自分より仕事がデキる同僚がいると揚げ足をとりたくなる……。
上司がひいきしている人に対して嫌がらせをしたくなる……。
「嫉妬」という感情に振り回されている人はいませんか?
一度抱えてしまうと容易に消し去れないのが嫉妬というもの。結果、自分自身を苦しめたり、直接的・間接的な攻撃となって相手を傷つけたりしてしまいます。嫉妬に踊らされないためにはどうすればいいのでしょうか。
そこで今回は、嫉妬心が生まれるメカニズムを明らかにしつつ、嫉妬をプラスへ転化させる方法をご紹介しましょう。
「嫉妬心」はなぜ生まれる?
嫉妬心とは言うものの、私たちは誰に対しても嫉妬するわけではありませんよね。みなさんも、これまでの経験を振り返ってみてください。
たとえば、芸能人や世界的大富豪など “明らかに遠い存在” に対しては、嫉妬心なんて抱いたことはないはず。むしろ「憧れ」という感情のほうが近いのではないでしょうか。一方で、「仕事がデキる同僚」「上司から好かれている部下」「年収が高い知り合い」「プライベートが充実している友人」などなど、自分とほぼ同等(あるいは下)だと思っていた人の活躍や成功を目にすると、私たちはなぜか無性に妬ましく思ってしまいます。
その背景にあるのは、「あの人ができたのならば自分もできたかも」「あの人がそうなれたのならば自分もなれたかも」という思い。脳科学者の中野信子氏は、これを「獲得可能性と親近性の差」という言葉で表現しています。
手に入りそうなのに手に入らない。それなのに自分に近い人がそれを手に入れている――そこから嫉妬という感情が生まれてくるのです。
嫉妬心に振り回されると損をする
精神科医の片田珠美氏は、人は成長するにしたがって「嫉妬の感情をもつことは恥ずかしい」という意識が徐々に芽生えてくると指摘しています。
たしかに子ども時代は、いじけてみたりすねてみたりと、直接的な方法で嫉妬の感情を表現できていたかもしれません。一方で大人になると、私たちは嫉妬について「もつべきではない感情」「感じることが恥ずかしいもの」と思うように。結果、嫉妬心は抑圧され、「嫌がらせする」「陰口を叩く」など “変形した言動” となって表出しやすくなるのです。
これだけでも信用問題に関わってきますが、嫉妬心に振り回されることの怖さはほかにも。前出の中野氏は、嫉妬が増幅すると他人の不幸を強く願うようになると指摘します。そして、「他人の不幸を願っている」という悪い自分を脳が認識してしまい、コルチゾール(ストレスホルモン)が分泌されるのだとか。加えて、記憶力も衰えていくそうです。
嫉妬を抱くのは、たしかに仕方のない一面もあるでしょう。しかし、いつまでも踊らされていては、自分にも他人もいいことはありません。どのようにして自己解決を図ればいいのでしょうか。
嫉妬したときの対処法はこれだ!
ここからは、嫉妬をプラスの方向へ利用する方法をご紹介しましょう。
【ステップ1】「相手の何に嫉妬しているのか」をはっきりさせる
『嫉妬のお作法』著者で産業カウンセラーの川村佳子氏は、自分がどんなことに嫉妬するのかを明確にすることを提案しています。
たとえば、上司から高い評価を得ている同僚に対して嫉妬しているとしましょう。同僚のどんな部分を妬ましく感じているのかを具体的に探ってみるのです。たとえ対象が同じであったとしても、人によってジェラシーを感じる部分は異なります。ロジカルに話せるところ、数字に強いところ、雑談力、笑いのセンスなど、いろいろあるでしょう。
【ステップ2】嫉妬した部分をとことん磨く
川村氏は、嫉妬は「あなたもできるよ」という可能性のサインを自分に送ってくれていると述べます。
先ほど「獲得可能性と親近性の差」という言葉を紹介しましたが、要は「頑張れば自分だってそれぐらいできるのに」と思うからこそ、私たちは嫉妬してしまうわけです。であれば、“それ” を頑張ればいい。嫉妬という感情を通して、私たちは「どんな自分になりたいか」「何を磨いていくべきか」を知ることができます。
たとえば、同僚の「ロジカルに話せるところ」に嫉妬しているのならば、それを契機に話術を磨いていきましょう。ロジカルシンキングについて勉強したり、話し方に関する本をたくさん読んだり。いっそのこと、本人にコツを聞いてみるのもひとつの手でしょう。
モヤモヤしたり陰口を叩いたりする暇があったら、自分を高める行動をしたほうが健全ですよね。行動し続ければ、おのずと自信も湧いてきます。それにしたがって、嫉妬の感情も徐々に消えていくことでしょう。
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付き合い方を工夫すれば、成長のヒントとなりうる嫉妬心。お伝えしたステップを踏んで、理想の自分に近づいていきましょう!
(参考)
川村佳子(2014),『嫉妬のお作法』, フォレスト出版.
STUDY HACKER|嫉妬の感情がキケンな理由
片田珠美(2015),『嫉妬をとめられない人』, 小学館.
【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。