃取材! 『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)や『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(同)など著書多数、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗さんに、『伝えるための文章術』を中心にお話を伺いました。そのインタビューの模様を、全4回にわたって皆さまにお届けします。

第1回では「文章力の重要性」に迫ります。仕事をするうえで、“文章を書けない” は絶対に放置してはならない課題。対面でのリアルなコミュニケーション能力も大切である一方で、文章力もまた、優秀な社会人になるために必要なスキルであるようです。

文章は “伝える” ためのツール。書けなければ何も始まらない

――本日はよろしくお願いします。まずお伺いしたいのが、「文章を書ける」ことの重要性についてです。私たち社会人は日々さまざまな場面で文章を書いていますが、「文章を書ける」ことは、ビジネスの世界で具体的にどう役立つのでしょうか?

山口さん: そもそも、私たちは何のために文章を書くのでしょうか。この根源的な問いを突き詰めていくと、結局は「人に何かを “伝える” ため」というシンプルな答えに行きつきます。逆にいえば、「書けない」は「何も伝えられない」に等しい。ビジネスの世界を生き抜いていくうえで、これは大きな致命傷になりかねません。

社会人経験のある方はすでにおわかりかと思いますが、社会に出ると、自分だけで完結できる物事ってほとんどありませんよね。「誰かに何かを “伝える”」が仕事の核として存在する以上、それができなければ「仕事ができない人」と思われても仕方がないのです。

私は誰よりもたくさんの知識や情報を持っています。私の頭の中には斬新なアイデアがたくさんあります。仮にこれらが事実だとしても、「その知識はどういうところで役に立つの?」「そのアイデアは具体的にどういうもの?」といった質問に対して、相手を充分に納得させられる説明ができなかったとしたらどうでしょう。そういった知識や情報、アイデアは単なる自己満足で終わってしまっていますし、最悪の場合、「何も考えていない人」の烙印を押されてしまうかもしれません。つまり、社会人として正当に評価されないということが起きてくる。非常にもったいないですよね。

逆に、自分の中にあるものを他者に正確に伝えることができれば、信頼や評価の獲得につながっていく。当然、自分自身をよりよく知ってもらえますし、相手とのコミュニケーションもスムーズに進んでいきます。

こんな話をすると、「文章として書けなくても、話すことができればいいのでは?」と考える人も出てくるかもしれませんね。たしかに、「コミュニケーション」といえば「会話」をイメージする方も多いでしょう。

でも考えてみてください、今は電話が嫌がられるご時世です。なんでもかんでも文章で残すように言われませんか? 「先ほど電話でお話しした件を、メールのほうにもお願いします」なんてことも(笑)。言葉で話せるスキルももちろん大事ですが、文章を書けるスキルも、絶対におろそかにしてはいけないのです。

非言語が抜け落ちてしまう。「文章」の難しさとは?

――先ほど、声を使っての「会話」に関するお話がありました。コミュニケーションの手段として、「会話」と「文章」にはどういった点に違いがあるのでしょうか? また、「会話」と比較しての「文章」の難しさがあれば教えてください。

山口さん: 声を使って対面で会話をするとき、じつは私たちは「非言語」を使って多くを伝えています。表情、声のトーン、身振り手振りなど、“言葉以外” の部分からも情報を得ているのですね。

たとえば、相手が笑いながら話をすれば「あ、この人は好意を持って話してくれているな」とわかりますし、しかめっつらで話をすれば「あれ、この人ちょっと不機嫌なのかな?」と想像ができます。あるいは、自分が何か言ったときに相手が「ん?」という顔をしたら、「あれ、今の話は伝わりづらかったかな?」と、リアルタイムで言葉を補足したり具体的な説明を重ねていったりしますよね。そういうことができるのが会話です。

一方、文章ではそれができません。「非言語」が抜け落ちてしまうので、表情も、声も、身振り手振りも使えない。当然、その場で言葉を補うなんてこともできないわけです。そう考えると、じつは人間は文章でそれほど多くの情報を伝えられないのです。

つまり、文章を書く際には、相手に誤解されることなく “文字だけで” “一発で” こちらの意図を正確に伝えることが求められる。でも、これがなかなか難しいんですよね。

これは私の考え方ですが、文章は “基本的に伝わらない” という前提に立っています。多くの人が、文章は普通に書けば伝わるものだと思っていますが、そうではない。人は自分のフィルターで勝手に解釈して文章を読んでしまうので、極めて正確に書かない限り、必ず誤解されてしまうのです。だから、勝手に誤解されないような文章を書かなければいけない。

小説やエッセイの世界であれば、読者の想像力を引き出すために、あえて抽象的な言葉や曖昧な表現を使うことも許されるでしょう。でも、ビジネスで使う文章では、絶対に行間を読ませてはいけないのです。

“かっこいい” デザインでお願いします――自分は「白黒で落ち着いたデザイン」を想像していたのに、相手にとっての “かっこいい” は「カラフルで派手派手しいデザイン」だった。早めの納期でお願いします――自分は「今週中」を意図していたのに、相手にとっては「週明け」だった。こういうすれ違い、よくありますよね。

繰り返しになりますが、文章ってなかなか伝わらないものなんです。だからこそ、誤解されないように細心の注意を払って書く必要がある。そういう意味では、文章を書くという行為は、会話の何倍も気を遣って行なわなければいけないものだと、私は思うのです。

【プロフィール】 山口拓朗(やまぐち たくろう) 伝える力【話す・書く】研究所所長。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。22年間で3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」から「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「集客につなげるブログ発信術」まで実践的ノウハウを提供。現在、中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。著書は『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『残念ながら、その文章では伝わりません』『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』など10冊以上。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

山口拓朗公式サイト http://yamaguchi-takuro.com

そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

山口拓朗

日本実業出版社 (2018)

*** 文章力は重要なスキル。同時に、文章は伝わらないもの——厳しい現実ですが、この現実をまず認識しておくことが、文章力アップのための第一歩なのかもしれませんね。

次の第2回では、「文章が書けない」の原因と対処法を詳しく探っていきます。

■第2回『書けなければ何も始まらない。「文章力の重要性」と「文章の難しさ」をプロが語る』はこちら ■第3回『「とにかく書きまくる」はNG!? 効率的に文章力を伸ばすための4つのヒント』はこちら ■第4回『「言葉を知らない」では深い思考ができぬ。語彙力を伸ばす大切な習慣』はこちら

会社案内・運営事業

  • スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、大学受験の予備校「学び舎東京」「烏丸学び舎」や、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」を運営。
    >> HPはこちら

  • 学び舎東京

    烏丸学び舎

    東京・京都に校舎を構える個別指導の予備校。勉強に過度な精神性をもちこまず、生徒1人1人に合理的な勉強方法を提示することで「東大・医大に合格できた!」「3ヵ月で偏差値が15上がった!」などの成果が続出。
    >> HP(東京校舎)はこちら
    >> HP(京都校舎)はこちら

  • english company

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >> HPはこちら