「日本の企業には『無駄な会議』が多い」――。メディア等を通じて頻繁にそう指摘されます。では、どんな会議が無駄で、どうすればその無駄な会議をなくせるのでしょうか。企業の働き方改革支援などで幅広く活躍する越川慎司(こしかわ・しんじ)さんがおすすめするのは、「A24Bルール」と「45分制」というもの。それぞれどんなものなのか、解説してもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹
必要な会議の目的は3つしかない
みなさんのなかにも、「うちの会社は会議が多いなあ……」と辟易している人も多いでしょう。それもそのはず。私が行なった調査結果を見ると、なんと「労働時間の43%が社内会議に使われている」のですから……。特に、大手企業になるほどその傾向は強まります。
そう考えると、会議そのものを減らすことも大切です。それには、なくすべき無駄な会議をあぶり出さなければなりません。そのための方法はとても簡単。会議の主催者や参加者に、「この会議の目的はなんですか?」と聞けばいいのです。
必要な会議の目的は、大きく分けて3つしかありません。「情報共有」「意思決定」「アイデア出し」の3つです。先の質問を投げかけて、あるいは投げかけられて即座にこの3つのうちのどれかが出てこなければ、その会議は無駄なものと言えます。定例会議の多くはこの無駄な会議で、その目的は「椅子に座る」ことに過ぎないのです。
ただ、必要な会議だったとしても、出席者全員がその目的をきっちり把握しているとは限りません。目的を把握していない出席者にとっては、その会議は無駄なものになってしまいます。つまり、事前に会議の目的を出席者に周知する必要があるのです。
会議の24時間前までに参加者にアジェンダを送る
そのために役立つものこそ、私が提唱している「A24Bルール」です。「A24B」は、「Agenda 24 Before」の略。つまり、「会議の24時間前までに参加者にアジェンダを送る」というルールです。
私のクライアントである企業のみなさんには、「もし、会議の主催者から24時間前までにアジェンダが送られてこなければ、その会議に参加してはいけない」というルールを守るようにお願いしました。アジェンダ、つまり会議をやる目的が出席者に伝わっていなければ、その会議は無駄なものになってしまう可能性が高いのですから。
でも、慣れないうちは、会議の主催者が別の業務に追われて24時間前までにアジェンダを送れないということもありました。もちろん、出席する予定だった人たちは会議に出てきません。すると、私はその会社の部長陣に「必要な会議ができなくて売上が下がってしまう、どうしてくれるんだ!」と説教をされました……(苦笑)。
それでも、「だまされたと思って2カ月続けてください」とお願いしたところ、売上は下がるどころかむしろ上がったのです。なぜかというと、無駄な会議に費やす必要がなくなった時間を、たとえば営業部員ならお客の対応にあてたり、企画開発の担当者なら企画を練り上げることに使ったりということができたからです。
いまでは、私を説教した部長たちも、すっかり私の考え方に賛同してくれていて、「A24Bルール」を破った部下を叱っています。それどころか、自分の取引先に対して「うちにはこういうルールがあるんだよ」と自慢してまわっているほど(笑)。会議の目的を明確にして無駄な会議をなくすために、この「A24Bルール」をみなさんもぜひ試してみてください。
無駄を省く以上の効果がある「45分会議」
また、会議の無駄をなくすためには「45分制」というものもおすすめしています。会議の時間を45分に設定するのです。これは、私のクライアントである企業18社の協力を受けて導き出した数字です。
みなさんの勤め先では、会議の時間は何分になっていますか? 協力してくれた18社で調査したところ、ほとんどが60分でした。ただ、その理由を聞いても「なんとなく60分が初期設定になっている」と言うだけ。そこで、会議の時間を変えながら、会議の成果を調べてみました。すると、45分の会議こそ出席者から最もアウトプットが出やすく、かつ事前に設定されたアジェンダをしっかり終えられて、出席者の満足度も高いことがわかったのです。
なぜそんな結果になったのでしょうか? それにはいくつも理由が考えられます。まずは、45分の会議はきちんと設定した時間通りに始まるということ。空き時間を設けずに60分ごとに次々と会議が行なわれている場合、連続して会議に出席する人が遅れるケースが多々あります。60分の場合には、なんと71%の会議が遅れて始まっていることがわかりました。
そうしてダラダラと始まった会議は、会議そのものもダラダラとしたものになりがちです。そのうち、次に会議室を予約している人たちがノックをしてくる。60分も使ったにもかかわらず、結局アジェンダを終えられないというケースが非常に多かった。
もちろん、45分にしたところで、時間内に終えられない場合もあります。でも、会議室の予約時間を60分ごとにしておけば問題ありません。45分で終えることを目指して会議を進めた場合、たとえ延長しても60分まではかからない。つまり、15分のバッファーを設けておくわけです。
また、この45分制をクライアントの企業に試してもらったところ、嬉しい発見もありました。15分のバッファーがあることで、出席者たちが普段は会えない他部署の人と会話する時間が増えたのです。そして、会議が終わったあとの「いま、ちょっといいですか?」で始まるリラックスした雑談のなかで、会議では出てこないようないいアイデアが生まれることもわかりました。会議を減らし、会話を増やすことで新たなビジネスも生まれるのです。
【越川慎司さん ほかのインタビュー記事はこちら】
仕事の無駄をなくす方法。「1週間に15分○○する」だけで、労働時間が11%もダウン!
元パワポ事業責任者「失敗する資料と成功する資料は、決定的に“ココ”が違うんです」
【プロフィール】
越川慎司(こしかわ・しんじ)
1971年9月21日、山梨県生まれ。株式会社クロスリバー代表取締役社長 CEO/アグリゲーター。国内大手通信会社、外資系通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト社に入社。のちに日本マイクロソフト業務執行役員としてOfficeビジネスの責任者等を務めたのち、株式会社クロスリバーを設立。メンバー全員が完全テレワークで週休3日を実践しながら600社を超える企業の働き方改革支援をしている。また、講演活動も積極的に行っており、企業向け講演及び研修での受講者満足度は平均94%を超える。主な著書に、『働く時間は短くして、最高の成果を出し続ける方法』(日本実業出版社)、『新時代を生き抜くリーダーの教科書』(総合法令出版)、『ずるい資料作成術』(かんき出版)、『世界一わかりやすいテレワーク入門BOOK』(宝島社)、『ビジネスチャット時短革命』(インプレス)などがある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。